42.心を通わす
第42話
「おっ...お姉ちゃん達、誰なの?」
私と莱們ちゃんを見た陽菜ちゃんは嘉孝さんの手をぎゅっと握りしめながら不安そうな顔をして私達に尋ねてきた。
「はじめまして、私は岩倉玲奈です。」
「私は三条莱們よ。」
私達が挨拶を返すが陽菜ちゃんは警戒したままだ。そりゃ、いきなり知らない女の子が二人も自分の目の前に現れたから当然なのかもしれない。そんな陽菜ちゃんの様子を見て私は察した。この子が今までどれほど酷い扱いを受けていたのかを。
「心配せんでもいいよ。この子達は儂の昔からの知り合いでな、陽菜ちゃんと仲良くなりたいと思って訪ねてきてくれたんじゃよ。」
「えっ⁉そうなの?」
「まぁ、そうですね。」
嘉孝さんよ...昔からの知り合いといっても私はここ貴方と数年は会ってないんだが?それに莱們ちゃんとは完全に初対面じゃないの?それなのに私達の事をここまで信用してくれるなんて本当に感謝しかない。
「嬉しい‼私今までお友達なんていなかったんだよ...家ではお姉ちゃんからは苛められるし、使用人の人達からも卑しい女の娘だって陰口を叩かれるし、それに...えっ⁉ちょっと...玲奈お姉ちゃん?」
「陽菜ちゃん...もうこれ以上、そんなに自分を汚さなくていいのよ。」
陽菜ちゃんの悲しい過去の話が聞くに絶えなかったのか気づけば私は陽菜ちゃんをそっと抱き締めていた。
「あっ‼ごめんね‼急に抱き締めちゃったりして...」
「...いよ。」
「えっ⁉」
「いいよ。玲奈お姉ちゃんに抱き締められた時、よく分かんないけど嬉しかったの‼だからもっと私を抱き締めてほしいの!」
(あぁ~‼陽菜ちゃんが可愛すぎるよ~‼)
私がそんな陽菜ちゃんにメロメロになっていた時だった。
「それよりも玲奈ちゃんよ。今日、家に来たのは陽菜ちゃん絡みの事だろう?儂も知りたいと思ってたんだ。この子は何者なんじゃ?」
おっと、そろそろ本題に入らなければいけないね。
「陽菜ちゃん、今から皆で遊びましょうか。その間に陽菜ちゃんの事、もっと私達に教えてほしいな。」
「陽菜の事を?」
・・・・・
数時間後...
「やったー‼私の勝ちだ!」
「悔しい~‼陽菜に負けたわ~‼玲奈お姉様‼もう一度やりましょう‼」
「はいはい。」
私と莱們ちゃんと陽菜ちゃん...さらに嘉孝さんも加わってくれて4人で一緒にトランプで遊んでいた。陽菜ちゃんは初めてのお友達と遊べる事に喜んでたし、嘉孝さんはこんなに笑い合って遊んだのはいつ以来だろうと呟いていた。莱們ちゃんは莱們ちゃんでトランプに夢中になっていた。
遊びながら私は陽菜ちゃんから奥田家での扱いや嘉孝さんに引き取られた経緯などを聞いて改めて奥田一家に怒りがこみ上げてきた。こんな可愛い子にあんな仕打ちをするなんて!人としてどうかしてるとしか思えない。
「あっ‼玲奈お姉様、もうこんな時間ですね、そろそろ帰らないといけません。」
「はぁ...遊んでると時間が経つのは早いですね。」
気づけばもう夕方になっていた。ただでさえすぐに帰るといっていたのだ。流石にもうそろそろ帰らないと両親や姫香からのお説教を食らう羽目になりそうだ。
「えっ⁉玲奈お姉ちゃん、莱們ちゃん、帰っちゃうの?嫌だよ‼ずっと私と一緒にいようよ‼ねぇ!」
陽菜ちゃんが寂しそうな目で私達を見つめてくる。
(陽菜ちゃん、その顔は反則だよ!)
正直に言えばずっとここにいたいという気持ちもある。。だが、流石に帰らないわけにはいかないのだ...皆に心配をかけてしまう。私が心を鬼にして陽菜ちゃんにそう伝えようとしたその時だ。
「玲奈ちゃん、儂から頼みがあるんじゃ。」
一連のやり取りを眺めていた嘉孝さんが何かを決心したような様子で私に話しかけてきた。
「はい、どうしましたか?」
「あのな...」
一瞬、躊躇った嘉孝さんの次の一言に私は驚かされる事になる。
「もし、良ければなんだが...陽菜ちゃんを岩倉家で引き取ってもらえないだろうか?」




