第11話 灼熱のサニースライム!
魔法の転移陣が光り、酔いどれ小屋に冒険者が転がり込んできた。
「ぐおおおおお!!!水をくれえええええ!!!」
まるで砂漠を彷徨った旅人のように、全身ボロボロ。ボロ布のようになったマントを引きずり、顔は煤で汚れ、服の端々は焦げている。
私はグラスを拭きながら、眉をひそめた。
「…あんた、また負けてきたの?」
「ぐぬぬ…聞いてくれリリィ!!今回は相手が悪かったんだ!!!」
「毎回それ言ってるわよね?」
「いやいや、今回はマジでヤバかったんだって!!!」
ライナスは椅子に崩れ落ち、ゼェゼェと息を切らしながら語り始める。
「俺が相手にしたのは…サニースライム!!!」
「…は?」
フォルクがジョッキを置いて首をかしげる。
「サニースライム?なんだそりゃ?」
ライナスは震える指で空を指し、まるで悪夢を思い出すような表情で言った。
「…太陽の光を浴びることでパワーアップするスライムだ…!!!」
「はぁ!?!?」
店内が一瞬ざわめいた。
「ちょっと待って、スライムって普通、日陰とかジメジメしたところにいるんじゃないの?」
「それが、こいつは違う!!!」
ライナスは机を叩いて身を乗り出した。
「昼間に戦った俺がバカだった…!!奴は太陽の光を全身に浴びると、まるで炎をまとったかのように輝きだし、最後には…“ソーラー・フレア”を放ってきたんだ!!」
「ソ、ソーラーフレア!?」
驚きのあまり、グラスを落としかける。ライナスは激しく頷いた。
「そうだ!!奴は太陽の熱を溜め込み、一定時間が経つとそれを一気に解放するんだ!!俺はその直撃を受け…スライム狩りどころか、自分が丸焦げになってしまった!!!」
フォルクとドラコが無言でライナスの服をまじまじと見る。ところどころ焦げていて、炭になった部分まである。
「お前、それもうハンターじゃなくてただの焼き芋じゃねぇか…」
ドラコが尻尾を揺らしながら呆れ顔で言う。
「うるさい!!!でも、次こそは絶対にリベンジする!!!」
ライナスは拳を握りしめるが、私はため息をつきながらグラスに酒を注いだ。
「まったく…そんな奴に挑むなら、ちゃんと対策を考えなさいよね」
「対策…か…!!!」
ライナスは考え込んだ後、突然顔を輝かせた。
「よし!!ならばリリィ!!俺に、サニースライムに勝てる酒を作ってくれ!!!」
「はぁ!?」
思わず身を乗り出す。
「お酒でスライムに勝とうっていうの!?どういう理屈よ!?」
「いや、お前なら何かできるだろ!!例えば、光を跳ね返す酒とか!!!」
「そんな都合のいい酒、あるわけ――」
「あるな。」
フォルクがボソッと呟いた。
「えっ?」
私が驚くと、フォルクはニヤリと笑う。
「ほら、前に作ったじゃねぇか。光を反射する酒…」
「あっ!!」
私はすぐに思い出した。
「ルミナス・リキュール!!」
これは、特殊な光沢を持つ水晶砂糖を溶かし込み、さらにエルフの聖樹の葉を漬け込んだリキュール。
まず、グラスに注ぐと、月光を閉じ込めたかのような銀色の輝きがゆらめき、表面がまるで星の瞬きのように煌めく。
ひと口含めば、柑橘の爽やかさと、ほのかなハーブの香りが舌の上で弾ける。まるで夜風に乗る花の香りのように軽やかで、スッキリとした甘みとともにスーッと消えていく。
そして、氷を入れれば――
冷たい光の粒がグラスの中をふわりと漂い、まるで星が流れる天の川。
「うおおおおお!!これだ!!!これなら太陽光を跳ね返せるかもしれない!!!」
ライナスは興奮してグラスを掴み、一気に飲み干した。
「ぐっ…!!くぅぅぅ!!!さっぱりしてるのに、力が湧いてくる!!!」
冷たい清涼感が喉を滑り、体の芯まで爽やかさが駆け抜ける。まるで月明かりの中を駆け抜けるような、心地よい余韻が残る。
「だからって、これ飲んでスライムに勝てるとは限らないわよ……?」
私が釘を刺すが、ライナスはすでに燃え上がっていた。
「よし!!次こそは絶対に勝つ!!俺は…サニースライムハンター・ライナスになる!!!」
「だから、あんたは普通のスライムハンターでしょ!?」
「いや、もう太陽に愛された漢になったんだ!!!」
ライナスは堂々と胸を張り、颯爽と店を飛び出していった。
「…あいつ、次もまた焼かれて帰ってくる気がするな」
フォルクがジョッキを傾けながら呟く。
「うん、次はもう少し火加減を抑えて帰ってきてほしいわね……」
私はため息をつきながら、新しいグラスを磨き始めた。
こうして、またひとつ、酔いどれ小屋の夜に伝説が生まれた――。
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