第6話 シェイク・クエイク!
ゴゴゴ……!
カウンターに酒を並べていたその瞬間、店がぐらりと揺れた。
「うわっ!? なんだ!?」
フォルクがジョッキを取り落としそうになり、ドラコが棚にしがみつく。ジーナは「なに?」と言いたげにため息をついた。
ゴゴゴゴゴゴ……!!!
床が微妙に波打つように振動し、カウンターの酒瓶がカタカタと揺れる。吊るしたグラスがカチカチと触れ合い、不穏な音を響かせる。
「ちょっと、また揺れてるんだけど!? 地震!?」
私はバランスを取ろうとするが、手元が狂ってグラスを倒してしまう。
「違うな、これは魔法だ。」
フォルクが険しい顔でジョッキを掴む。
「多分……土属性の崩地震かしら?」
ジーナが腕を組みながら呟く。
「おいおい、そんなの普通戦場でしか使わねぇだろ!」
完全に魔法の仕業。
「まさか……昨日のルシルの警告ってこれのこと!?」
魔術ギルドが「妨害してくる」と言っていたけど、まさか店全体を揺らすなんて!
くっそー!やってくれるじゃない!!
しかし、ここで引き下がる私じゃない。
「逆手に取るしかないわね!」
「……逆手?」
ジーナが疑わしげに片眉を上げる。
「そうよ!せっかく揺れてるんだから…“地震酒場”として名物にするのよ!!」
「おいおい、冗談だろ……?」
フォルクが呆れ顔になるが、私は大真面目。
「ちょっとした振動で風味が変わるお酒もあるのよ?だったら、この揺れを利用すれば、新しい楽しみ方ができるわ!」
フォルクとドラコが顔を見合わせる。
「……マジか」
「マジだ」
私は素早く酒棚から材料を引っ張り出した。
『震える一杯、シェイク・クエイク』爆誕!!
ベースは香り高いダークラム。スモーキーな甘みとコクが特徴のこのお酒に、ライムジュースを加えて酸味でキレを出す。
さらに、特製のスパイスシロップを加える。これにはジンジャーとシナモンを煮詰めた、ピリッとした刺激がある。
「最後にこれ!」
私はカウンターの下から小さな魔力氷を取り出し、グラスに入れた。普通の氷と違い、魔法の力でゆっくりと溶けていく。時間とともに酒の味が変わるのが特徴だ。
「揺れるほどに味が馴染む、新感覚カクテルの完成よ!!!」
私はグラスを高々と掲げた。
ゴゴゴゴゴ!!!
絶妙なタイミングで店が揺れる!すると、グラスの中でラムとスパイスがゆらゆらと混ざり合い、香りがふわっと広がる。
「さぁ、誰が最初に試す?」
ドラコがニヤリと笑い、「俺が行く!」と飛びついた。
一口――
「……おおっ!? なんだこれ、揺れるたびに風味が変わる! ラムの甘みが強くなったり、スパイスが際立ったり……!しかも、このジンジャーのピリッとした刺激がクセになる!」
フォルクも興味津々で一口飲む。
「…確かに、揺れでちょうどいい感じに混ざるな。普通にシェイクするよりナチュラルに味が馴染むっていうか…くぅ、うまい!」
大成功!!
周囲の客たちも興味を持ち始める。
「おい、俺もそれ飲んでみたい!」
「こんな揺れが楽しくなる酒なんて聞いたことねぇ!」
私はカウンターに立ち、笑顔で叫ぶ。
「酔いどれ小屋名物!震えれば震えるほど美味しくなる『シェイク・クエイク』、お試しあれ!!」
客たちが次々に注文を入れ、店内は一気に活気づいた!
すると――
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
再び大きく揺れる店。しかし、その中で客たちの歓声が響く。
「うおっ、これは飲み頃だ!」
「ちょうど今いい感じにシェイクされたぞ!!」
店の外、魔術ギルドの妨害担当と思しき魔術師が呆然と立ち尽くしていた。
「…な、なんでこんなに盛り上がってるんだ…!?」
私はニヤリと笑いながら、グラスを掲げた。
「魔術ギルドさん、揺らしてくれてありがとう!!おかげで新名物ができたわ!!」
「くっ…次は魔法の深淵を見せてやろう!」
妨害担当は悔しそうに消えていった。
この様子だと、きっとこれから妨害が続くんだろう。
でも――
「……負ける気がしないわね。」
私は『シェイク・クエイク』をくいっと飲み干し、ニヤリと笑った。
──
「…魔術ギルドが動き出したか。」
闇の中、低く囁かれる声。
「ふ…酒ギルド以上の結果を出してくれることを期待しようではないか。」
静かな笑いが闇に溶け、影たちは音もなく姿を消した。
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