第23話 マジックおつまみ消失事件!
今日も酔いどれ亭は大盛況!
お客さんたちの笑い声に包まれながら、私はカウンターで新作のおつまみ「魔法カボチャのローストシード」を仕上げていた。魔法カボチャの種をじっくりローストし、ハーブソルトとピリッとスパイシーなパプリカパウダーをたっぷりまぶす。カリッと香ばしい食感に、じんわり広がる深い風味。これ、絶対お酒が進むやつ!
「なあリリィ、それはもう俺の腹に収めてもいいだろ?」
カウンターに前足を乗せて、看板ドラゴンのドラコがじっとローストシードを見つめている。完全に獲物を狙う目だ。
「ダメよ、これはお客さん用だから。あなたの分は余ったらね!」
「ケチくせえな……。俺の腹こそ、この店の品質管理担当だってのに。」
「それとこれとは別! ほら、向こうで大人しくしてなさい!」
ドラコは不満げにしっぽをバタンと叩きながらもカウンターから降りていったが、視線だけはローストシードから一瞬も離れていない。絶対狙ってるわね……。
そんなとき、店の扉がバサッと派手に開いた。
「リリィ嬢、ごきげんよう!」
現れたのは、黒と赤の豪華なマントを翻す奇術師、レオン・グリモワール。彼が来ると店が盛り上がるのは確実だけど、同時にトラブルが付いてくるのもお約束。
「レオン、今日も派手にやらかす気じゃないでしょうね?」
「やらかすとは失礼な! 今日は特別なトリックをお見せしに来たのだ!」
マントを翻してウィンクを決めるレオン。そんな余裕満々の態度が一番怪しいのよ…。
「とりあえず、お酒でも飲んで落ち着いて。『エンチャンターズ・フロスト』でいい?」
ブルーリキュールとスパークリングワインを合わせ、銀粉を散らした涼やかな一杯を用意する。見た目はまさに魔法そのもの! レオンにぴったりよね。
「さすがリリィ嬢! 君のセンスにはいつも驚かされる!」
レオンは調子よくお酒を飲み始め、店内はいつものように即席マジックショーの雰囲気に。軽いトリックでお客さんを沸かせたあと、彼は自信満々に宣言した。
「さあ皆さん、ここからが本番! 看板ドラゴン、ドラコ殿を――消してみせましょう!」
「おい、なんで俺が標的なんだよ!?」
ドラコが抗議しても、レオンは聞く耳を持たずに杖を掲げた。
「君ほど目立つ存在が消えたら、観客の驚きもひとしおだ!」
私も慌てて止めに入るけど、レオンはノリノリで呪文を唱え始めた。
「いざ! 消え去れ、ドラゴンよ!」
杖からキラキラした光が放たれ、店内はまばゆい光に包まれた。お客さんたちも「おおー!」と歓声を上げる。
だが、光が収まると――消えたのはドラコではなく、カウンターに置いてあった「魔法カボチャのローストシード」。
「余ったら俺にくれるって言ってたつまみ、どこに行った!?」
ドラコがしっぽを叩いて抗議し、レオンも「おかしいな、ドラコを消すはずだったのに…」と首をかしげる。
「もしかして、マジックでローストシードがどこかに飛ばされたの?」
私は急いで周囲を探すけど、どこにも見当たらない。仕方なく、もう一度作り直すことにした。
「ほら、できたわよ。これだけたくさん作ったら、きっと余って食べられるでしょ?」
「おお、助かるぜ!」
ドラコは喜んで近付いてくる。だけど…なんだか口周りにローストシードの欠片がたっぷりついてるんだけど!?
「ドラコ、ちょっと待って。まさかあなた、さっき光に包まれた隙に食べたんじゃない?」
「えっ…! そ、そんなわけねえだろ! …たぶん。」
「たぶんって何よ! 絶対あなたが食べたんでしょ!」
「いや、ほら、"消えた" んだろ? 俺の腹の中に"転移" しただけかもしれねえ!」
「何その都合のいい理論!!」
店内がざわめき始めたその時――バサァァァアアア!!!!
「おっと、すまない! ちょっとマントを直そうとしただけなんだが!」
レオンが大きくマントを翻し、ガシャーン!!!!!
棚に飾ってあったスパイスの瓶が雪崩のように落ち、店内に大量のスパイスが飛び散る!!
「ぎゃああああ!? 目が! 目がぁ!!!」
「な、なんかスパイスの匂いが強烈に…!」
「うっ…くしゃみが…は、はっくしょん!!!」
カウンターの上にいたドラコがスパイスまみれになり、見たこともないような変な表情でくしゃみを連発!!
「ぐあっ!? なんだこれ…!? 口の中がやたらスパイシー…!!!」
しかし、床に落ちたローストシードを拾って食べた常連客が目を輝かせた。
「…おい、これ、意外といけるぞ?」
「おお、スパイスが複雑に絡み合って、新しい味わいになってる!」
「なんだこれ、病みつきになる!!」
まさかの新商品誕生!?私が呆然としていると、レオンは満面の笑みで手を広げた。
「さあ皆さん!! これが新たな奇術! "奇跡のスパイシーローストシード" でございます!!!」
「マジック関係ないじゃない!!!!!」
こうして、「奇跡のスパイシーローストシード」は、酔いどれ亭の新名物として定着したのだった。…でも、こんなドタバタ、もう二度とごめんよ!!!!!!!
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