95.おみやげ配り①
後半で下級生視点に入ります。
第95話
今日は皆に遊園地のおみやげを配る日だ。
「レイナ!オキロオキロ‼」
「うっう~ん、あぁ...フィクサーおはようございます。」
フィクサーの声で私は目を覚ました。最近、この鳥は私が頼んでもないのに朝になるとまるで目覚まし時計のように私を起こしに来るのだ。
「レイナオミヤゲカンシャスル、アリガトウ。」
「美味しかったなら何よりです。」
ちなみにフィクサーには遊園地の近くにあったショッピングモールで売っていた高級な鳥の餌をプレゼントした。鳥だからという理由でさすがに一人...いや、一羽だけおみやげが無いのもかわいそうだ。今ではこの鳥も立派な家族の一員なのだから。
「玲奈お姉ちゃん‼おみやげ楽しみにしてるね!」
「えぇ、なので午前中は授業頑張って下さいね。」
「うん!」
一応、父と母、そして醒喩にもおみやげを渡しているが陽菜にはまだ渡していない。私も昨日のタイミングで渡そうとしたのだが、『莱們ちゃんを差し置いて私だけ先に受けとるなんてできないよ‼』と言われたので昼休みの三聖室にて渡す事になったのだ。
(なんて優しい子なんだろう...)
下級生以外には兼光と三聖徳会会長の尚喃磨の分も用意してある。まぁ、前者はゲームの攻略対象のため関係を悪化させたくないという思惑、後者は上位貴族が揃い踏みする三聖徳会をまとめている会長への必要最低限の礼儀ってやつだ。
他には学園の生徒だと残るは奈乃波さん、それ以外だと嘉孝さんと叔父ぐらいだ。
岩倉昭三は腹黒い人間だが一応、私の叔父だし冷田正憲の件で父にも内緒で密かに協力して貰った借りもあるため、こういうささやかなお礼ぐらいはした方がいいだろう。嘉孝さんの家の前で指定した時間に来るよう伝えてある。
本人からはこれるかは分からないがこれそうになかったら代理の人間を向かわせるという連絡を頂いている。
「では、学園へ向かいましょうか。」
「はい‼玲奈お嬢様、車の準備はできています!」
こうして私は学園へと出発したのだった。
・・・・・
昼休み、
「皆さん、ごきげんよう。」
「玲奈お姉ちゃん‼待ってたよ!」
「玲奈お姉様‼ごきげんよう‼」
私が三聖室に入ると陽菜と莱們ちゃんが扉の前で待ち伏せしていた。どうやら私からのおみやげを首を長くして待っていたようだった。
「たいした物じゃありませんが受け取ってくれますか?」
そう言って私が二人に差し出したのはお揃いの宝石のストラップだった。下級生達のおみやげは悩みに悩んだが不公平とか言われないように結局は皆でお揃いの物を買う事にしたのだ。
「わぁー‼綺麗!ありがとうございます‼」
「玲奈お姉ちゃんありがとう!」
二人が喜んでくれたようで私はホッとしていた。
「それとこちらを耀心君と三聖徳会メンバー以外の子に配っておいで下さいね。」
「分かりました!」
「それであと1つは誰の分ですか?」
実はクリスタルアイスシティーに出掛ける前に莱們ちゃんにおみやげの希望を聞いたのだが莱們ちゃんはなぜか、5人分のおみやげを頼んできたのだ。
陽菜と莱們ちゃんを除くと一人は萌留ちゃん、もう一人は滓閔なのは分かるがあと一人が誰なのかが分からない。
「あっ‼玲奈お姉様はあの子とまだ会った事なかったですよね‼今度話せる機会を作っておきます!」
「仲が良いんですか?」
「はい、大切な友達です!」
莱們ちゃんが言っているあの子が誰なのかは分からないが仲がよさそうで何よりだ。
「玲奈お姉ちゃん‼皆に渡してくるね~‼」
「あっ‼陽菜ったら...玲奈お姉様‼私も行きますね!」
そう言って陽菜と莱們ちゃんは三聖室から飛び出していった。早く他の皆にもお揃いのおみやげを配りたいらしい。
(さて、私はおみやげ配りを再開しますか...)
私のおみやげ配りはまだ始まったばかりなのだ...
・・・・・
「全員集まったわね!」
『『はーい‼』』
昼休み、人が少ない校舎裏に彼女達は集まっていた。
「これが玲奈お姉様からのおみやげよ‼はい!まず萌留の分!」
「やったー‼」
「これは滓閔の分!」
「ほんとに...本当に玲奈様からのおみやげなんですよね⁉だとしたら嬉しすぎて今なら火の海をも泳げます~‼」
「あのね!やけどじゃ済まないわよ‼あんたまた入院したいか‼」
「ひぃ~!それは勘弁承知の助...」
「はぁ...」
滓閔の言動にやれやれとした表情を浮かべながらも莱們は最後のストラップを手に取る。
「はい!ほらっ‼美冬の分!」
「あっ...良いんでしょうか?私なんかが貰って...」
他のメンバーと違って美冬は岩倉玲奈様と直接会った事はない。それなのに本当に自分なんかが貰っていいだろうかと躊躇してしまう。
「全く~‼美冬ちゃんは頑固だね~‼遠慮しなくていいんだよ!」
「陽菜ちゃんのお姉ちゃんも良いって言ってくれるよ‼」
「美冬さん、私達は友達なんですよ‼」
「陽菜様、萌留さん、滓閔さん...」
こんな温かいグループに入れて貰えただけでも有り難いのにおみやげまで貰えるなんて...美冬は嬉しさのあまり泣きそうになったがそれを必死でこらえる。
「しっ...仕方ないですね⁉受け取らせて頂きます!」
なんとかそう言うと美冬は莱們からストラップを受け取った。
「このストラップは陽菜、萌留、滓閔、美冬...そして私を合わせた5人の永遠の友情の証よ‼大切にしてね!あとこれからもよろしくね‼」
「もちろんだよ!」
「大切にする~‼」
「友情の証...ハートが萌えます...」
「はっ...はい‼」
こうして、1年生組の絆はまた少し深まったのだった。




