62話 しなびた王子が現れた!
あ~! よかった!!
間に合って本当によかった。
ルヴァをぎゅうぎゅう抱きしめながら、ホッとする。
ルヴァが泣き止むまで、そうしていたんだけど……この地下牢に降りてくる靴音が聞こえた。
この気配……。
「ジルベルトだ」
私がうへっと顔をしかめて伝えれば、ルヴァも眉間にしわが寄る。
一体、なにをしに来たんだろう?
(私は姿隠してる方が、無難かな……)
視界に入った瞬間、またすぐ「邪霊」だの「殺す」だの言われても嫌だから、消えておこう。
でも、話はバッチリ聞くし、正体ばれた以上、ルヴァになにかあればすぐに出て行くつもりだ。
私はルヴァに「そばにいるから」と囁いて、そっと破片の中へ入り込んだ。
そうしている間に、ジルベルトの気配は近づいてくる。
とうとう奴の姿が視認できたところで、私は驚いた。
(オーラがない……っていうか、まず顔が……)
うるさいくらいキラキラめいた分厚い面の皮をお持ちの王子様。
それが、ジルベルトだったけど……今の彼はどうだろう。
しょんぼりと肩を落とし、しなびた野菜みたいになっていた。
ついでに、片頬にはくっきりはっきり、真っ赤な紅葉が咲いている。
一体、誰に叩かれたのか知らないが、サイズからして女性……剛毅な女性もいたものだ。
私の存在には気付いていないジルベルトは、重そうな足どりでルヴァの方へやってくる。
牢屋に入れられてるのはルヴァだ。
それなのに、まるで向こうの方が罪人みたいな雰囲気を醸してくるんで、なんか調子狂う。
「……ルーカッセン」
鉄格子の前まで来たジルベルトは、そこで足を止めてルヴァに呼びかけた。
うわ、声まで力が無い。
なんか悪いモノでも食べたんだろうか。
でも、別にそんなことを気にしてあげる間柄でもないし……。
「……」
ルヴァは無言を貫いた。
しばしの間。
「ルーカッセン、私は……」
再度の、呼びかけ。
やっぱり、ルヴァは反応しない。
そりゃあ、口ききたくないよね。
付きまとわれたし、色々されたし……。
私もコイツとは話したくない。
なんなら、前世方式で塩まいて追い払いたいくらいだ。
「…………」
「…………」
ルヴァがなにも言わないでいると、気まずくなったのか、ジルベルトも黙る。
本当に、なにしに来たんだろう?
セレスは、上から目線でなんか、ルヴァを哀れんでるようで楽しんでいたけど……コイツは?
勝ち誇りにきたようにも見えない、しょげっぷり。
「…………すまなかった、ルーカッセン」
突っ立ってるだけなら目障りだから、帰ってほしい。
私が、そんな辛辣な考えを抱いたところで、ジルベルトは再度口を開いた。
――聞き違いでなければ、今、謝った……よね?
「本当に、申し訳ないことをしてしまった」
幻聴ではない証拠に、ジルベルトは再度謝罪の言葉を口にしてルヴァに頭を下げた。




