64話 変なこと言うの、やめてもらえます?
神妙な顔のジルベルトが続けた謝罪の中には――。
「私の軽率さで、善き精霊を殺してしまった……大切な、国守の精霊を。それを守り続けてきたルーカッセンの行動は、正しいものだった」
「え」
予想だにしなかった変な単語が混じってて、私は思わず声を上げてしまった。
ジルベルトが大げさにうろたえるが、こっちも驚いていててそれどころじゃない。
「な、なんだ今の声は……!?」
「ちょっと、国守ってどういうこと? 国守の精霊は消滅したんじゃ……」
「せ、精霊? 生きていたのか!?」
欠片から飛び出せば、ジルベルトが目を見開く。
「よ……よかった」
安心したように息を吐いて、それから表情を改めるとまた頭を下げた。
「私を許してくれとは言わない! だが、どうか、国は……この国だけは見捨てないでほしい! 父や兄は、国を思い民を思い、そして精霊の在り方をしる、正しき王族なのだ……だから!」
「いや、盛り上がってるところ悪いけど、国守って一体なんのこと?」
「は? だから、精霊が……」
要領を得ない説明にしびれを切らしルヴァを振り返れば、眉間のしわが消えて、苦笑を浮かべていた。
「ミラ、君は新たな国守の精霊になるだろう存在だ。――だから母上が託され、僕が引き継いだ」
「……え?」
私は、黒幕の悪い鏡の精じゃなかったの?
だって、あれ?
ええ?
「――詳しい話は、上でしましょうか、鏡の君」
「スィーヤ!? 降りてきたの!?」
「もちろん、可愛い弟子と敬愛する貴方を、いつまでもこんな所においておけるわけないでしょう」
宮廷魔術士の正装ローブでバッチリ決めたスィーヤが、いきなり現れる。
「ヴォーテ!? 精霊が無事だと、知っていたのか? なぜ教えなかった!」
「教えたら、殿下は陛下の話をお聞きにならないでしょ? それこそ、今度こそ息の根止めるとか言って間違った方に突っ走りそう。そうなったら、完全に修正が効きませんよ。……私も、敬愛の対象と自分の弟子を足蹴にされて黙っているほど、日和ってませんから」
スィーヤがルヴァを牢に入れたのは、王子と引き離すためか!
それで、未来が見えるから私が生きていると分かってた。
だから、安心してルヴァをひとりに出来たんだ。
「スィーヤ!」
「言ったでしょう、鏡の君。私は、貴方の守手の味方だと」
「うん!」
「それじゃあ、さっさとここから出ましょう。……少々、立ち会っていただきたい所があるので」
私とルヴァは顔を見合わせる。
「うちのティアが、邪霊に魅入られて穢れていると、訳の分からん言い掛かりを付けてくるご令嬢がいましてね?」
スィーヤ、笑ってるけど青筋浮いてる……。
「そのご令嬢の言い分だと、自分こそが神の神託を受けた真の聖なる乙女であるってことらしいんですけど……臭うんですよね」
「……ご令嬢って言うのは、セレス・フォン・メイベルンとかいう名前だったりする?」
あは、とスィーヤは明るく笑った。
「あの迷惑令嬢、たしか、そんな名前でしたね」
「……ジルベルト王子と組んでいた相手だな」
ルヴァが呟けば、ジルベルトは青くなった。
「メイベルン嬢にも、私にしたような説明をすれば、きっと分かってくれる!」
どうだか。
自分だって、ティアにビンタされて恨んでやるって言われるまで、分からなかったくせに。
でも、たしかにこのままにはしておけない。
国守とか色々気になるし……。
「行くか、ミラ」
「――うん」
それに、セレスはなんだか、放っておいたらいけない気がするんだ。




