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33話 議題、謎な令嬢について

 ルヴァが午後の授業を受けている間、私は考えごとに没頭することにした。


 脳内議題は、昼休みに爆弾落としていった自称、悪役令嬢さん。


(最後に悪役令嬢って言ってたけど、まさか公爵令嬢と言い間違ったとか? じゃなければ聞き違い……やっぱり、どっちもないか。がっつり、はっきり、明朗な滑舌で悪役って自称してた……)


 だとすれば頭が痛い。

 ただでさえ、ジルベルトのうざ絡みが面倒すぎるのに、ここにきてまた妙な人が接触してきたのだ。


 ルヴァとティアがドン引きしていたこともあり、スルー案件とは思えない。

 

 ――正直、私は名前だけならずっと前から彼女を知っていた。

 

 セレス・フォン・メイベルン。


 美良子時代の記憶を引っ張り出せば、それはゲームに出てきたライバルキャラの名前と符号する。

 

 公爵家の娘で、黒い巻き毛に青い瞳の華やかな美人。

 ジルベルトの最有力婚約者候補と囁かれているため、取り巻きも多く、もちろん彼女自身、自分に絶対の自信がある。


 平民出である主人公ティアを馬鹿にしているが反面、注目を浴びている彼女に苛立ってもいる。

 なので、なにかに付けて張り合ってきて、ミニゲームで勝負をしかけてくる。

 それで攻略キャラの好感度が上がったり下がったりする。


 これだけならパラ上げ要員で終わるけど、彼女とある程度仲良くしておかないとエンディング目前で攻略キャラを横取りされてしまう。確率で防げたけど……そういうイベントがあったせいか、好き嫌いがはっきりと別れるキャラだった。


 ただ、昼休みに現れた彼女は……。


(ゲームだと、あんな性格ではなかったような……?)

 

 ルヴァとの会話を聞いただけだけど、あの短い間にも妙な点がいくつかあった。


 セレスは、含み笑いじゃなくて高笑いする系。

 なにより、彼女は自分が世界一美しいと思っている自信家お嬢様。

 塩対応には「わたくしを軽んじるなんて許さなくてよ!」と怒るタイプだ。


(あと、自分のことを悪役令嬢って名乗ってた)


 ルヴァのことを、悪役令息とも。


 正直、これが一番引っかかる。

 この世界の人間なら、間違っても出てこない単語。

 

(そういえば、最初もなんか、変なことを言ってた気がする……)


 ルヴァとティアの会話に入ってきたとき、セレスはたしか……――。


『ごきげんよう』


 うーん、出会い頭は極めて普通の挨拶だ。


『ごきげんよう、ルーカッセン公爵子息』


 普通、普通。めちゃくちゃ普通。

 それから、彼女はなんて言ったっけ。


『ごきげんよう、ルーカッセン公爵子息……それから、浄化の力を持つ聖なる乙女』


 ――あ。これだ。

 最後の、一言。


 間違いない。彼女は、ティアのことを知っている。

 宮廷魔術士の養い子ではなく……ゲームのヒロイン、プレイヤーキャラとして。


(セレス・フォン・メイベルンは……ううん、彼女の中の人は……)

 

 浄化の力を持つ、聖なる乙女。


 聖なる乙女という、この呼び名は、ゲームをしていたプレイヤーのみが知る情報だ。


 人物紹介であてられていた肩書きであり、ゲーム終盤で手に入れる称号。

 つまり、まだなにも起きていないこの状況で、ティアのことをそう呼べる人間というのは……。


(私の……美良子の同郷で、同類だ)


 気が付けば授業終了を告げる鐘が鳴っていた。 

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