74.悪趣味もほどほどに...
更新が遅れてすみません。次回から頻度を元に戻します。
第74話
あっという間に7月になったけど私は憂鬱な気持ちだった。あれからいまだに滓閔の意識は戻らないままだし、まさかの私以外の転生者とやらの手がかりも掴めないままだ。
(はぁ...)
私がため息をつきながらとある空き教室に入ろうとした時、教室の中から誰かの声が聞こえてきた。
「うふふ~‼玲奈ちゃん~‼私の可愛い玲奈ちゃぁ~ん!」
(えっ⁉沙友里ちゃん⁉何してるの...)
私が教室を覗くとそこには独り言を言いながら何かの写真を見つめる沙友里ちゃんの姿があった。...だがそこにいた沙友里ちゃんはいつもとは違い、まるで何かが乗り移っているかのような狂気染みた表情をしていた。
「そこにいるのは分かってるんですよ、玲奈ちゃん?出てきてくださいよ。」
「ヒッ‼」
いつから気づかれていたのだろう?沙友里ちゃんは私の方を向くと先程とは違う妖艶な笑みを浮かべて私を手招きしてきた。
「そんなに怯えなくても...こっちに来てくださいよ‼」
「はい...」
逆らう気力がなかった私は怯えながら沙友里ちゃんの元へ足を進めた。
「これこれ!可愛くないですか⁉」
沙友里ちゃんはニコニコしながら私に写真を見せてきた。
そこに映っていたのは...
「これは...私⁉」
何とそこには岩倉邸で陽菜と遊ぶ私が映っていたのだ。それも一枚だけではない。何と沙友里ちゃんが見ていた写真全てに私が映り込んでいたのだ。
(嘘でしょ⁉こんな写真撮られた覚えないんだけど...)
岩倉邸や学園での日常はもちろん、中には休日の私の写真まである。まるでどこかから盗撮されていたようなものだ。
「私~、玲奈ちゃんの事大好きなんです!ですから普段の玲奈ちゃんに素の玲奈ちゃん‼全てを愛したいんです~‼」
「あの~、沙友里ちゃん?」
沙友里ちゃんの言ってる事がよく分からない。私の事が友達として好きなのは分かるけど...って‼これって友情が重いタイプの子的なヤツ?
「やっぱり元は同じでも私と玲奈ちゃんでは全然違います‼玲奈ちゃん大好きです!」
「ちょっと‼沙友里ちゃん⁉」
そう言っていきなり抱き着いてきた沙友里ちゃんに私はただ唖然とするしかなかった。
...いや、払いのけることもできなくはなかったが私はなぜかそうしなかった。
(何か悪い気はしないかも?)
どうやら私自身も沙友里ちゃんの悪い趣味をどこかで受け入れてるみたいだった。
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