閑話.振り返ってみて
閑話
「どうやら、遊園地は随分と楽しめたようだな。」
「えぇ、本当に今日は楽しい1日になりました。」
その日の夜、私は久しぶりに夢幻世界で麻呂さんと最近の話をしていた。
「明日は他の皆さんにおみやげを配らないと...」
「ほぉ?なるほど、おみやげか...」
クリスタルアイスシティーで買ったおみやげの話になると急に麻呂さんがキラキラとした目で私を見てきた。恐らく自分にもおみやげがあるとでも思ってるんだろうか?
「期待してるところ悪いですけど、貴方の分はありませんよ?」
「なっ...何でだ‼私は玲奈のためにいろいろと頑張ってる筈だぞ⁉」
「麻呂さん...貴方、自分が既にこの世の人間じゃないってこと忘れてません?」
「あっ...すまん。」
ぶっちゃけ、私も麻呂さんにおみやげをあげたいという気持ちはある。だが、既に死んでいて夢の中でしか出会えないご先祖様にどうやっておみやげを渡せばいいのやら...麻呂さんもその事に気づいたようで項垂れていた。
「じゃあ私が生まれ変わったら...地獄の刑期があと10兆年ほどあるからそれまで待ってくれないか?」
「いや...私、そんなに長生きはできませんからね!?」
そこまでして、私からおみやげがほしいのか?まさか麻呂さんも攻略対象の一人?...なんてわけないか。とにかく私が麻呂さんにおみやげを渡すのは不可能だ。
「いいかげん諦めて下さい。」
「むぅ...仕方ない。私の寛大な心で許してやろう。」
(はぁ...)
上から目線の言い方がムカついた私はさっさと夢幻世界を去りたいのだが他に聞きたい事があったので思いとどまる。
「ここからが本題です。真里愛ちゃんと沙友里ちゃんに私の事を聞いた女性は何者かご存じですか?」
帰路につく際に真里愛ちゃんから聞いた話だが、謎の女性が私の事を知ってるような素振りで真里愛ちゃんと沙友里ちゃんに話しかけていたらしい。沙友里ちゃんのおかげで幸いその場を凌ぐ事はできたが沙友里ちゃん曰く、あの人には私の事を教えない方がいい気がしたんだとか。
二人の話だと女性は20代くらいで格好は普通の一般人と変わらない服装だったという。私にはこの女性について心当たりが全くないため、沙友里ちゃんの判断は正解だったかもしれない。
「ふぅ...その女、前にもお前の家の庭に隠れていたが岩倉家の警備体制は大丈夫なのか?」
「はっ...はぁ⁉それっていつの話ですか⁉」
「有明滓閔が退院してお前に会いに来た日だ。謎の侵入者騒ぎがあっただろう?」
あっ...あった!フィクサーがいち早く侵入者に気づいて私を呼んで...あれって滓閔が犯人とばかり思っていたけど他にも侵入者がいたって事なの?
(振り返ってみると侵入者が最初から滓閔一人なら7歳の女の子の気配を岩倉家の警備する者達が最初から最後まで気づけなかった事になる...)
恐らく侵入者はフィクサーが私達を呼びにいった数分の間に脱出、そしてたまたま別の目的で岩倉家に侵入しようとした滓閔に擦り付けたんじゃ...あの時は最終回にならずにすんだという安心感からそれ以上滓閔を追及する事はなかった。冷静によく考えれば分かっていたはずなのに...
「おっと、そろそろ地獄に戻らないとまずい...今日はここでお別れさせてもらうとしよう。」
「あっ...麻呂さん待って‼まだ話は終わってません‼」
「あぁ...悪いが続きは今度だ。ではさらば‼」
「ちょっと!?」
私は不安要素を残したまま夢幻世界から追い出され、目を覚ましたのだった。
 




