4.社交界デビューに向けて
ついに一人目の攻略対象が判明します。
第4話
そんな感じで私が前世での記憶を思い出してから、あっという間に1年の月日が流れていった...
その間にも私は両親に頼んで家庭教師を何人もつけてもらい、勉学に励みに励んでいた。
何せ、ミラピュアの玲奈お嬢様は頭は悪い癖にプライドだけはやけに高いとかいう...いかにも嫌われそうな典型的な悪役令嬢の要素を持っていたので、このまま勉強ができない状態だと流石ににまずいのでは?と私は感じていたのだ....
また、勉学を学ぶと同時に護身術や作法なども学び始めていた。
それは少しでもゲームの玲奈お嬢様のダメな所を消しておきたいと思ったからだ。そんな日々を続けていく中で、姫香とは今まで以上にに話す機会が増えていった。
最近では主に私が姫香の通っている学校や家の事を質問し、姫香が答えるというのが定番だ。ちなみに姫香は今年で16歳である。メイドと学業の両立はかなり大変だろうに私の前ではそんな様子は全くみせない。
なので、一度...私が気を遣って休暇を与えてあげようとしたら...
「いいえ、私が休むなどとんでもありませんよ‼玲奈様との時間が減ってしまうではありませんか‼そうなれば、玲奈様を私のものに...いいえ、守れなくなってしまいます!」
なんだか思いっきり断られてしまった。途中で姫香が何か変な事を言った気がするのだが...まぁ、私の気のせいだろう...
「でも...」
「あっ!玲奈お嬢様!もう少しで家庭教師の先生が来る時間です!急ぎましょう‼」
「えっ?あっ、はい...」
微かに違和感を抱きながらも私は家庭教師のもとへ急いだのだった。
・・・・・
(いよいよだ...明日は...)
明日、私には最初のイベントが待ち受けている。
それは社交界デビューの場となる二条公爵家主催のパーティーだ。そこでヒロインの一人目の攻略対象である二条兼光と出会うのだ。
同じ公爵家でも、元は羽林家だった岩倉家と五摂家 の一つであり公家の頂点に立っていた二条家では格が違う。だがゲームの玲奈お嬢様は頭が悪かったためにその事を全く理解できておらず、公爵家の自分こそ兼光の婚約者にふさわしいと言い張って無理を言って半ば強引にその座を射止めたのだ。
兼光は表の顔は優しく、とても紳士的な人物のため玲奈お嬢様が惹かれたのも無理はないだろう。だが彼には裏の顔があった。彼はかつて結婚を約束した幼馴染みの令嬢がいたのだがその子は事故で亡くなってしまった。
それから半年が経った今でも彼女の事を忘れられず自分の妻は彼女だけだと決めていた。そのため自分に寄ってくる他の女の事は表向きは気さくに接しながらも、心の中では虫けらのような存在として見下していたのだ。当然、婚約者となった玲奈お嬢様の事も忌まわしい害虫としか認識していなかった。
だが、ヒロインとの出会いで兼光の運命は大きく変わる事となる。ミラピュアでの兼光とヒロインが出会いは学園の授業が終わりいつものように兼光が家に帰ろうとしたところ、玲奈お嬢様にいじめられて母から貰ったハンカチを隠されてしまい、それを必死で探してるヒロインを目撃した事から始まる。
その姿に兼光は今は亡き幼馴染みの面影を感じた。幼馴染みも誕生日パーテイーで貰ったリボンをなくしてしまいそれを必死で探してる所を兼光と出会い一緒に探すことにしたのだ。最終的にリボンは幼馴染みの部屋で見つかり骨折り損に終わったがこれを機に兼光は幼馴染みと親交を深めたのだ。
その事を思い出した兼光はヒロインの事を無視できなくなりハンカチ探しに協力する。そこからヒロインと兼光はお互いに親交を深めて、そこから恋愛関係に発展するまで時間はかからなかった。
最初こそ兼光は亡き幼馴染みに憚って結婚には躊躇しており、学園卒業後は別れようと考えていたがある日、夢枕に幼馴染みが現れ今の彼女の事を大事にして欲しいと言ってくれたのだ。その結果、兼光は決意した。ヒロインの事は絶対守ると、君にできなかった分、ヒロインを愛すると...
そして学園を卒業してまもなくヒロインに求婚した。ヒロインは家格が圧倒的に違う事に不安を覚えたが兼光がそれでも構わない、家を捨てる事になっても君は捨てないと言うとヒロインは涙ながらに兼光に抱きつき兼光もまた抱き返す。こうして二人は永遠の愛を誓いあうのだった...というのが兼光ルートだ。
その一方で、兼光ルートの玲奈お嬢様は終盤で実家の不正を糾弾されそれが原因で婚約は破棄。岩倉公爵家自体も爵位は剥奪され平民に降格となり、学園も強制的に退学させられるという運命をたどったのだ。
その後の玲奈お嬢様は、遠い田舎の地で家族と共にこれまで自分が見下していた極貧生活をする羽目になる。親から勘当されず、命を奪われなかっただけ、他のルートに比べれば遥かにマシであるがそれでも本人にとっては屈辱だっただろう。
(まぁ、でも私は兼光と婚約するつもりはないし大丈夫だよね?)
私が兼光と婚約したいなどと言わなければフラグは簡単に回避できるだろう。
攻略対象達と関わる事なく平穏に暮らす...そして、長生きをする。それが今の私の目標なのだから...
こうして社交界デビュー前日の夜はあっという間に過ぎていったのだった。
次回はいよいよ社交界デビューです!