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酔いどれエルフと酒の歌  作者: チョコレ
第一杯 酔いどれ亭、大騒ぎ!
21/144

第21話 九割引の怪しい酒

 夕暮れの酔いどれ亭。

 私はカウンターで新作カクテルの仕上げに集中していた。


「うーん、もうちょっとレモングラスの香りを強くして…」


 最高の一杯を目指して、細かく味を調整していたその時。


 バンッ!!


 店の扉が乱暴に開かれ、カウンターに酒瓶が叩きつけられた。


「リリィ!!助けなさい!!!!!」


 勢いよく現れたのは酒商人ジーナ・ロスティア。いつもは冷静沈着な彼女が、今日は珍しく焦った顔をしている。


「ちょっ、何よ!?いきなり!!」

「九割引よ!!!」

「…は?」

「この酒、九割引で仕入れたの!!」

「…で?」

「不味いのよ!!!!」

「なんで味見しないで仕入れたのよ!!!」


 ジーナは、まるで大損したギャンブラーみたいな顔で、ガクッと肩を落とした。


「だ、だって九割引よ!?そんなお得な話、断れる!?」

「断れ!!!」

「だから、アンタの店で使いなさい!」

「絶対に嫌!!!」

「じゃないと、私の倉庫が酒瓶で埋まるのよ!!!」

「知らないわよ!!!」


 仕方なく、私はその問題の酒を試しに口に含んでみる。


「…」

「…どう?」

「まずい!!!」

「やっぱり!?!?」

「何なのこれ!?苦いのに甘い!甘いのに渋い!酸っぱいのに味が薄い!」

「情報量が多すぎるわよ!!」

「一体どこの何なのよ!!!」


「えーと、ラベルには…『汎用ベースリキュール』って書いてあるわね。」

「本当に!?!?」


 さすがにそのままじゃ飲めたもんじゃない。


「よし…ここは酔いどれ亭の意地を見せてやるわ!!」

「え?リリィ、何するの?」

「この酒を、美味しくする!!!」


 まずは香りの調整。エルフの森で採れるハーブを贅沢に投入し、上質な花蜜を加える。樽のクセを中和しつつ、全体にまとまりを出すため、じっくりと攪拌。


「おお、ちょっとマシになった…?」


 でも、まだ後味が微妙にエグい。


「ならば、柑橘よ!!」


 オレンジやレモンを絞り、フレッシュな酸味を加えていく。


「…お!?ちょっと爽やかになった!!」


 よし、あと少し。元の酒が濃すぎるせいでバランスが崩れてるから、ジュース割りにして調整だ。リンゴジュースやグレープフルーツジュースで割ると、ぐっと飲みやすくなった。


「これなら…もしかして、いけるんじゃ!?」


 カウンターにいたフォルクとドラコが興味津々にグラスをのぞき込んでくる。


「おい、試しに飲ませてくれよ。」

「俺も!なんか面白そうだし!」

「いいわよ、飲んでみて!」


 フォルクがひと口。


「…お?」


 ドラコがごくり。


「…うめぇじゃん!」

「マジで!?!?」

「ちょっと爽やかで、ほのかに甘くて…なんかジュースみてぇに飲みやすいな!」

「いや、これ普通にアリだぞ!」


 結果、店の客たちも興味を示し、試しに提供してみることに。


「おお!?なんだこれ、意外といけるじゃねぇか!」

「さっぱりしてて飲みやすい!」

「ジュースみたいだから、ついつい飲んじゃうな!」


 なんと、まさかの大ヒット。


「売れる…売れるわよ、これ…!!!」


 ジーナの目がキラキラと輝く。


「これはもう、新商品として売り出せるレベルよ!!!」

「え、ちょっと待って、でもこれ元々は――」

「酔いどれ亭発のオリジナルカクテルとして売る!」

「ちょ、私の店の名前を使わないで!!!」

「すでにラベル発注したわ!!」

「やめてえええええええ!!!」


 こうして、ジーナの仕入れミスは思わぬ形で大成功となったのだった。


 …そして数日後。


「ねぇ、ジーナ?」

「なに?」

「次の仕入れは、どうするの?」

「また別の九割引のお得なもの、見つけたの!」

「やめとけえええええええ!!!!」


 酔いどれ亭の夜は、今日もドタバタと更けていく――。

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@chocola_carlyle

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