87.久しぶりに皆とお出かけ‼
第87話
テストが終わって数週間後、
「皆さん、ごきげんよう。」
「あっ‼玲奈ちゃん来たよ!」
「玲奈様‼待ってました!」
この時間だといつもなら誰かしら欠けている筈のグループの皆が今日に限って学園の門の前で全員集まっていた。どうやら皆で私が来るのをずっと待っていたようだ。
「皆さん、今日は早いですね...特に姫由良ちゃんがこの時間帯にいるなんて珍しい...」
「ちょっとー‼玲奈ちゃん⁉私だって毎回遅刻するわけじゃないんだよー‼あれはたまたまだから!」
夏休み明けすぐの登校日に寝坊でやらかした事を今でも気にしてるのか姫由良ちゃんはプンプンとした様子で言い返してきた。
「はいはい、よしよし。」
機嫌を直して貰おうと姫由良ちゃんの頭を撫でてあげると姫由良ちゃんは『お子さま扱いしないでよ‼』などと言っているが、私に頭を撫でられる事は満更でもないようで抵抗することなく私に身を任せている。あと言っとくけど、私達ってまだまだ全然お子さまだから...
「ストップ‼ストップです!姫由良ちゃんばかりずるいですよ!というわけで私もです!」
「ちょっ...真里愛ちゃん⁉」
そんな感じで姫由良ちゃんの頭を撫で続けていると真里愛ちゃんが私に抱き着いてきた。姫由良ちゃんの機嫌を直そうと
「抜け駆けは許しません‼私も!」
「沙友里ちゃんも落ち着いて...」
「玲奈ちゃん?この私を嫉妬させるという事は何を意味するか分かりますよね?」
「清芽ちゃん⁉ちょっと怖いです...というか皆さん冷静に~‼」
ついには奏ちゃんと優里ちゃんまで私に抱き着いてきた。このままでは圧で潰されてしまうかもしれない。
「蛇茨ちゃん~‼助けてください‼」
唯一、抱き着いていない蛇茨ちゃんに助けを求めたけど...
「玲奈は自分の好感度を自覚しないからこういうことになるんだよ。それに私が皆を止められるわけないでしょ?」
と言いながら苦笑いしていた。
「そんな~‼」
「......まぁ、私も二人っきりだったら思いっきり抱き着きたいけどね...」
蛇茨ちゃんが続けて何やら呟いていたけど聞き取れる余裕はなく、私は皆にギュウギュウと抱き着かれ続けて危うく失神しそうになったとさ...
5分後、
「今度の休日に皆でですか...」
「はい‼テストで頑張ったご褒美ということで皆でどこかに遊びに行きましょうよ~‼」
皆が言うには今年の夏休みは皆で集まって遊ぶ機会がなかった、だから今度の休日に皆で遊ぼうという事らしい。
「私も勿論大賛成です。ですがどこに行きますか?」
「玲奈様が決めてください‼私達はそれに従いますので!」
「う~ん、どうしましょうか...」
いや、皆さんさぁ...せっかくのグループの皆で遊べる日を提案しといて何して遊ぶか決めるのは私に丸投げかい!
まぁ、それはいいとして私はどこに行くか考え始めた。
(ゲームセンター...ダメダメ‼滓閔の件で色々思い出しちゃう!今はリフレッシュしたいんだから‼...だったら、レストランとかかな...いや、それだと食事だけで終わっちゃうし何か物足りない...)
意外と決めるのは簡単じゃなかった。
(グループの誰かの家でお泊まり...私はいいけど何故か皆が選ばれた子に怒りの目を向けるんだよね...蛇茨ちゃんの時もそうだったし...いっそ私の家に呼ぼうかな?...あっ‼確か今度の休みは岩倉家が経営する会社の1つの重鎮達を招いていろいろやるって父様が言ってたからこれもダメじゃん‼)
私一人の判断で皆と遊ぶ日が楽しくなるか、ならないか決まるのだ。いい加減に決めてはいけない、まさに責任重大だ。
(水族館は1年の時に行っちゃったから新鮮味がないし...いっそ日本を飛び出してイタリアへ‼...って大型連休ならまだしも、僅か1日の日程で海外まで行って遊ぶのは無理か...)
もう、これ以上は思い浮かばない。皆にそう伝えようとした時だった...
『そういえば玲奈ちゃん。近いうちに隣町で新しく遊園地ができるから陽菜ちゃんと行ってみたらどうだい?』
『あっ‼そうなんですか⁉わざわざ教えてくれてありがとうございます!どんな遊園地なんですか?』
『名前は確か...』
夏休み始めに久しぶりに会った嘉孝さんとの何気ない会話を思い出していた。
「では最近、隣町に出来た遊園地...クリスタルアイスシティーに行きませんか?」
「クリスタルアイスシティー...いいですね‼」
「私も行きたいと思ってたんですよ‼」
「噂には聞いてるけど凄いところらしいからね~。」
どうやら皆も大賛成のようだ。
「では、集合時間と予定を決めましょうか?」
「は~い‼」
こうして私達はその日、楽しい休日が待ち遠しくて盛り上がっていたのだった...
...だが、玲奈はまだ知らない。
「お兄様‼今度の休日連れていって欲しいところがあるの‼」
「やれやれ...で、それはどこだい?」
「クリスタルアイスシティー‼」
「仕方ないな...迷子にならないように気をつけるんだよ。」
「うん‼」
その日が普通の休日ではなくなる事を...




