33.攻略対象というより...
今回は短めです!
第33話
「岩倉さん、ちょっといいかい?」
「はい、二条様。」
ある日のこと、いつものように放課後になり三聖室でゆっくりくつろごうとしたところ兼光に声をかけられた。
(兼光め...一体何の用なの?まさか‼手紙では物足りなくて...)
なんて想像をしながら私は兼光についていった。
兼光に連れられて部屋の隅に行くと兼光が口を開いた。
「なぁ、玲奈‼もし良かったら今度一緒に食事でも...」
「お断りします。」
私がある程度予想していた内容だ。
「釣れないなぁ...」
「私は貴女が思うほど安い女じゃありません‼」
相変わらず兼光は私と二人っきりで話す時は普通の同年代の男子と変わらない口調になる。私以外の人の前では完全に猫を被っているのだ。それぐらい兼光は私にご熱中という事らしい。
「俺はお前の事を藍葉の代用品として見てるわけじゃない!岩倉玲奈という一人の女の子として見てる!だから頼むよ‼」
(うっ...)
一見かっこいい事を言っているようだが言葉に似合わず兼光からは同年代の男子のあどけなさが出ている。それらがマッチングして...
(兼光可愛い‼こんな弟欲しい‼)
前世では15歳だった私にとっては今の兼光はわがままを言う弟みたいに見えてくる。
(まぁ、今のうちなんだけどね...)
当然、兼光は成長すると可愛さは鳴りをしずめ、腹黒い令息に変貌を遂げてしまう。個人的にそこが残念だ。
「だから...」
「二条様?いつまで玲奈ちゃんを連れ出しておくつもりですか?」
「あっ...菊亭さん、ごきげんよう。」
いつのまにか私達の目の前になぜか不機嫌そうな顔をした清芽ちゃんが現れていた。パーティーの時にも気になってたけど清芽ちゃんと奏ちゃんって兼光の事が嫌いなのかな?
「では玲奈ちゃんをそろそろ返してもらいますね‼二条様‼.........男に玲奈ちゃんは渡したくないし...」
「あっ、ちょっと...」
「さぁ、玲奈ちゃん行きましょう‼」
「はい。」
そう言うと清芽ちゃんは兼光の返事も聞かずに私の手を引っ張って強引に兼光から引き離した。というか、二条家の令息にあんなこと言える清芽ちゃんっていったい...
(清芽ちゃんがした事は私にとってはありがたい筈なのに...何か変な胸騒ぎが...気のせいだよね!)
私は必死で自分の心にそう言い聞かせるのだった。




