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18歳女子が国議会議員を目指す話  作者: 川里隼生


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第9話 労働と暮らしの問題

 パパはよく、国議会議員に残業代が発生しないことを嘆いている。任期中の出席日数が0日でも1000日以上でも、審議が終わらなくて日付を跨いで帰宅したとしても、国から支払われる議員報酬の額は変わらない。この状態が続けば、近いうちに国議会が定数割れを起こすのではないかと私は危惧している。身を粉にして働く覚悟や自覚も大切だけれど、国議会議員として働くことが魅力的でなければ、優秀な人が議員を目指さなくなって政治の質が悪化してしまう。やっぱりこの国おかしいよ。議員を奴隷か何かだと思ってない?


 賃金の問題は国議会議員に限ったことではない。ヨーロッパの中ではヴァレンシュタインは平均賃金が低く、労働者たちはドイツやイギリスなど高賃金の国々へ仕事を求める。すると国内の雇用者は更に安い賃金で働く移民や難民を雇い入れるようになり、ますますヴァレンシュタイン人が外国へ流れていくという悪循環がこの数年で完成してしまった。


 SNSを眺めていても、いずれ外国に移住したいという若い人の数は多い。ヴァレンシュタインの人口は2012年以降、緩やかに減少しつつある。総務局の統計から分析すると、最大の原因は周辺諸国への人口流出。ドイツ、オランダ、ルクセンブルクと、世界有数の高賃金国が比較的近隣にあるため、インターネットで知り合った友人たちはそれら各国での生活を希望しているらしい。


 ノルウェーに住みたいという子もクラスにいた。ノルウェーといえばフィンランドやスウェーデンと同じく、税負担が重い代わりに社会保障制度が充実していることで知られる国。中でもノルウェーは高齢者の社会参画を積極的に推進している。長生きな家系のその子らしいと思った。他にもノルウェーでは子どもの出産費用と学費が無料だし、医療費も自己負担額を超えれば無料になる。そう聞かされたら、誰だってノルウェーに住みたくなるよね。


 ヴァレンシュタインが抱えている最大の問題点は、やっぱり私たち学生が生涯に渡って住み続けたいと本気で思える魅力が感じられないこと。私によるこの表現は、調べた限りではどの政党もまだ使っていない。大人たちは最低賃金だとかワークライフバランスだとか、短くまとまっているけれど歴代の政治家たちが言い続けてきた言葉ばかりそのまま使っている。


 パパによると、ニューディール・ヴァレンシュタインが成功すれば最低賃金底上げの見通しが立つらしい。それに対して野党は、失業率改善や個人所得税減税による実質的な収入増加を求めている。他にも育児支援制度の拡充や過剰労働抑制など、今期の国議会で議論された政策は両手の指では数えきれないほどだった。


 私としては、総選挙後の国議会で労働関連法規を白紙改正するべきだと考えている。現在の労働基本法はインターネットや携帯電話が普及するよりも前に制定されたもので、2020年代の働き方を想定していない。また、育児と仕事、介護と仕事を両立させなければならない人々にとって、現在の最低賃金は憲法第25条で保障されている生存権を満たすのに充分とはいえないという法学者からの指摘もある。


 現代の若者は清貧など求めていない。私たちが必要としているのは、働きたいと思える給料と福祉が備わった職場のあるヴァレンシュタインだ。今の議員たちにはその考えがないのかもしれない。これまでの人生で、ヴァレンシュタインの安い賃金と不親切な社会保障を当たり前だと思い込んでいるから。ヴァレンシュタインの明るい未来を掴むために、私は何度でも繰り返す。議員報酬削減反対!

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