第8話 毒リンゴのタルトタタン
バァァァン!!!!
「リリィさぁぁぁぁぁん!!!!」
店の扉が吹き飛ぶ勢いで開き、ミネットが全力疾走で駆け込んできた。
ズベシャァァァァァッ!!!!
「ぎゃあああああ!!!」
ゴロンゴロンゴロン……ドンッ!!
カウンターに着地した箱がピタリと静止したあと、グラリと傾き――
バタンッ!!!!
箱、落下。
「ぎゃああああああ!!!!」
ミネット、床に這いつくばって悲鳴を上げる。
「もう!!!なんで毎回こうなるのよ!!?」
「ち、違うんです!!!これは運命の悪戯です!!!」
「いや、違うでしょ!!!」
ミネットは涙目になりながら、そっと箱を開けた。
「ああああああ!!!!」
「私の『毒リンゴのタルトタタン』がぁぁぁ!!!!」
「……また変な名前のやつ来たわね。」
「違います!!毒が入ってるわけじゃないんです!!!」
「えっ、じゃあ何?」
「あまりにも美味しすぎて、中毒性があるって意味です!!」
「一度食べたら最後、もうやめられないほどの味!!」
フォルクが呆れたように言う。
「まさか、これを食べた人が全員もう一切れ、もう一切れって欲しがるとか?」
「その通りです!!!」
「いや、誇るな!!!」
私は崩れたタルトタタンを見つめ、一口食べてみる。
「……っ!!?」
「ど、どうですか!!?」
「……これは……」
……濃厚!!!!
じっくりとキャラメリゼされたリンゴが、まるで琥珀のような輝きを放ち、バターと砂糖の香りが口の中でとろける。
「くっ…これは確かに…!」
フォルクも試しにひと口食べ、目を見開く。
「おお……!これはたしかに、中毒になりそうな甘みとコクだ……!」
「でしょでしょ!!!」
「ふむ……この強烈な甘さとコクに合うお酒は……」
私は悩んだ末、グラスにカルヴァドス(リンゴのブランデー)を注ぐ。
「え、リンゴのお酒?」
「そう、このタルトタタンの濃厚な甘さを引き締めるには、リンゴ由来の深い香りとスッキリした後味が必要なの!!」
さらに、そこにバーボンをほんの少し加える。
「これで、まるで禁断の果実に手を伸ばすかのような危険な味わいになるのよ。」
ミネットは興奮しながら、タルトタタンをひと口。そして、カルヴァドス+バーボンをひと舐め。
……!!!!
ミネットの目が輝き、拳を握る。
「ま、まさに……!!!!」
「まさに?」
「後戻りできない味!!!!!」
「どこへ行こうとしてるのよ!!!」
「甘さが、キャラメルのコクが…!!それをお酒の香りと苦みが引き締めて、止まらなくなる……!!!!」
「いや、それ本当に毒みたいな効果じゃない!?」
フォルクもグラスを傾け、納得したように頷く。
「なるほどな…甘さを引き締めるお酒のバランスが絶妙だ。これは確かに中毒性がある。」
「でしょ!!!」
ドラコが齧りながら呟く。
「いや、でも本当にこれヤバいんじゃねぇの?俺ももう一口欲しくなってきた。」
「ほら!!もうあなたも中毒!!!!」
「いやいや、食べ過ぎて太るだけでしょ!!!」
こうして、『毒リンゴのタルトタタンとカルヴァドス+バーボンのマリアージュ』が誕生したのだった。
――そして、数日後。
「リリィさぁぁぁん!!!もう我慢できなくて、また作ってきましたぁぁぁ!!!!」
「だから、やめられなくなってるじゃないの!!!!」
ミネットのドタバタは、今日も続く――。
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