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18歳女子が国議会議員を目指す話  作者: 川里隼生


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第11話 公共交通民営化案

 国議会議員に立候補できるようになったとき、公共交通民営化を提案しようと思った。これは私オリジナルの政策ではない。前々から革新党は将来的な公共交通民営化を主張していた。マニフェスト作りのためにヴァレンシュタインが抱える問題を振り返ってみて、これまで先送りしてきた民営化に今こそ踏み切るべきタイミングだと感じた。


 環境開発局が運営する公共交通には路線バスと地下鉄がある。どちらも設備が古く、利用者からの人気も低い。これまでは路線バスと地下鉄がタクシーを除いた唯一の公共交通機関だったために、国のお金を使ってまで維持してきた。歴代の環境開発局長たちが運賃値上げや部分廃線に踏み切っても業績が好転することはなかった。私が思うに、慢性的な赤字の原因は競争相手がいないことによる現状への満足だ。


 路線バスと地下鉄を分割して民営化すれば、乗客の取り合い競争が始まる。空調をはじめとした車両設備の刷新や、工夫を凝らした新しい輸送サービスが始まる。運賃の引き下げも期待できるかもしれない。それに伴って雇用が創出される。優秀な人材をライバルにとられるわけにはいかないだろうから、きっと賃金なり福利厚生なりで差をつけようとするはず。働きたいと思うビジネスモデルの先駆けになってもらいたい。


 道は国の血管だとパパが言っていた。交通が活性化すれば街が活性化する。沿線の商業施設が潤うのはもちろん、通勤通学需要を見越せば都心部から離れた閑静な地域に住宅街を形成しておくのもいい。この住宅事業も行政主導ではなく、新しい民営交通企業がグループ会社を作って運営してもらう。そうすれば経済的ニーズに合わせた多様な住み方を選択できるようになるだろう。


 路線バスと地下鉄を手放して余裕のできる国庫はどうしようか。またパパの受け売りになるけれど、お金は水と同じで、動かさないでいると腐ってしまう。議員報酬増額を提案するのは早くともルッツ前首相の事件による国民感情の悪化が治まってからにするとして、少しは保守党の支持層に歩み寄って富の再分配とやらに着手するのもいいと思う。いつまでも対立してばかりでは前に進めないから。


 具体的に言うと、大学跡地に多目的社会福祉施設を建設し、公費で運営する。保育所に介護施設、診療所、図書館、体育館、カフェテリア、それにライブハウスも併設しよう。教室のない学校のような施設。それを国家予算で運営できたら、きっと素晴らしい。世界各地で叫ばれている分断の危機とは縁遠い、ヴァレンシュタイン国民全員が集まる屋根付き公園を目指すんだ。国際博覧会の会期が3ヶ月なのに対して、この施設は無限の未来へ続いていく。ヴァレンシュタインから未来の可能性を発信し続けることができる。


 分割民営化への反対意見として、私は不採算路線の減便や廃止によって郊外の住民、中でも高齢者に影響が出るという声を予想した。予想したというよりは、SNSの意見を見たというほうが正しい。その意見に対しては既存の民間タクシーがあるから市民の足が完全になくなるということはないし、そもそも即座に廃止されるような赤字路線なら既に廃止されている、と反論するつもり。当選が決まるまで、私の参謀は顔も知らない画面の向こうの人ということになる。


 マニフェストは出揃った。私なりに、この国が抱える様々な問題への打開策を考えた。私を支持してくれる人は、果たしてどれくらいいるだろう。ニュースによると候補者は57人で、定数のちょうど3倍とのことだった。24歳以下の候補者も私以外に何人かいる。若いことは私だけのアイデンティティではなくなった。上位19.5人以内に入ることが私にとってのゴールだとは考えていない。パパと同じ議場で戦うための試験だ。いよいよ月曜日から、第11回ヴァレンシュタイン国議会議員総選挙が始まる。

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