47.歴史は既に変わっている?2
第47話
「玲奈ちゃん‼陽菜ちゃんってとっても可愛くて元気な子だね‼」
「玲奈のおかげで陽菜ちゃんともだいぶ仲良くなれたよ。」
私が声がした方を向くと別の部屋で陽菜の遊び相手をしていた筈の姫由良ちゃんと蛇茨ちゃんが部屋の中に入ってきた。
「そうですか。陽菜が皆と仲良くなれて本当に良かったです。」
「うん‼陽菜ちゃん可愛かったよ~‼」
実はしばらく前に陽菜の事をグループの皆に話したのだ。陽菜の話を聞いた皆は改めて奥田一家の行いを非難して、陽菜の悲惨な生い立ちに同情してくれた。
正直、『私の命を狙ったあんな女の妹を岩倉家に迎え入れるなんて正気ですか⁉』などと反対されるのではと思っていたが全くの杞憂だった。むしろ、『妹ができて良かったですね‼』と祝福してくれたのだ。
「陽菜ちゃんって私の妹に似てるからさ~、ついつい間違えて妹の名前を呼んじゃいそうになっちゃったよ~‼」
「全く、姫由良ったら...」
(この二人もゲームとはだいぶ変わったね~。)
ニコニコしながら楽しそうに話す二人を見て私はそう思った。
ゲームでの姫由良ちゃんは明るい性格ではあるが気が弱く今みたいな天真爛漫とまではいかなかったし、蛇茨ちゃんに至ってはゲームでは男勝りで他人を簡単に信用しないみたいな子だったのに今の蛇茨ちゃんはまるで落ち着いたツンデレ系女子だ。
「というか...清芽、奏、真里愛、沙友里?あんた達は何を堂々と玲奈に抱き着いているのよ⁉」
「あら~‼蛇茨ったら羨ましいの?私達に『私も玲奈様に抱き着かせて下さい‼』ってお願いしてくれるなら変わってくれてもいいけど⁉どうする?」
「は...はっ⁉何言ってるのよ⁉私はただ玲奈が暑苦しそうだからと思っただけだし‼」
「はいはい、そういう事にしておくわね。」
「ちょっと奏‼それはどういう意味かしら?」
また、蛇茨ちゃんはゲームの時ほど貴族達を嫌っていない。私達のように優しい貴族達もいるという事を理解してくれたようだ。今の奏ちゃんとのやり取りも喧嘩というよりはいじり合いに近い。ゲームではそれぞれヒロインと玲奈お嬢様の仲間としてお互いに会うたびに揉め事を起こしていた二人が今では性格が似てる者同士としてそれなりの仲になっている。当時、ゲームをプレイしていた人が見れば驚くに違いない。
...なんて事を思っていると、
「玲奈お姉ちゃんも一緒に遊ぼ‼」
「あっ‼玲奈ちゃん、陽菜ちゃんが玲奈ちゃんとも遊びたいそうです。」
お互いに手を繋いだ陽菜と優里ちゃんが部屋に入ってきた。今日は優里ちゃんも私達のグループの一員として招待したのだ。
「あっ‼お姉ちゃん達ズルイ~‼私の玲奈お姉ちゃんだよ~‼」
「もう、陽菜ったら...」
陽菜は皆とすっかり仲良くなったがやはり相変わらず私をとられる事に関しては我慢ならないようだ。その証拠に他のメンバーを私から引き剥がそうと必死になっててその光景も可愛らしい。
「あの...玲奈ちゃん、本当に私なんかがここに来て良かったんでしょうか?」
優里ちゃんが不安そうに私に聞いてきた。やはり皆と仲直りできたとはいえ、まだまだ負い目があるのかな?
「あのさ...いつまで過去の事を引きずってる気なの?」
(ん?)
意外にも口を開いたのは蛇茨ちゃんだった。優里ちゃんの事を一番嫌ってた筈の彼女が...
「あのさ...反省してるとか、やり直したいとかいう言葉は聞き飽きちゃったんだよ...被害者である玲奈や姫由良はもちろん、他の皆も許してくれたんだからもう良いんじゃないの⁉特にせっかく私達と仲直りさせようと尽力していた玲奈や沙友里の気持ちを踏みにじる気なの?」
「それは...」
(......)
蛇茨ちゃんの言う通りだ。確かに最初こそ皆は優里ちゃんをグループの一員として迎え入れる事に猛反発していたが私や沙友里ちゃんが優里ちゃんの事情を話した上で姫由良ちゃんと蛇茨ちゃんが彼女を許してる事を説明するとやっと認めてくれたのだ。
「大坪さん...私の事を思って...ありがとうございます‼」
「なっ...勘違いしないでよ‼私はまだ貴女を完全に信用した訳じゃないから‼ただ...貴女がいつまでもその調子じゃ玲奈に申し訳ないと思っただけで...」
「蛇茨ちゃんは相変わらずツンデレですね。」
「ちょっと‼清芽⁉聞こえてるわよ‼」
相変わらずのツンデレっぷりを発揮しながらも優里と心を通わそうとする蛇茨ちゃんを見て思わずカッコいいと思ってしまう自分がいた。
(陽菜も優里ちゃんも...この調子ならきっと大丈夫だね。)
陽菜と優里ちゃんの二人はゲームには登場しなかった。だが、こうして皆と仲良くなれたおかげで私の中では今後二人は準レギュラー並に活躍してくれるかもしれない...なんていう願望が生まれるのだった。




