88.運命の遊園地
第88話
そして念願の休日、
「わぁー‼広いですね!」
「ここがクリスタルアイスシティーですか...」
私達はクリスタルアイスシティーを訪れていた。この遊園地の広さはそこら辺にある普通の遊園地とは段違いであり、従業員やスタッフも他の遊園地とは比べ物にならないほど大勢いる。アトラクションもメリーゴーランドや汽車などほのぼの系もあれば、ジェットコースターや空中サイクルといった高所でスリルを味わうタイプ、お化け屋敷などの絶叫系など一通り揃っている。
そんなクリスタルアイスシティーの名前の由来はというと...
「凄い...本当にあちこちに宝石が飾ってあるんだ...」
「しかもアトラクションまで宝石で作られてるじゃん‼まるでおとぎ話の世界に入った気分‼」
蛇茨ちゃんと姫由良ちゃんの言う通り、この遊園地のあちこちに小さな宝石が飾られていた。しかもそれだけではない。メリーゴーランドの馬だったり、観覧車のゴンドラだったり、お化け屋敷みたいな建物だったりとこの遊園地のアトラクションは何と全て宝石で作られているのだ。つまりこの遊園地は宝の塊も同然とも言えるのだ。そのため、時には宝石の密漁を狙った悪人が現れる事もあるくらいだ。
もちろん、遊園地側がそんな事態を予想していないわけがなく、ここの宝石を持って遊園地の出口の門を潜ろうとした瞬間、警報が鳴り響き、出口を警備していた警備員が即座に犯人を拘束する。初犯且つ軽量なら厳重注意で済む場合もあるが、場合によっては永久に入園禁止を言い渡される事もあり、しかもその状態で再度罪を犯せばほぼ確実に警察につきだされる運命なのだ。
ん?なら、出口の門を潜らずに別の抜け道を使えば良いんじゃないかって⁉それも甘すぎる‼
クリスタルアイスシティーの全体を強力な電気柵が覆っているし、抜け穴が掘られないよう遊園地の地面は鉄筋のコンクリートでできている。それにましてや電気柵の周辺には客に成り済ました警備員がいるから迂闊に怪しい行動はできない。万が一、電気柵の故障などで脱出を許したとしても遊園地の35ヶ所(特に電気柵の周辺)に防犯カメラがあり、電気柵の外側で張り込んでいる凄腕のSP達に犯人の情報が直ちに送られる仕組みとなっている。さらには空路での脱走を見逃さないように4機のヘリが音も立てずに遊園地の外側を飛び回っているくらいなのだ。そのため必然的に出口を通るしか方法がない。
(ここの宝石を盗めるのは漫画とかに出てくる怪盗ぐらいかもね...)
私がクリスタルアイスシティーの警備の厳重さに感心していると、
「玲奈様‼私、もう待ちきれないです‼遊びに行ってもいいですか?」
奏ちゃんがキラキラした笑顔で私に問いかけてきた。他の皆も口には出さないが気持ちは同じらしく、誰も奏ちゃんの態度を咎めようとはしない。
「分かりました。では、今からお昼になるまで各自の自由行動にしましょう。お昼になったらまたここに戻って来てくださいね。」
『『はーい‼』』
「それと護衛の皆さんもよろしくお願いしますね。」
『『もちろんです‼』』
遊園地という場所では何が起こるか分からないので万が一に備えてグループのメンバー1人にそれぞれ二人以上の護衛がつく事になった。護衛は基本は自分の家の者達だが、家が裕福ではない姫由良ちゃん、蛇茨ちゃん、優里ちゃんには岩倉家の護衛がついている。
「では、自由行動スタートです!」
私がそう言った瞬間、グループの皆は護衛を連れてそれぞれお目当てのアトラクションに向かって走り出したのだった。
次回、ほのぼの遊園地満喫回。
 




