94.まさか見られていたとは...
第94話
一瞬、鳳凰が何を言っているのか理解できなかった。シスコンとも言われるほど可愛がってきた憩美ちゃんを自分ではなく私に教育してほしいだと?
「あの...それはどういう意味でしょうか?」
「言った通りだよ。憩美を玲奈ちゃんみたいな立派な公爵令嬢にしてほしいんだ。」
「だったら玉里家で教育していけばよろしいのでは?」
「確かにそれも一理あるけどさ...だけど玲奈ちゃんに頼みたいんだ!」
いやいや‼何で将来は敵対することになる私をそんなに信頼するのかが分からない‼鳳凰さんよ...頼む相手を間違えてないかな?
「君が兼藤姫由良ちゃんと大坪蛇茨ちゃんを心無い輩から守ってるのを見てからずっとそう思ってたのさ。」
「えっ⁉」
嘘でしょ⁉という事は鳳凰は入学式直後に起こったあのトラブルをどこかで見ていたという事なの?
「岩倉玲奈ちゃん、君は相手が自分より格が劣る貴族にも...ましてや一般学生にも手をさしのべる...まさに公爵家の誇りなんだ!」
そこまで言われると悪い気はしないが、だからといって憩美ちゃんを私の手で教育してほしいというのはちょっと...なんて思っていると鳳凰が急に小声になって囁いてきた。
「そして、ここだけの話だけど...僕と憩美は実の兄妹じゃないんだ。」
「えっ...えぇー‼そうだったんですかー⁉」
まあ、前世でミラピュアをプレイしていたため、当然知ってるが不審がられると困るのでそれらしく反応しておいた。
「この話はまた今度にしておくね。憩美の為にも...」
「あぁ...はい。」
そう返事をしたものの、私は少しがっかりしていた。
実は鳳凰と憩美ちゃんが血の繋がりがないことはゲーム本編でも説明されていたが詳細については最後まで明かされる事はなかったのだ。そのため、憩美ちゃんの実の両親だったり、前の家での暮らしとかは分からずじまいだった。なのでここでそれが明かされるかもしれないと少なからず期待していたのだ。
「それでさっきの件については引き受けてくれるのかい?」
「それは...」
私が未だに答えを出せないでいると、
「あっ...あのっ‼」
「憩美ちゃん‼さっきから放ったらかしでごめんなさいね。...それでどうかしましたか?」
ここまで黙って鳳凰と私の話を聞いていたであろう憩美ちゃんが口を開いた。
「私...玲奈さんにいろいろ教えて貰いたいです...私からもお願いします!」
「憩美ちゃん...」
こんな可愛い女の子の頼みを断るなんてできるはずがない...でもかといって将来、敵になりうる存在を手元におくのも...
(どうしようかな...)
引き受けるにしても姫由良ちゃんや蛇茨ちゃんや滓閔のように関係を改善できるかが心配だった。一歩間違えればそれが破滅に繋がるのだから...でも私に教わりたいという憩美ちゃんの熱意を無下にするわけにも!!...
「玉里様、その件ですが私には.....................」
「なるほど、それが玲奈ちゃんの選択なんだね。」
「はい...」
私は悩みに悩んだ末、答えを出すと姫香を連れてそそくさとその場を立ち去ったのだった。
・・・・・
「玲奈様...」
「何も言わないで。あれが私の選択よ。」
どうやら姫香は私の選択に納得いってないみたいだ。何やらブツブツと呟いてため息をつきながらクリスタルアイスシティーのパンフレットを見ている。
「で、ここがこの遊園地の目玉となる場所ですか。」
「ここがクリスタリアパレス...」
今、私達がいるクリスタリアパレスはクリスタルアイスシティーの象徴ともいえる城だ。噂によれば何階も高層があり、部屋の中はミラーハウスになっているらしい。そして特に最奥部が桁違いに凄いといわれているのだが詳しくは不明だ。
「早く入れるようになるといいですね。」
「そうですね...」
さっそく入ってみようと言いたいところだが今は増築工事のため閉鎖中らしい。ただでさえ広いのにこれ以上何を作ろうというのだろう?
「あっ‼玲奈お嬢様...大変言いにくいのですが閉園10分前です...」
「あっという間でしたね...」
そうこうしているうちに閉園時間にさしかかっていたようだ。途中、アクシデントに見舞われたがたくさんのアトラクションを満喫できたのだから悔いはない。
「玲奈様‼また来ましょうね!」
「そうですね。姫香も楽しめたようで何よりです。」
こうして私達の楽しい1日は終わりを告げたのだった。




