77.莱們の気持ち①
第77話
「莱們ちゃんは私の事どう思ってますか?」
「えっ⁉玲奈お姉様?いきなりどうしたんですか⁉」
三条家を訪ねて開幕一番でこの質問である。莱們が困惑するのも無理はない。
「いいから答えなさい!私の事が嫌いとか、誰かに避けるように言われてるんだったら正直に話してほしいの‼」
「玲奈お姉様...」
三条家の中に私と莱們ちゃん、耀心くん姉弟の仲を引き裂いた者がいるかもしれないと考えた私は次の日、さっそく三条家を訪ねていた。正直、いてもたってもいられなかったんだと思う。
(これで莱們ちゃんが実は私が嫌いとかだったらどうしよう...)
そんな事を思って莱們ちゃんからの返答を待っていると、
「玲奈お姉様、私と初めて会った時の事を覚えてます?」
「貴女と初めて会った時の?」
前世を思い出して莱們ちゃんと初めて会ったのは思い出して間もない頃だったが、それ以前の事はあまり覚えていない。私にとって前世を思い出す前の生活は黒歴史も同然だったから知らないうちに記憶を葬ってしまったのかもしれない。
「忘れてしまったんですか?仕方ないですね~、最後まで聞いて下さいね‼」
そう言うと莱們ちゃんは得意気に昔の事を話し始めた。
・・・・・
3年前、
「耀心‼アンタは泣き虫で弱虫で何もできないくせに何様のつもりなの!気安く私を姉と呼ばないでくれる⁉」
「ううっ...ごめんなさい...」
「分かったならさっさとお馬さんごっこの馬になりなさいよ!」
「はい...」
三条莱們は双子の弟である耀心をいじめるのが日課になっていた。理由は対した事じゃない。
(あぁ‼本当にムカつく!何で私はこんなに勉強や習い事をやらないといけないの⁉)
莱們は三条家のご令嬢としてそれ相応の教育を受けさせられたのだが、当時は勉強も習い事も同年代の子と比べると中途半端な出来でいつも怒られてばっかりな日々だった。そのストレスを弟をいじめる事で発散するという今思えば最低な事をしていた。
当時の耀心が莱們以上に要領が悪かったのもいじめを助長し、莱們は耀心をいじめる時だけはお山の大将でいる気分だった。
あの日までは...
「貴女、自分が無能だからと弟にあたるなんて最低ですわね!」
「何よ‼アンタには関係ないでしょ⁉」
莱們がいつものように耀心をいじめていると、見覚えのない女の子がやって来て莱們を罵った。公爵令嬢の自分に上から目線とはいったい何様のつもりだろうか?
「公爵家の娘の私に向かって...」
「ふん‼私も公爵家の娘だもん!」
(そういえば、今日は確かどこかの公爵家との交流会ってパパが言ってたっけ...)
恐らくこの子はその公爵家のご令嬢なんだろう。パパは莱們とこの子を友達にでもしたかったのだろうか?見ての通り、相性が最悪すぎる。
「アンタだって人の事言えないでしょ?どうせ使用人を物としてしか見てないくせに‼」
「はぁ?私に向かってその口の聞き方は何ですの?生意気ね‼」
この子は自分とさほど変わらない公爵令嬢のくせに自分の事を棚にあげて莱們を見下してくるのだ。その態度が心底ムカついた。
「うるさーい‼どっか行けー‼」
「やったわね!この小娘‼」
気づけば莱們はその子と取っ組み合いをはじめ、両家の使用人が止めに入るまで大喧嘩を続けたのだった。
莱們の昔話は次回に続きます。
 




