61.脅迫⁉
第61話
「それで?陽菜に何があったのですか⁉」
莱們ちゃんに連れられ、人気のない場所に来て開口一番に私は質問する。
「実はですね...」
そう言って莱們ちゃんは話し始めた。
話によると、陽菜は表向きは私の妹ということもあって同級生から恐れられているのか、距離を置かれているそうだ。
「中には声をかけてくる者も数人いましたが、あの者達は陽菜の取り巻きになって好き放題したいという下心が見え見えだったので私が追い払っておきました‼まともに...本当に陽菜と仲良くなりたいという気持ちで声をかけてくれたのは萌留だけでした...」
「そうでしたか...」
まぁ、そりゃ普通、公爵令嬢の妹に気安く話しかけろと言われても難しいのは分かっていたのでそこまで衝撃的というわけではないが...
「それと...私の机の引き出しの中にこのような手紙が入ってたんです...」
「手紙?もしかしてラブレターなの⁉莱們ちゃんおめでとう‼」
「ちょっ‼声が大きいです!...というか違いますよ‼陽菜に関する事なんです!とにかく読んでみて下さい!」
そう言って莱們ちゃんに手渡された手紙を読んだ私は絶句した。
そこには、
『今年中に三条家が経営している企業や会社の機密情報のデータをここに書いてあるアドレスに送信せよ。さもなければお前の大切な友人、岩倉陽菜の素性を学園中にばらす。なお、この手紙の存在は決して他言してはならない。』
と書かれていたのだ!
(いったい誰がこんな事を?)
陽菜の素性を知っている人間は非常に限られている。最初に陽菜を拾った嘉孝さんと岩倉家、三条家の人間、そして、兼光とその家族だけ...いや、二条家の前例を見るに他の公爵家の人間も知っている可能性はゼロではないか...
「れっ...玲奈お姉様...私どうすれば良いでしょうか...」
「莱們ちゃん...」
莱們ちゃんはしょんぼりしていた。よく見ると涙を必死でこらえているようで今にも泣き出してしまいそうだ。
「大丈夫ですよ。この件は私に任せて下さい!私が莱們ちゃんを守りますからね!」
「ぐすっ...うわぁぁ~ん‼玲奈おねえさまあぁぁぁっ‼」
とうとう泣き出してしまった莱們ちゃんを優しくそっと抱き締める。陽菜の前では頼れるもう一人のお姉ちゃんを演じていたけど彼女もまだ6歳の女の子に過ぎないのだ。こんな脅迫文を送られて怖かっただろう。
「よしよし、あんまり無理しちゃダメですよ。」
「うわぁぁ~ん‼ありがとうございますうぅぅっ‼」
陽菜のみならず、莱們ちゃんにまで危害を加えようだなんて‼私は絶対に犯人を許さないんだから!
・・・・・
その日の放課後...
「玲奈様‼今日から陽菜と莱們が三聖徳会に加入するんですよね!」
「えぇ、楽しみですね‼」
私は清芽ちゃんと奏ちゃんと一緒に三聖室にいた。今頃、別の部屋では私達の時と同じように陽菜や莱們ちゃんが三聖徳会の説明を受けてるころだろう。
「私達はまだしも、あの子達が烏丸様の説明を理解できるでしょうか?」
「まさか‼奈乃波さんはそこまでバカじゃありませんよ!」
また、余談だが新入生に説明を担当するのは去年と同じく奈乃波さんだったりする。なぜだか清芽ちゃんや奏ちゃんからの評価は散々だが奈乃波さんは意外にもこういう説明などは得意らしい。どうりで玉里前会長も奈乃破さんを事実上、秘書的なポジションに加えたわけだ。
「ちょっと⁉ここは貴女みたいな子が入れるような場所じゃないんだけど⁉」
「......⁉」
「何の騒ぎでしょうか?」
突然、三聖室の入口の方から怒鳴り声が聞こえたので声がした方を見てみると三聖徳会メンバーの上級生女子が一人の女の子を怒鳴りつけていた。怒鳴られている女の子は身長の小ささからして恐らく新入生だろう。それにしても上位貴族だらけの三聖室に入るだなんてよっぽどの怖いもの知らずだな...
...ってあれっ?この子どっかで見た事あるような...
「ひ~‼ごめんなさい~ごめんなさい~‼ついやらかしちゃっただけなんですよ~‼決してわざとじゃないんです~‼」
「わざとじゃないですって⁉三聖室の事は聞かされたはずでしょ⁉」
「うぅっ...かっすーの一生の不覚です~...」
(おいおい‼よりによってアイツかよ!いや、ゲームでも結構やらかしてたから当然なのか⁉)
彼女の一人称を聞いた瞬間、私は全て悟った。
かっすーこと、有明滓閔。なぜならゲームでのこの子はとある重要なポジションなのだから...
重要キャラ登場です!
 




