83.玲奈ロス⁉
第83話
短かったようで長かった夏休みが終わり、私は新学期最初の朝を迎えた。
「レイナオキロ!レイナオキロ!」
「フィクサー...言われなくても起きてますよ。」
夏休み終盤辺りになった頃からだろうか。フィクサーが目覚まし時計の代わりのように私を毎朝起こしに来てくれるようになった。
その光景を見た姫香が『私の仕事を奪うな‼』みたいな事を言っていたのだが、普通なら私を起こすという仕事をせずに済んで感謝すべきではないのだろうか?姫香が怒る理由が全くと言っていいほど分からない。
(まぁ、そもそも私は寝坊なんかしないし...)
そんな事を考えながら私はさっさと朝食を済ませると両親に見送られながら送迎車に乗り込み、学園へと向かうのだった。
・・・・・
「玲奈ちゃん、おはようございます!」
「ごきげんよう、沙友里ちゃん。元気にしてましたか?」
「もちろんです!」
学園の門をくぐってすぐに沙友里ちゃんと出会った。実を言うと今年の夏休みは中山家の件だったり、滓閔の件だったりと色々な問題事があってグループの皆と遊ぶ機会が全くなかった。その為皆と会うのは約1ヶ月ぶりとなる。
「それはそうと玲奈ちゃ~ん?」
「沙友里ちゃん?どうし...キャッ!ちょっと‼」
私が言い終わる前に沙友里ちゃんがいきなり抱き着いてきた。しかもクンクンと私の臭いまで嗅いでいるみたいだ。
「1ヶ月も玲奈ちゃんと会えなくて寂しかったんです~‼なので玲奈ちゃん‼私に癒しを!」
「沙友里ちゃん落ち着いて!」
私は何とか沙友里ちゃんを払いのけようとしたが、やはり相手が沙友里ちゃんということもあり、『怪我をさせたらどうしよう⁉』なんて気持ちが勝って体に力が入らない。
「あっ‼玲奈様と沙友里⁉」
「玲奈ちゃん、お久しぶりです。」
「あっ‼奏ちゃん‼清芽ちゃん‼助けてくださーい!」
奏ちゃんと清芽ちゃんが門をくぐって来たのが見えた。これで私は助かるだろうと安心していた。
...が、
「玲奈様~‼会いたかったです!」
「玲奈ちゃんのこの体の感触をやっと味わえる...」
「えぇ~‼二人もですか⁉」
二人とも沙友里ちゃんと同じように私に抱き着いてきた。清芽ちゃんは抱き着きながら私の右手をギュッと握ってるし、奏ちゃんに至っては私の長い髪の毛を指先でなぞりながら小声で『カワイイ...』とか言っちゃってるし、もはやどうしていいか分からない。
「玲奈ちゃ~ん‼やっと会えましたね!」
「あっ‼玲奈だ!久しぶり!」
気づけば真里愛ちゃんと蛇茨ちゃんまでもが私の元へ駆け寄ってきた。
「玲奈ちゃん~‼大好きで~す‼」
「真里愛ちゃん落ち着いて...」
真里愛ちゃんは私の元へ到着するや否や、がら空きだった私の背中に抱き着いてきた。
「玲奈、やっと会えたね‼」
「蛇茨ちゃん...」
一方の蛇茨ちゃんは割と理性を保てるタイプなのか、他の皆ほどのスキンシップはせずに私の左手を両手で優しく握る感じだった。そもそも蛇茨ちゃんはツンデレな女の子なのだからこれは納得...
「玲奈⁉今、私がツンデレとか思ったんだろうけど断じて違うから!あっ...抱き着ける場所が空いてなかっただけなんだからね‼」
「ふふっ‼分かってますよ~!」
「その顔、絶対分かってないでしょ!」
やはり蛇茨ちゃんは蛇茨ちゃんだと自分に言い聞かせながら私はこの状況について聞いてみた。
「あのね...皆、玲奈に久しぶりに会えて喜んでいるからに決まってるでしょ...そんな事も分からないの⁉」
「えっ⁉だとしても私に抱き着く事になんのメリットが...」
「はぁ...もう少し自分の好感度を自覚しなよ...」
確かに私達は原作以上に仲良くなれたのは分かるけどここまで過剰なスキンシップをするほどなのかな?
「あっ、玲奈ちゃん...」
(そうだ!優里ちゃんなら...)
すると今度は優里ちゃんが私の元へ駆け寄ってきた。私の事が好きながらも大人しく、心優しい優里ちゃんなら理性を保って私を助けてくれるに違いない。
「あのっ‼優里ちゃん!助け...えっ⁉」
助けを求めようと私が見た優里ちゃんの顔は今、抱き着いているメンバーと同じく、ニヤァとした笑みを浮かべている。まるで獲物を見つけた捕食者のように...
結局、それから私は数十分ほどの間、グループの皆から過剰なスキンシップを受け続ける羽目になったのだった。
ちなみに余談だけどグループの中で唯一、この場にいなかった姫由良ちゃんは夏休み慣れし過ぎて寝坊してしまい、危うく遅刻ギリギリで登校したんだとか...
朝の過剰なスキンシップの事を姫由良ちゃんに話したら、姫由良ちゃんは『自分だけ仲間外れ...』となぜか結構落ち込んでいて蛇茨ちゃんや優里ちゃんが必死に慰めていた。
2年生中盤がスタート!
 




