34.箱入り娘とカラスの乱?
第34話
「玲奈ちゃん、来月の水族館観光が待ち遠しいですね!」
「そうですね!」
今日の昼食での私達の話題はとあるイベントの事だった。
私達1年生にはもうすぐビッグイベントが迫っている。それが水族館観光だ。名前の通り、水族館を観光するのだ。
前世では水族館の名前は聞いた事はあるけど実際に行く事は叶わなかった。だから、私は水族館には海の生き物がいる程度しか知らない。ましてやこのゲームの世界の水族館ってどうなっているんだろう?ゲームには水族館なんて登場しなかったからますます気になる。
「私はイルカのショー見たいですね~。」
「あら?清芽ったら可愛いわね。私はジンベイザメかしら?」
「私はクラゲがみたい‼」
「姫由良ちゃん可愛い~。私はオオジロザメかな?」
「沙友里さん...怖いもの知らずですね。」
(あれ?)
皆の話を聞いて思ったが恐らくこの世界の水族館も前世と変わらないのだろうか?というか前世の水族館も詳しくは知らないが。
「玲奈ちゃんは何がみたい?」
「私ですか⁉」
(マズイ...)
姫由良ちゃんに質問されて私は戸惑った。仮にも岩倉公爵家の令嬢ともあろう私が水族館の事を詳しく知らないなんてバレたら幻滅されるんじゃ?
(落ち着け、落ち着け...海の生き物の名前を言えばいいんだよね。)
「玲奈ちゃん?」
「あっ‼はい‼えっと、私はですね~...」
(こうなったら一か八か...)
「シロナガスクジラを見てみたいですね~。」
『『.........』』
私がこう言った瞬間、みんなが変な雰囲気になったのは一生の黒歴史だ。
・・・・・
その日の放課後...
「玲奈様、かなりの箱入り娘だったんですね‼」
「でもご安心下さい!私達がこれからもいろいろ教えてあげますから!」
「はい...」
あの後、皆(特に姫由良ちゃん)からこの世界の水族館についていろいろ教えてもらう羽目になり私はちょっと恥ずかしくなった。やはり私はこの世界のゲームに関連しない部分の知識には疎いようだ。
(あの時、クジラとワニで迷ってだけど両方ハズレだったか...)
なんて思いながら三聖室に到着すると、
「玲奈ちゃあぁ~ん‼助けてぇ‼会長がいじめるの~‼」
「ちょっと、奈乃波さん...」
(またか...)
そう言いながら私に抱き着いてきたのは私より3歳年上の上級生で以前、説明会の担当を務めた烏丸奈乃波さんだ。
この人とは運動会後に起こったある一件以来、ぐっと仲良くなった。今ではまるで本当のお姉ちゃんのように私に接してくれる。
「烏丸様‼玲奈ちゃんから離れてください‼」
「あら~?貴女達は同じ学年で同じクラスなんだからいいじゃん‼たまには私も玲奈ちゃんに抱き着く権利はあるも~ん‼」
そして最近では何故か清芽ちゃんや奏ちゃんと張り合う事も多い。まぁ、恐らく可愛い妹分は自分に面倒見させてよ‼とかいう主張なんだと思う。
「さぁ‼玲奈ちゃん!私に体を委ねて~。」
「はっ...はい‼」
私は今、年上の女性に抱かれている...それを自覚したら何かとっても心地いい気分になってきた。このまま抱かれ続けたらもうおかしくなりそう...だけど私の心は奈乃波さんを受け入れている。
いっそこのまま...
...なんて都合のいい話は起こらない。
「烏丸様‼勝手な真似は許しません‼」
「というか、何で玲奈様も抵抗しないんですか⁉」
清芽ちゃんと奏ちゃんによって私は奈乃波さんから引き剥がされてしまった。そして...
「玲奈ちゃん、次は私に...」
「ちょっと‼清芽‼次は私が玲奈様を...」
「あの、二人とも?どうし...キャッ‼」
私が言い終わる前に清芽ちゃんと奏ちゃんは私に思いっきり、抱き着いてきた。
『『玲奈ちゃん~‼』』
「二人とも‼落ち着...」
「こら~‼まだ私は玲奈ちゃんを堪能しきれてないんだからね~‼私もまぜて~‼」
「奈乃波さ...」
「玲奈ちゃん‼最高!」
結局、それからしばらくの間、私は3人の可愛い女の子に抱き着かれる事になったのだった。




