60.新入生の様子は⁉
第60話
(えっと...ここが陽菜がいる教室だっけ?)
昼休みになり、私は1年2組の教室の前に来ていた。2組には陽菜と莱們ちゃん、そして耀心君...と私と関わりのある子達が編入されたクラスだ。
私がここに来た理由は、陽菜から昼休みに絶対来てね!っと何度も頼まれたからだ。
「あっ‼玲奈お姉ちゃん!」
「陽菜~‼」
教室にいた陽菜が私に気づいたらしく、教室の扉の前にいる私に向かって駆け寄って来た。
「学園はどうですか?」
「え~っとね‼莱們ちゃんや耀心くんと一緒になれてうれしい‼あとね~‼新しいお友達もできたんだよ~‼」
「良かったですね‼」
岩倉家の娘だから...もしくは、地下家の癖に公爵家に養女なった娘等の理由で陽菜に友達ができなかったらどうしよう...なんて心配していたがどうやら杞憂だったようだ。
「ねぇ、陽菜ちゃん‼このお姉ちゃんだぁれ?」
私と陽菜の元に一人の女の子が駆け寄って来た。恐らくこの子が陽菜が言っていた新しいお友達なんだろう。
「私の自慢のお姉ちゃんだよ‼」
「わ~‼陽菜ちゃんのお姉ちゃんなんだ~‼」
二人は今日が初対面とは思えないくらいとても仲睦まじく見える。喋り方も似てるし、どこか波長が合うのだろうか?
「陽菜ちゃんのお姉ちゃん、はじめまして!清水萌留です!萌ちゃんって呼んでね‼」
「岩倉玲奈です。よろしくね、萌ちゃん。」
名前の通り、どこか萌え萌えして可愛らしい子だ。清水家は藤原氏出身の地下家で古くから掃部寮の職についていた。掃部寮とは宮中行事の設営や殿中の清掃を行っていた役職であり、地下家としての位階は従五位上である。
「玲奈お姉様!ごきげんよう‼」
「玲奈様、ごきげんよう。」
二人と話していると莱們ちゃんと耀心君も私の元に駆け寄って来た。
「ヘ~‼莱們ちゃんや耀心くんも玲奈お姉ちゃんと仲良いんだね~‼」
「当たり前でしょ萌留‼私が世界で...いや、この世でただ一人お姉様と呼ぶお方なんだから!」
「あの...莱們ちゃん?」
莱們ちゃんよ...ちょっと大げさ過ぎやしないか?莱們ちゃんから見て私はただの年上のお姉ちゃんぐらいな存在でしかないんだけどね...
「玲奈様、うちの姉がすみません...」
「いや、耀心君が気にする事じゃないですよ‼莱們ちゃんがうちの陽菜と引き続き仲良くしてくれて嬉しいのですから!」
「なら良かったです。今まで姉と比べて陽菜さんと話す事は少なかったので、これを機会にもっと仲良くなれたらと思っています。」
戸惑う私に耀心君が謝ってきた。あの莱們ちゃん相手だから耀心君もいつも苦労してるみたいだ。
(それにしても耀心君、面倒見も良くてめっちゃいい子~‼)
どこかの御曹司にもぜひとも彼を見習ってもらいたいぐらいだ。
「玲奈お姉様...その、陽菜の件でちょっと相談があるのですが...」
「陽菜がどうかしましたか?」
私が耀心君を褒めてると莱們ちゃんがいきなり、私に耳打ちしながら小さい声で話しかけてきた。
「陽菜本人の前だと話しづらいんです...二人になれる場所に移動しましょう。」
「えっ⁉えぇ...」
そう言うと莱們ちゃんは私の手を引っ張って教室から離れはじめた。
「あれっ⁉莱們ちゃんと玲奈お姉ちゃんどこ行くの?」
「ちょっと二人で化粧室に行くだけよ。すぐ戻るから‼」
「じゃあ待ってるね‼」
途中、陽菜に声をかけられたが莱們ちゃんは咄嗟に作り笑顔をして誤魔化していた。
・・・・・
移動しながら莱們ちゃんの顔を見ると、かなり深刻そうな表情をしている。あの莱們ちゃんが焦る程の事だ。一体何があったのだろうか?
(陽菜に何があったの⁉まさか、奥田家の絡み⁉)
莱們ちゃんに手を引っ張られながら一緒に移動している私の心の中は不安でいっぱいだった。




