表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

第8話 新型コロナウイルスと経済に関する問題

 2020年。COVID-19と呼ばれる未知の新型コロナウイルス感染症がヨーロッパ全土で爆発的な流行を始めた。ヴァレンシュタインにおける初の感染確認は1月31日。感染者は中国から来ていた観光客だった。その観光客は帰国してから感染が発覚したけれど、市中感染はとうに始まっていただろうと推測されている。


 3月17日。EUの決定に従って国内の外国人観光客全員を帰国またはホテルに隔離させ、ヴァレンシュタインは国境封鎖を実施した。インフラ維持のための施設以外は公営民営を問わず休業となり、事実上のロックダウンが始まった。私が通う学校も休校になったし、毎日どこかへ出かけていたパパも家にいるようになった。移動が少ないほどウイルスを封じ込めることができる。私を含め、みんなその言葉を信じていた。クリスマス前に戦争が終わると信じていた、100年前の人々のように。


 クリスマスが2度巡った今でも、世界は新型コロナウイルスに怯えて暮らすことを強いられている。しかしその間に東京と北京では世界のアスリートを集めてオリンピックが開催され、今年に入ってからはマスク着用義務が欧州各国で撤廃されていった。ヴァレンシュタインにもワクチン接種証明を片手に近隣諸国から観光客が戻りつつある。私は人類がこの感染症に打ち勝つことを諦め、この感染症と共に歩むことを決意したように感じた。


 ヴァレンシュタインが受けた被害はウイルス感染者数と、感染症による死者数だけでは充分に示すことができない。100日以上に及ぶ国境封鎖と強制休業やドイツにおけるロックダウン、その他各国の感染防止措置による影響などで、ヴァレンシュタイン経済は大きな打撃を受けた。ここからどう経済を立て直すか、きっと有権者たちは関心を寄せているに違いない。


 私は今回の感染症では、学校を卒業したばかりの若年層が最も経済的なしわ寄せを食らったと考えている。なにせ多くの企業が従業員の新規採用を見送るか、その規模を縮小したのだから。若者の失業率は危機的状況に陥っている。こういうときこそ若者を支持基盤に持つ革新党が、率先して雇用創出の機会をつくるよう国務局長会議へ働きかけるべきだ。


 保守党も今後の経済政策についてニューディール・ヴァレンシュタインと呼ばれる経済対策を打ち出している。もちろん名前の由来は、世界恐慌を克服しようとアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領が実施したニューディール政策から。内容は欧州中央銀行の金融緩和策によって景気浮揚を促し、同時に水道管工事などの各種公共事業を臨時に行って雇用を創出するというもの。新たな事業として武器の生産と海外輸出も視野に入れているという。


 武器輸出について反対しているのが新興党。特定の外国と軍事的に良好な関係を築くと、その国が戦争を行った場合にヴァレンシュタインが間接的に関与していると批判されかねないからだというのがその理由。どの国が上客になろうがなるまいが、ヴァレンシュタインの未来は切り開かれないと言っていた。革新党は臨時の雇用創出ではなく、個人事業主の救済も含めた継続的な景気回復策を求めている。どちらの党も具体的な対案は発表していない。


 対案がないなら反対しないでほしい。まだパパがルッツ前首相の秘書だった頃、パパが映っているかもと思って見ていた国議会中継を見て思ったこと。記憶が正しければ当時は野党だった保守党の議員たちが、革新党議員の演説中に反対、反対と連呼していた。それを見て私は国議会議員とパパへの印象が悪くなった。経済について私は明るくない。だからこの問題について、悔しいけれど今は与党の政策に従うしかないと思っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ