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30話 時々ふしぎなあの子


(そう。まだルヴァの心が追いついてないんだよ、きっと)


 今はまだ、恋とか、そういうものを意識する時ではないんだ。

 だから、ルヴァが自分で相手を見つけるまでは、今後一切お節介はしない。


「今度からは、なにか相談されてから初めて動きます。今回みたいなことは、しないよ」


 そう言葉にすれば、ルヴァはやっと、眉間のしわを消した。


「それなら、いい。二度とするな。……君に、ああいうことをされるのは……なんというか、すごく、嫌だ」


 呟いて、ルヴァは私の腹のあたりに抱きついてくる。

 体温もない不可思議生命体にくっついても、安心も温もりも得られないだろうに、それでもルヴァはホッとした様子で目をつむって頭をこすりつけてきた。


(うぅ、ルヴァ、ごめん……! それにしても、可愛い……!)


 普段は毅然としているルヴァが、甘えている。

 それだけ大ダメージを与えたことに申し訳なさを覚える一方で、甘えてくれて嬉しいなんて喜ぶ自分もいる。

 はっきりいって、後者の自分はダメだ。反省に欠けている。即刻処刑、ギルティだ。


「……どうした、ミラ。変な顔をしている。それは、困っている……いや、笑っているのか?」

「罪の意識と喜びがせめぎ合って、どういう顔をすればいいか分からなくなってる、全部込み状態」

「なんだ、それは」


 ルヴァが笑う。


「僕は許した。それでも、君の気が済まないというのなら……あれだ」

「ん?」

「……僕を撫でろ」

「――っ」


 スギャーン!!!!


 脳内に響く音は、私の心臓が射貫かれた音だ。(精霊だけど、あると仮定して)

 上目遣いで、照れ顔で、そんなん強請るとか、可愛いが過ぎる!

 可愛いという名の銃弾、圧倒的貫通力……!


「ミラ? ……嫌か? ――ティアにはしたのに……」


 ちょっと不満そうに唇をとがらせるルヴァ。


(拗ねてるー!? これ、完全に甘えっ子モードじゃん!)

 

 外じゃ絶対みせない態度で訴えるルヴァに、私は慌てて返事をする。

 

「喜んで撫でさせていただきます!」


 ルヴァの青みがかった髪に手を伸ばす。

 すると、ルヴァは幸せそうに笑った。


「……不思議だな」

「ん?」

「君といると、子どものままでいられたらと思う時がある。同時に、はやく大人になりたいとも思う」


 あー……十六歳というのは、多感な時期だからなぁ。

 ちょうど、大人と子どもの間で揺れ動く年頃じゃないだろうか。

 だけど、こうして甘えてもらえるうちは、やっぱりなんか嬉しいから……。


「私は、もうちょっと子どもでいてほしいな。あんまり早く大人になられたら、私が出来ることがなんにもなくなっちゃう」


 そう伝えると、ルヴァの腕に力がこもった。


「……僕は、それでも……やはり、大人になりたいよ」

「うん?」


 聞き返すと、ルヴァはうつむいてしまう。

 それから、本当に小さい声でなにか、ぼそぼそと呟いた。

 

「――君を守れる、男になりたい」


 まわされた腕の強さから察するに、なにかとても真剣なことを言ったのだろうけど、私には聞こえなくて……もう一度聞き返したものの、顔を上げたルヴァはふと笑って答えてくれなかった。


「今はまだ、秘密だ」


 う~ん……許してくれたみたいだし、元気になったみたいだけど……なんか気になる……。

 もう、変なルヴァ!

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