39.やればできるご先祖様
第39話
水族館観光はあっという間だった。いろんな海の生き物が観れたり、優里ちゃんとも本当のお友達になれたりといい思い出だった。
そんな私は今...
「私には友と呼べるような者はいなかった、いや何人かいたが全員が私から離れていったのだ。なぜなら...」
「まぁ、貴方にはできないでしょうね?ご先祖様。」
久しぶりの夢幻世界でクソご先祖こと麻呂さんの思い出話を聞かされていた。
「大罪を犯した貴方と一緒にしないで下さい‼」
「だからお前は私のようにはなるな。先祖としての情けの忠告だ。」
「言われなくてもそのつもりです!」
「口は悪いが聞き分けがいいのぅ。」
ゲームの玲奈お嬢様もこんなやつの相手をしていたのだろうか?もしそうだとするとゲームの玲奈お嬢様は麻呂さんの忠告を無視していたことになる。だから麻呂さんの存在も完全に軽視するわけにはいかない。
「そうだ。お前に行っておかなければならない事がある。奥田美留世とやらの件についてだ。」
「何か分かったんですか?」
前にも言ったが麻呂さんにも奥田一家の行方の手がかりを探してもらっていたが長いこと収穫ゼロの状態が続いていた。それなのに今さら何が分かったというのかな?
「近所の例の老夫婦の事は知っているな。」
「はい。小さい頃に何度か家にお邪魔させてもらった事があります。とても優しい人でしたがそれがどうかしたんですか?」
「実は奥田美留世の腹違いの妹がからくも魔の手から逃れ、その老夫婦の家に保護されているのだ。」
(えっ⁉)
初耳の情報だ。優里ちゃんからはもちろん、奥田一家の誰からも奥田美留世に腹違いの妹がいるなんて聞いてない。仮にも家族というのになぜ奥田一家はそんな重要な事を隠していたのだろうか?
「その子の名前は奥田陽菜。現奥田家当主、奥田長埜の妾の子だ。」
「妾ですか...」
「そうだ。そのせいか、奥田陽菜は長埜の正妻や美留世から見下され酷い仕打ちを受け続けたのだ。お前に彼女の事を言わなかったのも妾の子である彼女は見捨て自分達だけ助かろうという算段だったのだろう。」
「なっ...!!」
それを聞いた私の中で奥田一家の印象が180度変化した。前までは一家も黒幕に利用された被害者だと思っていたが考えが甘かったようで奥田一家は正真正銘のクズだったようだ。一家が失踪したのも自業自得というものだ。もはや奥田一家には同情できる余地がない。
「今度その陽菜っていう子に会ってみようと思います。」
「うむ、そうするといい。」
「ところで麻呂さん、前から気になっていたのですがどうやって情報を集めているんですか?」
「それはだな...あっ‼まずい...そろそろ戻らないとやつに気づかれてしまう!この話はまた今度だ‼」
「あっ、はい...」
何やら焦った様子の麻呂さんに一方的に会話を打ち切られ私は夢幻世界から目覚めるのだった。
・・・・・
数日後...
私が姫香に調べさせた所、確かに老夫婦の家に幼い女の子がいるという結果だった。そのため近いうちに陽菜ちゃんに会いに行こうと思っている。
(麻呂さんもたまには役に立つんだな~。)
生前は極悪貴族だったとはいえ、自称私のご先祖というだけあってなかなか侮れない存在なのかもしれない。大政大臣にまでなれた理由も何となく分かった気がする。
私は少しだけ麻呂さんの事を見直したのだった。




