第25話 誕生!ドラコ専用酒!
「そうよ、看板ドラゴンの名に恥じないお酒を作らないとね!」
私はカウンターの向こうで、きらめく黄金色の液体を慎重に注ぎながら心の中でそう叫んだ。新作の仕込みが始まるときって、いつもこうなの。興奮と期待が胸の中を駆け巡る。カウンター越しに聞こえる冒険者たちのざわめきが、まるで私への応援歌みたいに感じるわ。
「おいおい、また妙なこと始めたのか?」
フォルクがカウンターに腰を下ろしながら、呆れたように眉をひそめた。
「妙なことって何よ! これはドラコ専用のお酒、その名も『ドラゴンズ・バブル』!」
私は胸を張りながら、グラスを掲げた。黄金色の液体から立ち上る泡が、きめ細かく弾けて輝いている。それはまるで、星空を閉じ込めたかのような美しさ。
「ほぉ? 俺専用の?」
カウンターの隅で尻尾を揺らしていたドラコが目を輝かせた。泡が好きな彼にはぴったりな作品だもの。
「そうよ! ドラコが吐く泡を見てて思いついたの。お酒だって泡が主役になれるでしょ! 液体部分はほんの少し、ほぼ泡だけのお酒よ!」
注がれたグラスは、ほとんど液体が見えないほど泡で満たされていた。でもその泡から漂う香り――これは自信作だ。甘い青リンゴのフレッシュな香りに、蜂蜜のようなコク、最後にピリッとしたシナモンの刺激。嗅いだだけで飲みたくなるような魔法の香りが店内に広がっていく。
「泡だけって、それ、飲み物として成立するのか?」
フォルクが呆れ顔で私を見たけど、彼もほんのり香りに引き寄せられているのが分かる。
「ほらドラコ、試してみて!」
私がグラスを差し出すと、ドラコは嬉しそうに飛び上がり、グラスを掴んだ。
「よっしゃ、試してやる!」
ドラコは勢いよくグラスを傾け、泡を豪快に吸い込んだ。
「どう?どう?感想は?」
私は期待に胸を高鳴らせながら聞いた。
「口に含んだ瞬間、泡が弾ける感じがたまんねぇな!甘みが広がって、次にスパイスが効いて…」
ドラコが得意げに話していたそのとき、何かがおかしいと感じた。
「…ん?」
ドラコが一瞬黙り込んだ。嫌な予感がする。
「っぷはぁ!!」
突然、ドラコが大きく泡を吹き出した!
「ちょっ――何よこれ!」
泡が天井まで飛び散り、そこから滝のように降り注ぐ。冒険者たちの笑い声が響く中、店内は瞬く間に泡だらけ。カウンターも床も、すべて泡の海だ。
「おいリリィ!これ、完全にやらかしたな!」
フォルクが泡を拭き取りながら叫ぶ。
「これ、すごい!もっと泡が出るぞ!」
ドラコが尻尾を振りながらさらに泡を吐き始めた。
「もうやめて! 店が沈む!」
私は頭を抱えながら叫ぶけど、冒険者たちは大笑いしながら泡の中を泳いでいる。
「リリィ、片付けはどうするんだよ?」
泡に埋もれながらフォルクがため息をついた。
「ま、まぁ、みんなで片付ければ楽しいでしょ!」
私は苦笑いしながら、泡の山の中で大はしゃぎしているドラコを見上げた。
「お前が責任取れ!」
常連たちが一斉に突っ込む中、ドラコは満足げに一言。
「最高の一杯だったぜ! 次はもっと泡を増やしてくれよな!」
店内は泡まみれのまま、大爆笑に包まれた。その夜、私は誓った。次こそ、泡じゃなくて普通のお酒を作るって。いや、たぶん。
─
リリィの知らぬところで、黒い影がひっそりと様子を窺っていた。
「…酔いどれ亭の看板ドラゴンとやら、やはり侮れん。」
影は低く呟くと、じっと鋭い視線を向けた。その目には、警戒とわずかな焦りが滲んでいた。
ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
@chocola_carlyle




