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第2話 ヴァレンシュタインの政治制度

 秋に行われる国議会議員総選挙への立候補を表明したヴァレンシュタイン高校普通科のリリィ・ハイゼンベルク。その若さと美しさ、何より高校生が国政進出を目指すという珍しさから、遠く離れた日本のウェブサイトで話題を集めている。しかしながら日本人にとってヴァレンシュタインという国は馴染みが薄い。そこで今回はヴァレンシュタインの政治制度について調査し、日本との類似点と相違点を紹介しよう。


 立憲君主制のヴァレンシュタイン公国では、憲法でヴァレンシュタイン公爵が指導者であると規定されている。これは天皇を指導者ではなく象徴としている日本国憲法との最大の違いといえるだろう。実際には公爵の国事行為には全て国務局長会議の助言と承認を必要としており、天皇や英国国王と同じように実務上の権力をほとんど有しない。ただし、国に有事が発生した際、国議会が解散中であっても緊急召集する権力だけは持っている。


 国議会は日本の国会にあたり、全100条からなるヴァレンシュタイン公国憲法では第40条から第67条までに渡って規定されている。 1院制で任期は4年。現在の議員定数は19人。国務局長会議がヴァレンシュタイン公爵に要求した場合は、任期を待たずに解散する。国議会は総選挙直後に首相を選出する特別会、予算案や法案を決議する通常会、解散中に戦争等の非常事態が発生した場合の暫定措置を決める緊急会の3つに分けられる。通常会の会期は国議会議員の任期が終わるまで。


 首相は国議会議員に限らず、ヴァレンシュタイン家、裁判官、国家警察以外の国民なら誰でも指名される可能性がある。国務局長会議は馴染みのある日本語では内閣にあたり、首相が補佐官及び10人の国務局長を指名する。任命するのはヴァレンシュタイン公爵の役割だ。任期はその首相を指名した国議会の任期が終わるまで。首相が任期満了で退任または途中で辞職する場合、国務局長会議のメンバーも全員退任する。国議会は国務局長会議に対する不信任を決議することができ、それが可決された場合、国務局長会議は国議会を解散させるか自身が総辞職するか選ぶことになる。どちらにせよ国議会は首相を再度指名しなければならない。


 人口4万人程度のヴァレンシュタインに裁判所は1ヶ所しかない。国務局長会議から指名された最高裁判官1人と、国民から登用された一般裁判官たちで構成されている。今のところ、元一般裁判官以外の人物が最高裁判官を務めた例は初代しかない。裁判所は国議会が成立させた法律を審査し、最高裁判官を含む過半数の裁判官が違憲と判断した場合はその法律を無効化できる。また、最高裁判官は国議会から弾劾された場合を除いて罷免されない。


 ここからは現在の国議会について掘り下げていこう。国議会の定数が19だからといって、19人しか当選しないとは限らない。歴代のヴァレンシュタイン首相はいずれも国議会議員から選出され、首相就任に合わせて議員を辞職した。憲法によって首相と議員の兼務が不可能とされているためだ。国議会に欠員が出た場合、直近の総選挙で次点だった候補者が繰り上がって当選扱いとなる。このため、現在の議員定数を19.5と揶揄することもある。


 現在の与党は保守党。主な政策は各種増税による富の再分配と外国人観光客誘致。野党には自由主義を大きく掲げて保守党に対立する革新党と、軍事的独立を主張する新興党が議席を持っている。リリィ・ハイゼンベルクは革新党からの出馬を表明した。彼女の父であるオリバー議員は保守党。親子でありながら、どうやら支持基盤を引き継いで世襲議員になるつもりはないようだ。


 リリィは現在、SNSを通じて若者の意見を集めている。ヴァレンシュタインでは昨年の法改正により、18歳から国議会議員に立候補できるようになった。国議会議員総選挙は全国区で行われ、比例代表制は採用されない。従来から比較的若い層に支持されてきた革新党としては、リリィの存在は他の候補者にとっても好材料になると考えているのだろう。

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