第24話 商才炸裂!トレンド予想!
「リリィ!!ちょっとアンタの意見を聞かせなさい!!!」
カウンターに肘をついて詰め寄ってくるのは、酒商人ジーナ・ロスティア。
いつも冷静沈着で数字に強い彼女が、こんなに焦ってるなんて珍しい。
「…なによ、急に?」
「いいから聞きなさいよ!」
何事かと思って手を止めると、彼女はぐいっと身を乗り出してきた。
「今度、大商会の品評会があるんだけど、どの酒を推すか決められないのよ!」
「へぇ?」
「アンタの店にはいろんな客が集まるでしょ?流行を知るには一番いい場所じゃない!」
「まぁ、確かにそうね。」
酔いどれ亭は、旅人や冒険者、酒にうるさい連中が集まる。流行を探るには最適な場所だ。
「でも、ジーナが私に頼るなんて珍しいじゃない。いつも数字とデータがすべて!って言ってるのに?」
「データも完璧じゃないのよ!こういうのは現場の声が大事なの!」
ジーナがぐいっと前のめりになってくる。そこまで必死なら、まあ付き合ってやるか。
「じゃあ、最近の売れ筋を教えてあげるわ。」
カウンターの奥から、今の人気酒のリストを引っ張り出してくる。
「うちで今よく出てるのは、『霧の森エール』と『紅焔エール』ね。」
「ふむ…特徴は?」
「霧の森エールは、魔法の森で採れる若葉の香りを閉じ込めた淡色エール。ほんのり甘くて軽い飲み口。霧がかった森を歩いてるような爽やかな香りが特徴で、食事と合わせやすいのよ。」
「無難ね。」
「で、紅焔エールは焔果っていう赤い果実を発酵させたエール。飲んだ瞬間、舌がピリッと刺激されて、まるで口の中で火花が散るみたい。辛口で後味はキリッと締まるけど、クセになる刺激でハマる人が多いわね。」
ジーナは考え込む。
「万人受けするのは霧の森エールかしら。でも、品評会ならちょっと特別感があるほうがいいのよね…」
「その通り!」
私はニヤリと笑う。
「じゃあ、今売れてるのはどっちだと思う?」
「うーん…爽やかで飲みやすい霧の森エールのほうがウケそうだけど。」
「ブッブー、ハズレ。」
「は?」
私はカウンターをコツコツと叩く。
「今ね、客の様子を見てると、ただ飲みやすいだけの酒じゃなくて、もっとパンチのある酒を求めてるのよ。」
「そんなもの?」
「そんなものよ。みんなちょっと刺激がほしくなってるの。まろやかなエールより、ガツンとした味が飲みたいって感じね。」
ジーナがメモをとる手を止めて、じっと私を見た。
「…意外とアンタ、ちゃんと市場読めるのね。」
「失礼ねぇ。」
「いいわ、今回の品評会は紅焔エールでいく。」
数日後――
「リリィ!!!」
ジーナが店に飛び込んできた。
「…今度は何よ。」
「あの紅焔エール、大当たりだったわよ!!!」
「おお!?やっぱりね!」
「まさか本当に刺激系が流行るなんて…アンタ、商才あるんじゃない?」
「ふふん、まぁね~。」
「…なんかムカつくわね。」
調子に乗った私は、ジーナにこう言った。
「じゃあ次は…“超苦い酒”が流行るわ!」
「本当?」
「間違いない!!!」
ジーナ、またも私の言葉を信じて大量に仕入れる。
――結果、大爆死。
「リリィ!!アンタ、どうしてくれるのよ!!」
「え、苦みブーム来ると思ったんだけど?」
「全然売れないわよ!!!」
「でも、ちょっとは売れたんでしょ?」
「…うん、酔いどれ亭で。」
「ほら、うちの客は変わった人が多いから。」
「この店だけで売れても意味がないのよ!!!」
店の中で怒るジーナ、苦い顔で飲む常連たち――
こうして、私のトレンド予想は、一度だけ奇跡を起こした。
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