第10話 究極の泡試しギャンブル!
バァァァン!!!!
「今夜の勝負はこれだ!!!」
店の扉が勢いよく開き、派手なロングコートを翻しながら現れたのは、ギャンブル狂の策士、エゼル・ワルディア。
「また勝負?」
私はカウンター越しにじとっと睨む。
「そうだ!!今回はこれまでのカードやダイスとは一味違う!!技術と度胸、そして運を試す新たなゲームを持ってきた!!!」
フォルクがジョッキを置いて苦笑する。
「ほう?どんな勝負だ?」
エゼルはニヤリと笑い、カウンターの上に一本の針を取り出した。
「名付けて――『ドラゴンニードルバトル』!!』」
「……は?」
店内が一瞬静まり返る。
「ドラコが最高に濃密な泡を作り、その上に針をどれだけ刺せるかを競うのさ!!」
「…おいおい。」
フォルクがドラコを見る。
「ドラコ、そんな泡作れるのか?」
「フン!俺を誰だと思ってんだ!」
ドラコはカウンターの上で自信満々に胸を張る。
「俺の泡立て技術は、ただのドラゴンレベルじゃねぇ!!」
「…そんな技術あったの?」
「あるんだよ!!!」
私は頭を抱えた。
「はぁ…まぁ、面白そうではあるけど。」
「面白いだろ!!!」
エゼルが勢いよく針を握り、店内の冒険者たちもざわめき始める。
「おお、これは興味深い!」
「そんなゲーム、聞いたことねぇぞ!!」
「俺も挑戦してぇ!!」
「いいだろう!!じゃあ、まずは俺が手本を見せてやる!!!」
エゼルが胸を張る。
「ドラコ!!最高の泡を出してくれ!!!」
「へっ……任せとけ!!!」
ドラコはひとつ大きく息を吸い――
「ぷぅぅぅぅぅううう!!!!」
カウンターの上に、ふわっふわの超濃密泡が現れた。
「おおおお!!これは……!!」
泡はまるで魔法がかかったように、しっかりとした形を保ち、ぷるんと揺れている。
「……これ、本当に泡?」
私は指でつついてみる。
「おい、つぶすなよ!!!」
「わかってるって!」
エゼルが針を構え、真剣な表情になる。
「よし……まずは1本目……!!」
スッ――
ぷすっ……
「……入った!」
店内がどよめく。
「おおお、泡が崩れねぇ!!」
「すげぇ、あんなに細い針なのに!!」
「ふっ……当然だ!!!」
エゼルは得意げにニヤリと笑い、次々と針を刺していく。
2本、3本、4本……
「おおお!!まだ崩れない!!!」
「これ、どこまでいけるんだ!?」
フォルクやジーナも見守る中、エゼルはさらに慎重に針を進める。
「10本目……!!!」
ぷすっ――
「入った!!!」
「すげぇぇぇ!!!」
店内の歓声が上がる。
「ふははは!!これが俺の技術と度胸だ!!!」
エゼルが勝ち誇る。
「じゃあ、次は……リリィ、お前の番だ!」
「……えぇ?」
私は微妙な顔になる。
「いや、私、こういう細かいの苦手なんだけど……」
「勝負事から逃げるのか!?」
「うるさいわね!!!」
私は渋々、針を手に取る。
「……慎重に、慎重に……」
スッ――
ぷすっ……
「おお!1本目クリア!!」
私はさらに針を進めていく。
2本、3本、4本……
「おおお、これはリリィが逆転するか!?」
「ふっ…私は酒場の女将よ。こんな細かい作業、朝飯前――」
ぷるんっ
「――あっ。」
どっしゃあああああ!!!
泡が一気に崩れ、カウンター全体が泡まみれになった。
「ぎゃああああああ!!!」
「リリィ、お前ぇぇぇぇ!!!」
「ちょ、ドラコの泡が顔に……!!」
店内、大混乱。
エゼルが涙目になりながら叫ぶ。
「くそぉぉ!!俺の記録は破られなかったが…なんだこの惨状はぁぁぁ!!!」
「ふぅ…これは営業停止かしら。」
私はため息をつきながら、泡だらけのカウンターを拭く。
「ったく、なんでこんなことになったのよ…。」
「いや、お前が負けたせいだろ!!!」
フォルクがツッコみ、ジーナは肩をすくめる。
「まぁ、面白かったんじゃない?」
「俺の泡を使うなら、もっと慎重にやれよな…!!!」
ドラコがしっぽを振りながら文句を言うが、もう遅い。
「…はぁ。もう、こうなったらお酒でも飲まないとやってられないわね。」
私はカウンターの奥から『スターダスト・エール』を取り出した。
「これは特別よ。銀河のようにきらめく泡と、ほのかに甘い香りのラガー。最後に加える月光ハーブが、すっきりとした後味を生み出すの。」
泡まみれになった全員が、一斉にグラスを持ち上げる。
「乾杯!」
ゴクッ、ゴクッ……
「……っ!!!」
「こ、これは……!!」
銀色にきらめく泡が舌の上で弾け、麦の香りがふわりと広がる。後味にはハーブの清涼感が心地よく残り、どこか幻想的な余韻を残す。
「…美味すぎる…!!」
「でしょ?」
私はニヤリと笑いながら、グラスを傾けた。
こうして、「ドラゴンニードルバトル」は大波乱のうちに幕を閉じたのだった。
……そして翌日。
「リリィ!!大変だ!!今度は泡をどれだけ積み上げられるかっていう『ドラゴンバブルタワー』をやりたいって奴が来てるぞ!!」
「もうやめてぇぇぇぇぇ!!!!」
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