31.心機一転?
第31話
(はぁ...何の手がかりもなしか。)
あの後、岩倉家とその派閥の人間を総動員して奥田一家の捜索にあたらせたが結局何の手がかりも掴めなかった。優里ちゃんをはじめとする美留世の元取り巻きの子達も奥田一家の行方には全く心当たりがないようだ。そうなると美留世は奥田家が別の人物によって操られていた事を誰にも話していなかったということだ。若しくは口止めされていたのだろう。
(さらに学園への手回しまでされていたとはね...)
学園側に問い合わせたところ、奥田美留世はわけあって転校する事になったという返事が返ってきた。となると犯人は学園関係者の可能性もあるということだ。
(あのクソご先祖は相変わらず役に立たないし...)
一応、麻呂さんにも尋ねてみたが...
結果はお察し下さい...
・・・・・
「じゃあ、いってきますね。」
「いってらっしゃいませ、玲奈お嬢様。」
姫香に見送られながら学園の入口へ向かう。今日から新学期がはじまるのだが運動会の件もあって少し不安だ。果たして私は新学期を無事に乗り越えられるのだろうか?
そう不安になっていた時だ。
「あっ、玲奈‼おはよう‼」
「ごきげんよう、蛇茨ちゃん。」
蛇茨ちゃんが声をかけてきた。というか、蛇茨ちゃんがこの時間帯に来るなんて珍しい。普段は姫由良ちゃんと点呼ギリギリで来る事が多いのに。生活習慣を改めたのだろうか?
「あの...玲奈?もっ...もしよかったらまた泊まりにきてね?」
「はい、もちろんです!」
実は夏休みにみんなで蛇茨ちゃんの家でお泊まり会を開いたのだ。運動会の事でピリピリしてた私にとっては、不安が一時的にほぐされいい思い出になったものだ。
「玲奈...」
「蛇茨ちゃん‼どうしたのですか?」
蛇茨ちゃんが感極まった表情で私に抱き着いてきた。この感じ悪くない...じゃなくて!どうしたんだ蛇茨ちゃん‼貴女こんな子じゃなかったでしょ⁉
「玲奈だーい好き‼」
「蛇茨ちゃん...」
ゲームでは玲奈お嬢様を死ぬほど憎み、ヒロインを助けるかっこいい男女だったというのに今の蛇茨ちゃんは奏ちゃんと同タイプの女の子でしかない。もうこのまま抱き着かれ続けるのも悪くないと思っていた時だ。
「玲奈ちゃん、蛇茨さん、いったい何をされてるのでしょうか?」
「あっ...」
「清芽ちゃん...」
そこには以前と同じように笑顔だが目が全然笑っていない清芽ちゃんが突っ立っていた。
この後、私と蛇茨ちゃんはなぜか清芽ちゃんにお説教を食らうはめになったのだった...
・・・・・
場所は変わって明成学園初等部校長室では...
「ふぅ、寿命が縮まりそうだ...奥田美留世は表向きは転校扱いにできたが...よりにもよって、岩倉公爵家の令嬢に...はぁ、頭が痛い...」
校長室に明成学園初等部校長、副木芳文の独り言が響く。
「校長先生、少しよろしいでしょうか?」
「あっ...あぁ‼入りたまえ。」
愚痴っているうちに今日もまた来客がきた。この日に来るという事は相手は誰なのかは分かっている。奴らは岩倉公爵家の令嬢とは違う意味で面倒な存在だ。
「失礼します。」
「失礼しますね~‼」
「二人揃って今日は何用かね?玉里君、烏丸さん。」
校長室に入ってきたのは三聖徳会現会長の玉里鳳凰と同じく三聖徳会メンバーの烏丸奈乃波だった。




