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ミラピュア~破滅回避への物語  作者: たかくん
初等部2年生編
82/315

80.滓閔の退院

更新が遅れましたが今回は少し長いのでご容赦下さい笑


第80話



「玲奈お嬢様、病院に到着しましたよ。」


「分かりました。では、さっそく滓閔ちゃんのいる病室へ向かいましょう。」


8月下旬、もうすぐ夏休みも終わるというある日の事...私は姫香と共にとある病院を訪れていた。


その理由はというと...


「それにしても、有明さんの意識が戻って...しかも順調に回復しているようで良かったですね。」


「本当にです...滓閔ちゃんの容体が悪化して万が一の事があったら陽菜が悲しみますからね。」


つい最近になって、これまで意識不明のまま入院していた滓閔が目を覚ましたらしく、そのお見舞いに行こうという話になったからである。


本来であれば莱們ちゃんや陽菜も連れて行こうと思ったのだが二人ともそれぞれ、派閥の人間との交流会と夏風邪という理由があって今回は不在だ。



特に陽菜なんかは『私も行きたーい‼』と駄々をこねていたが流石にこんな体調で外に出たら、風邪が悪化してしまう可能性もあるので残念ながら今回はお留守番だ。


(二人も、特に陽菜は行きたがってたのにな...ちょっと可愛そうな事をしたかもね...)


二人を連れてこれなかったことを少々残念に思いながら病院内を進んで行くと滓閔の病室に到着した。


「玲奈お嬢様、ここです。」


「では入りましょうか。」


そうして私が滓閔の病室の扉を開くと、


「あっ、玲奈様...」


滓閔が私達を見るなりどこか気まずそうに目を背けた。


「お見舞いに来たのですが体調は大丈夫そうですね。」


「はい...滓閔なんかの為にわざわざありがとうございます...」


そうお礼を言う滓閔だが、やはり何やら様子がおかしい。体調は治ってる筈なのに何があったのだろう?


「滓閔ちゃん、何かあったのですか?」


「えっ⁉」


「どこか私を恐れてるような雰囲気を出してるので...」


「あぁ...玲奈様の目はほんとに誤魔化せませんね。とても信じられないような話ですが聞いてください...」



そう言うと滓閔は観念したかのように入院中、自身に起こった出来事を話し始めた。






・・・・・


「つまり滓閔ちゃんの中に()()()()()()()()()()()()がするという事ですか?」


「はい...」


滓閔の話を要約すると、どうやら意識を失っている間にもう一人の自分と対面する夢?みたいな物を見ていたらしく、その自分が私を嫌うように滓閔本体を脅迫し、それが受け入れられないと知るや滓閔本体に襲いかかり強引に自分が本体に成り代わろうとしたんだという。


だが、襲われた滓閔本体がもう一人の滓閔に対して強く抵抗していた途中で意識を取り戻し、自分が入院していた事に気づいたのだった。


「怖かったんですね...」


「はい、もう一人の私は言葉遣いは穏やかなのにやろうとしてる事が恐ろしすぎて...」


まさかミラピュアの修正力がこんな形で滓閔を苦しめていたとは...これでも滓閔はまだ7歳なのだ。怖くない訳がない。


「他の皆が聞いたらツチノコを発見したレベルで信じて貰えなさそうなんですが...玲奈様なら信じてくれると思って...」


相変わらずの変な発言が気になるが、まぁ...もう一人の自分が本体に成り代わろうとしていたなんて話を聞いても相手にしてもらえないだろう...ただ、私はそれよりも気になっている事が1つだけある。


「何で貴女は私をそこまで信頼してくれるのかしら?」


莱們ちゃんや陽菜を通じて交流が始まったとはいえ、私は滓閔に尊敬されるような事をした覚えはない。一緒に遊びに行くのもこのまえのゲームセンターが初めてなのだ。


「それはですね、三条様...いや、三条さんから事前に玲奈様の噂をお聞きしたのもありますが、玲奈様を慕うようになった一番の理由は陽菜さんのおかげだったりするんです‼」


「陽菜がですか?」


確かに滓閔が陽菜と仲が良いのは知ってはいるがそれだけで私をここまで慕うだろうか?私が疑問に思っていると次に滓閔の口から出た言葉は衝撃的なものだった。


「私...玲奈様と陽菜さんが百パーの本当の姉妹じゃないの知ってるんです...」


「なっ‼」


(はあぁぁぁぁ⁉いやいや!何で貴女が知ってるのよ⁉)


私や莱們ちゃんはもちろん言ってないだろうからまさか二条家の人間が⁉...いや、でも兼光がそんな奴許す訳がない筈だし...


「一体誰に聞いたんですか?」


「その...陽菜さん本人が打ち明けてくれました...陽菜さんの生い立ちや玲奈様と陽菜さんの出会いまで全て私に話してくれたんです!」


「えっ!?陽菜本人がですか⁉」


『あり得ない‼』と私は思わず大声を出しそうになったが、ここが病院だった事を思い出すと慌てて出そうになった言葉を飲み込んだ。陽菜は今まで自分の過去は思い出したくない程酷いものだったためか、決して自分の口から語ろうとはしない子だった筈だ...


実際に最近では萌留ちゃん以外にも友達が増えたそうだが自分の過去を話した子は皆無なのだ。なのに...


「陽菜さんは私なら理解してくれるかもしれないと思って話してくれたそうなんです!さっきの私と同じように...」


「滓閔ちゃん...」


「それで私は改めて玲奈お姉様を尊敬しました!私とほぼ変わらない...いや、下手すれば私より悲惨な生活を送っていた陽菜さんをここまで導いたんですから!」


陽菜がここまで信頼しているのだ。今まで私はゲームのヒロインのお助けキャラという理由だけで内心、滓閔を警戒していたがとんだ先入観だったかもしれない。


私の中で滓閔へのイメージが少しだけ変わっていた。


「...退院したらこれからも陽菜と仲良くしてあげて下さいね。貴女はあの子の信頼を得たのですから...」


「もちろんです!陽菜さんとこれからも仲良くなりたいし、秘密は絶対に守りますので‼」



こうして、玲奈にとってはただのお見舞いだった筈が、終わってみればとんでもない一日となったのだった。



余談だけど、滓閔は理性でもう一つの人格を抑える事はできたらしいが、完全に消し去るのは無理だったらしい...つまり、しばらく時間が経てば今までの言動に戻りそうだ。





・・・・・


数日後、


滓閔から無事に退院できたとの連絡があった。


それを知った陽菜は、


『やったー‼また滓閔ちゃんと遊べるー‼」


と大はしゃぎだった。



そんな陽菜を私は微笑ましく見守っていたのだった。




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