第22話 愛が溢れて大混乱!
今日も酔いどれ亭は大賑わい。
酒の香りと笑い声が溶け合い、まるで楽園のような心地よさ――のはずだった。でもカウンターでスケッチブックを構える男、魔法画家エリオス・アーフィールドの姿を見た瞬間、私の警戒レベルは最大値。
嫌な予感しかしない。
「リリィ!今日は君の店の名物、フォルクの似顔絵を描いてみたい!」
「えっ、やめといたほうがいいんじゃない?」
「大丈夫、大丈夫!俺の筆さばきは完璧だから!」
絶対に大丈夫じゃないやつだ、これ。
でもエリオスはノリノリでスケッチを始める。筆が走る音はなかなか心地いい。パパッと動く手際は悪くない。でも、そんな安心感はすぐに崩れ去った。
――キャンバスが怪しく光り、次の瞬間、床にドスンと何かが降ってきた。
「ん? なんだ、このイケメンは…って、俺!?」
そこにいたのは フォルクのそっくりさん。いや、そっくりどころか、髪がやけにふわっとなびいてて、目がキラキラしすぎてる。
「おいおい、なんで俺が二人いるんだよ!」
「はっはっは!奇跡の出会いに感謝しよう!」
コピー・フォルクが、胸に手を当ててウインクした瞬間、店内の空気が変わった。 客たちがざわめく中、コピー・フォルクの視線が ピタリと私に向く。…ちょっと待って、この流れ、まさか――!?
「リリィ!ずっと言いたかった!俺は君を愛している!」
は?????
店中が 凍りつく。
「リリィ!? え、ちょっ、おい待て!」
本物のフォルクが、明らかに動揺してる。いや、私もだけど!?
「君の笑顔は太陽のように眩しく、君の作る酒は天の恵みのように甘美……!」
コピー・フォルクが 私の手を取ろうとする。
ちょっと待って、本物フォルクですらそんなことしないのに!?
「おい、やめろ!俺の名前で勝手に告白するな!!」
本物フォルクが、慌ててコピーの肩をつかむが、コピーはニッコリ笑ってこう言った。
「嫉妬か? だが、それも愛の形!」
「はぁぁぁ!?!?」
店内は 大爆笑。ジーナなんて涙を流して笑ってるし、ドラコは酒を吹き出してる。
「フォルク、お前…リリィのこと、そういう目で見てたのか?」
「そ、そんなんじゃねぇ!! っていうか、リリィも何とか言えよ!!」
「ええっと…いや、ちょっと状況が飲み込めなくて。」
「リリィ!俺と人生を共にしないか!?」
コピー・フォルクが 勢いよく跪いた。
「待て待て待て待て待て!!! お前消えろおおお!!!」
本物フォルクが マジギレ し、とうとうコピーと取っ組み合いが始まった。
「おい、俺の誠実な愛を邪魔するな!」
「どこが誠実だ!! 俺の顔使って勝手に愛を語るんじゃねぇ!!」
二人のフォルクがテーブルの上で大暴れ。
カクテル 『スターダンサーの秘酒』 が見事被害に。これは、夜空のきらめきを閉じ込めた酒。エルフの秘伝レシピで作られたブルーベリーリキュールに、星屑のように輝く魔法の金粉が散りばめられ、グラスの中でゆっくりと光が揺らめく。味は甘酸っぱく、ほんのりスパイスが効いていて、口に含むとひんやりとした余韻が広がる。
…なのに、今、その美しいカクテルがテーブルの上で派手にぶちまけられている!
「エリオス!早く何とかして!」
「待って、修正魔法をかければ――!」
エリオスが筆を振ると、コピー・フォルクの体が光に包まれた。
「ちょっ、ちょっと待て! もう少しリリィと語り合い――」
バシュン!
――消えた。
静寂。
床に座り込む本物フォルクは 完全に疲れ果てて いた。
「…おいエリオス、もう二度と俺を描くな…」
エリオスは申し訳なさそうに、完成した絵をカウンターに置く。
「…これ、記念にどうぞ。」
私は絵を見て思わずため息。
――フォルクの顔、妙にキザな笑みになってる。
いや、ほんと頼むから、もう少し真面目に描いてくれない!?
─
路地裏で、影たちの会話が交わされていた。 「まずいな…もしあの酒場の護衛代わりとなっている冒険者が二体に増えれば、我々の手には負えなくなるかもしれん。」 「今のままでも厄介な存在だ。これ以上、あの店が戦力を持つようなことがあれば――」一人が低く呟く。「事が複雑になる前に、手を打つ必要があるな…。」
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