48.そのぬいぐるみは誰の手に...
第48話
ある日の事だ...
「こればかりは皆さんには譲れません‼私が貰います!」
「私こそが貰う権利があります!」
「貴女達!ここはお姉さんの私に譲るべきよ‼」
「これは私の~‼」
真里愛ちゃんと沙友里ちゃんと陽菜...そして奈乃波さんがあるものを巡って言い争いをしていた。
「ちょっと...皆さん落ち着い...」
「玲奈ちゃんは黙ってて!」
「はぁ...」
何故こんなことになったのか少し時を遡る...
「玲奈お姉ちゃんそのぬいぐるみどうしたの?」
「このぬいぐるみですか?ちょっとした思いつきで作ってみたんですよ。」
「可愛いね~‼」
私には前世でもこの世界でも共通した趣味があった。それがぬいぐるみ作りだ。元々私は手先が器用で裁縫モノは得意だったのでそこから自然と趣味になったという感じだ。
「これは私のぬいぐるみですか⁉とっても上手ですね‼」
「玲奈ちゃんが作った私のぬいぐるみ...完成度が凄すぎます!」
「私のも作ってくれたの⁉お姉さんとっても嬉しいわ‼」
せっかくなので家に遊びに来てた真里愛ちゃん、沙友里ちゃん、奈乃波さん...そして陽菜そっくりのぬいぐるみを作ってみたところ大好評だった。
(皆褒めすぎだけど気を遣ってくれてるのかな?)
私はぬいぐるみを作るのは好きだが、自分で上手いとは思っていなかった。なのにお世辞が過ぎるとはいえ、皆がここまで褒めてくれるとこちらも嬉しくなる。
「あっ‼玲奈お姉ちゃん‼自分のぬいぐるみも作ったの⁉」
「あっ...はい、つい手が進んでしまったみたいです。」
4人のぬいぐるみを作ってもまだ毛糸に余りがあった事もあり、気づけば私は自分のぬいぐるみも作っていた。
「それ私にちょうだい‼玲奈お姉ちゃんのぬいぐるみと私のぬいぐるみをお揃いで自分の部屋に飾りたいの~‼」
「全然構いませんよ。」
「やったー‼」
私のぬいぐるみが貰えるとわかった陽菜は大喜びしていた。新しくできたお姉ちゃんが作ったぬいぐるみを2つも貰えるのだ。嬉しくないわけがない。私がそう感じて自分のぬいぐるみを陽菜に渡そうとした時だった。
『『ちょっと待ったー‼』』
(はい?)
声がした方を見ると一見すると笑顔だが目が明らかに笑っていない...いや、何故か嫉妬の目をしてる真里愛ちゃんと沙友里ちゃんと奈乃波さんが突っ立っていた。
...そして冒頭に至るという話だ。
4人ともどうしても私そっくりのぬいぐるみが欲しくて仕方がない様子だ。自分そっくりのぬいぐるみならまだしも、何で私そっくりのぬいぐるみを欲しがるのかが分からない。はっきり言って、私の作ったぬいぐるみにそんな価値はないと思うんだけどね...
「私はどうしても欲しいの‼...これを機に玲奈様と更なる関係に...」
「私だって気持ちは同じです!」
「貴女達3人は同学年だったり、妹だったりで玲奈ちゃんとずっと一緒じゃない‼せめてぬいぐるみくらいは私に譲りなさいよ~‼」
「玲奈お姉ちゃんは私にくれるって言ったよー‼」
(はぁ...当分は皆の前でぬいぐるみを作るのは控えた方がいいかもしれませんね...)
私はぬいぐるみをめぐって熾烈な言い争いを繰り広げる4人を見てそう思ったのだった。
久しぶりのギャグ回...かな?
 




