65.改めて深まる絆って知ってます?
第65話
「あの~真里愛ちゃん?」
「はい!どうしましたか?」
「いつまで私を抱き締めてるんですか?」
「えへへ~‼」
私は今、真里愛ちゃんにベットに押し倒されそのまま抱き着かれている状況だ。
(真里愛ちゃん...いつからこんな子になっちゃったの⁉)
なぜこんな状況になってしまったのか。
時はおよそ1時間前に遡る...
「玲奈お嬢様、富小路様が参られました。」
「分かったわ。姫香、真里愛ちゃんを部屋に入れてちょうだい。」
この日、私は真里愛ちゃんと家で遊ぶ約束をしていた。ついでに真里愛ちゃんが私に聞きたい事があるらしい。私には心当たりはないけど一体何だろうか?
「玲奈ちゃ~ん‼遊びに来ましたよ!」
「ようこそ、真里愛ちゃん。」
いろいろ考えてるうちに姫香に連れられて真里愛ちゃんが私の部屋に入ってきた。
「久しぶりの玲奈ちゃんの部屋だ~‼」
「じゃあ遊びましょうか‼」
「はい!」
・・・・・
それからしばらく、私と真里愛ちゃんは一緒にテレビを見たり、ゲームをしたり、漫画を読んだりと二人だけの時間を満喫していた。...だが、
「あの...玲奈ちゃん...」
「真里愛ちゃんどうしましたか?」
さっきまで私と楽しそうにテレビを見ていた真里愛ちゃんが急に真剣な顔になり、低いトーンの声で話し始めた。それを見た私も背筋が震えていた。
「ずっと前から気になってたんです...玲奈ちゃんは何で私や沙友里を友達として迎え入れてくれたのですか?」
「えっ⁉」
私は返答に困った。この世界はミラピュアというゲームの世界で貴女達はゲームの玲奈お嬢様の取り巻きだから声をかけたなど言える筈がない。そんな事を言っても真里愛ちゃんは理解できないだろうし、万が一理解できたとしてもガッカリされてしまうだけだ。
「私の実家は半家ですし、私自身も雛恵から空気令嬢と言われるほどの影が薄い普通の令嬢に過ぎなかったんですよ...」
「真里愛ちゃん...」
確かにその通りである事には間違いない。
...だけど‼
「私たまに思うんです。本当に私なんかが玲奈ちゃんのお友達として相応しいのかと...私が玲奈ちゃんと仲が良い事を知った両親からは玲奈ちゃんに上手く取り入れだの、利用しろだの口酸っぱく言われる日々...玲奈ちゃんも本当は私なんか必要としてないんじゃ...」
「そこまでです!富小路真里愛‼それ以上の発言は許しません‼」
奏ちゃんの時と同じように自分で自分を卑下する発言だけはしないでほしい。
「玲奈ちゃんは良いですよ‼生まれは公爵家の令嬢で勉強もスポーツも完璧、ましてや下位の人間にも優しさを与える...まさに貴族界の模範令嬢と言われるほどの方なんですから!私なんかとは正反対なんですよ!それなのに私の気持ちが分かるわけないじゃないですか‼」
いつの間にか真里愛ちゃんは声を荒らげて胸の内を叫んでいた。息もハァハァしていて苦しそうにしている。私はこんな真里愛ちゃんを見るのは初めてだ。恐らく今まで溜め込んできた様々な感情が爆発してしまったんだろう。
(ヤバイ...私のせいじゃん‼これって下手したら『岩倉玲奈は取り巻きの気持ちが分からない。なぜなら道具としてしか見てないから。』なんて噂が流れちゃうじゃん‼そうしたら破滅フラグの要因に...いやだ!何とかしなきゃ‼)
どうすれば...ん?これならいけるか⁉
「真里愛ちゃん...実は私は幼い頃、重い病気にかかって入院生活を送っていた時期があったんです。」
「えっ⁉」
私からの予想外の発言に今度は真里愛ちゃんが驚く番だった。
「入院生活は過酷でした。娯楽も食事も制限され、家族ともなかなか会えませんでした。何より治療の際の副作用で何度も苦しみを味わいました。どんな辛い日常だったか...死にたいって何度思ったことか...」
「.........」
「ですが...病院の人や家族、そして友人の支えがあって乗り越える事ができました。その時私は思ったんです...今度は私が辛い思いをしている人を助けてあげたいと。」
「玲奈ちゃん...‼」
この話、半分本当で半分嘘だ。今話していることは前世の私の体験談であって、岩倉玲奈の体験談ではない。
「だから...‼自分で自分を責めるような事はしないで下さい!真里愛ちゃん‼」
これで上手く乗り切ったか?と思って真里愛ちゃんの方をみると彼女は目から溢れる涙を必死に堪えようとしていた。もしかして言い過ぎちゃったのだろうか⁉なら早く謝らないと!
「すみません...ちょっと言い過ぎて...」
「うわぁぁぁ~ん‼玲奈ちゃぁぁぁ~ん‼そこまで私の事を‼エモい!激エモですぅ~‼」
「ちょっ...キャッ‼」
私の言葉を遮って真里愛ちゃんが私をベットに押し倒した。そして私にぎゅっと抱き着いた。私は一瞬戸惑ったが真里愛ちゃんの気持ちを理解して彼女を抱き返した。
真里愛ちゃんはそのまま暫く泣き続けていた。
......その後、ようやく泣き止んで今に至るという事だ。
「玲奈ちゃん大好きですよ~‼」
「あっ...ありがとうございます?っていうかそろそろ離れてください‼」
「良いじゃないですか~‼」
「うぅっ...」
私は抗議こそしたが真里愛ちゃんと改めて仲良くなれたし、このまま彼女に抱き着かれ続けるのも悪くないと思っていた...
「富小路様、そろそろお帰りの時間で...って‼私の玲奈お嬢様にいったい何してるんですか⁉早く離れなさい‼」
「えぇっ‼絶対いやあぁぁ‼」
「このっ‼離れなさーい!」
「ちょっと‼姫香も真里愛ちゃんも落ち着いて下さい!」
そんな時に限っていろいろと二次災害が起こるのは何でだろうね...
 




