36.三条姉弟
第36話
(なるほど、耀心くんルートかぁ...)
私は前世でこのルートをプレイした時の事を思い出した。
耀心くんルートでの玲奈お嬢様はヒロインの恋のライバル令嬢としてではなく、大切な弟分を平民なんかに任せられないという思い込みでヒロインに嫌がらせを行うのだ。兼光ルートとは違って弟分思いな姉らしき点がみられ、性格そのものもヒロインと出会う前は普通の令嬢レベルまで落ち着いていた。そのため弟分を守ろうとした純粋な心が暴走して悪役令嬢に堕ちてしまった哀しき悪役とも言えるだろう。
最終的には中盤で莱們ちゃんと耀心くんに裏切られて断罪されてしまい、ショックのあまり自ら命を絶ってしまう。しかし、エンディングでは莱們ちゃんと耀心くんが自分達が玲奈お嬢様を裏切ったのは泣く泣くだったこと、そして玲奈お嬢様にも結婚を祝ってほしかったことを言及するなど他のルートと比べて比較的救いのある人物として描かれている。ヒロインにやってる事はさほど変わらないのだが。
なお、岩倉家自体がどうなったのかは描写がなく最後まで不明だったが恐らく三条姉弟の事だから比較的軽い処分で済んだ可能性も高い。
「玲奈お姉様‼私達、もうすぐ玲奈お姉様と同じ学園に入学ですね‼」
「そうですね。私も楽しみにしてますよ。」
「ありがとうございます!」
そうだ、莱們ちゃんと耀心くんは来年から明成学園初等部に入学するのだ。莱們ちゃんはそれをとても楽しみにしているようだ。
「えぇ、僕も楽しみです...玲奈様と一緒の学園に入れるのが...」
「もう‼耀心‼あんたは畏まり過ぎだって言ってるじゃん‼入学するまでにはそれ直しなさいよ?」
私はこの姉弟の微妙な違いに気づいた。莱們ちゃんは私の事を本当のお姉ちゃんのように慕っているが、耀心くんはどこか他人行儀というか、私に結構気を使っている様子がみられる。このままでは後々響いてくる可能性もある。
「耀心くんも私の事を玲奈お姉様って呼んでくれてもいいんですよ。」
「いやっ...流石にそれは...」
私がそう言っても耀心くんは遠慮している素振りをみせる。
「はぁ~‼耀心?玲奈お姉様がそう言ってるんだからあんたも呼びなさいよ。」
見かねた莱們ちゃんが耀心くんにそう言い聞かせると耀心くんは、
「れっ...玲奈お姉...様?」
「えぇ。」
仕方なくですという雰囲気を出しながらも私の事を玲奈お姉様と呼んでくれた。
(やったー‼耀心くん可愛い~‼私の事、玲奈お姉様って!)
私はポーカーフェイスで表情こそ取り繕っていたが実は飛び上がるほど嬉しかった。
・・・・・
数時間後...
「では両親がうるさいのでそろそろ帰りますね。」
「分かりました。波季里様によろしくお願いしますね。」
「はい!」
「では、莱們お嬢様に耀心お坊っちゃま、参りましょう。」
三条家の上級執事である球磨六我さんが迎えに来て莱們ちゃんと耀心くんが帰っていった。
(波季里様にも会えたらいいな...)
波季里様とは三条家当主のご夫人、三条波季里様の事で私の事は実の娘のように可愛がってくれたそうだ。まぁ、最後に会ったのが3歳ぐらいの時のためあまりよく覚えていないが...
(今度、三条家にお邪魔してみようかな⁉)
いつの間にか私の頭の中では三条家訪問計画が練られていたのだった。
・・・・・
その頃、とある場所では...
「今日は奴が三条家の姉弟と接触と...まぁ、今のところ問題なさそうだね。」
「...............」
「やっぱり奥田美留世を早めに始末したのが大正解だったみたいだからね。」
「...............」
「あれれ~⁉怖いのかい?安心しなよ。まだ彼女が...達の正体を暴くのはまだ先の話さ。」
「...............」
「さてと...次は...」
闇に紛れて密談を交わす謎の二人組の存在があった。
果たして二人の目的とは...




