44話 かぶせ厳禁
(私じゃない、誰かってことは……いよいよ蠱毒デスマッチが現実に……!!)
あながち外れていないとか思っていたけど、もうドンピシャ当たりなんじゃないだろうか。とうとう、人数が少なくなって、こっちへ迫ってきたとか……。
「ミラ? どうした?」
「……もしかして、だけどさ。それって、私がここにいるから……とか?」
恐る恐るスィーヤに聞く。
もしも、蠱毒デスマッチクライマックスシリーズみたいなのが始まってて、それにルヴァたちを巻き込んだとしたら……シャレにならない。
『たしかに、気配は辿っているでしょうね。邪霊にとっては力のあるモノは最高級のごちそう。鏡の君はまだ、揺り籠。自らを高めるため、力がありながらもか弱い存在を狙うのは、向こうの常套手段です。……以前も、それでやられましたから』
「スィーヤ?」
『食いそびれたモノが、おいしく育った頃、再び現れる可能性が高いです。それ以外にも、ここには魔力がありか弱い存在……人間の子ども達が大勢通っています』
つまり、餌場ってことじゃん。
「で、でも、まだ本体は自由に動けないよね? だって、自由だったらとっくに教官とかよく遊びに来てるスィーヤが気付くよね?」
『もちろんです。完全ではないからこそ、機会をうかがっているのかもしれません。とにかく、学園も対処するみたいなんで、鏡の君もご安心を。貴方には、頼りになる守手がいますよ』
スィーヤが悪戯っぽく笑うと同時に、横から手を握られた。
驚くと、ルヴァが真剣な顔をしてこっちを見ていて、目が合うと頷かれる。
「君は僕が守る。不安がるな」
「ルヴァ……」
ルヴァにとって、瘴魔はトラウマだろうに……。
それでも、私を安心させるために、こんなことを言ってくれて。
「私が不安なのは、ルヴァたちが危ない目にあうことだよ。……私はただ、平穏に過ごして欲しいだけなんだから」
そうだな、とルヴァは同意するかと思った。
でも、少しの間なにも言わず沈黙した。
そのかわり、手を握る力が強くなる。
「――それは、できない相談だな……君の事に関しては、絶対に譲れない」
『あ~、じゃあ、そろそろ私はおいとまするかな~!』
ルヴァがやっと口を開いたと思ったら、同時に気まずい空気を変えようとしたんだろう、スィーヤも声を上げた。
しかも、わざとらしく大きな声を出したスィーヤによって、なんか言っただろうルヴァの声が全然聞こえない。
『……あ……』
「…………」
ルヴァがすごい顔でスィーヤを睨んでる。
「とっととお帰り下さい、スィーヤ師匠!」
『あ、ちょ、ごめ――』
机の上のペンダントを荒っぽく手にしたルヴァは、そのまま魔力の供給を遮断した。
とたん、慌てていたスィーヤの映像も消えてしまう。
「……ルヴァ? ごめんね、私、よく聞き取れなくて」
「いい」
そのまま、ルヴァは椅子に腰掛け、ふたたび机に向かう。
「大事な話だった? きっと、そうだよね、なんか怒ってるもん」
「もういい」
「いや、よくないって、ねぇ、ルヴァ」
「……君のお願いなんて、聞くもんか」
ありゃ、これは完全にへそを曲げてしまった。
恨むぞ、スィーヤ……!




