314.眞美は憩美の良き友人
第314話
陽菜との話し合いは後味の悪い結果に終わってしまった。しかし、陽菜の方はしばらくするとさっきまでの事を特に気にした様子もなく、私にいつも通りの笑顔を向けて話しかけてきてくれた。どうやら、私があの話題を持ち出さない限りはいつも通りの陽菜のままらしい...
(どうしよう...とりあえずは今のところはこれ以上、追及するのはやめておいた方がいいかな...)
もしかしたら、今回の話し合いで陽菜の心境にも多少は何かしらの変化をもたらした可能性もゼロではない。私はそんな淡い期待を抱いておくしかなかった...
・・・・・
そして、ゴールデンウィーク6日目も5日目に続いて特に約束事はしておらず、予定は習い事のみだったので何事も起こらずにあっという間に過ぎていき...今日はゴールデンウィーク7日目だ。
「う~ん、そろそろ集合時間なのに...遅いなぁ...向こうが時間や日にちを間違えていたり?」
私はクラウンモールの入口付近でとある人物を待っていた。今日はその子と二人っきりで遊びに行く約束をしていたのだ。
(...待てよ?もしかして、実は私の方が日にちを間違えていたとか?いや、流石にそれはないはず...日にちを間違えているとしたら私が相当なおバカさんだと言っているようなものだし...)
そんな感じで私は待機を続けて最終的にその子が息を切らした様子で走ってやって来たのは集合時間から5分ほど過ぎたタイミングだった。
「あっ、玲奈先輩...!遅れて本当にごめんなさい...!はぁはぁ...!」
「いえいえ、私は大丈夫ですよ。眞美ちゃんの方こそ息を切らしていますが大丈夫ですか?あっ、ちょうど水があるのでこれでも飲んでください。」
「はぁはぁ...!遅刻した私を許してくれた上に水までくれるなんて...本当にありがとうございます...」
そう...今日、クラウンモールで一緒に遊ぶ約束をしたのはこの宮之楯眞美ちゃんなのだ。
「玲奈先輩!今日は私のためにわざわざ時間を作ってくれた事に感謝してます!」
「いえいえ、グループのメンバーの中だと眞美ちゃんとはあまり絡む機会が少なかったので...今日のような親交を深める場を設ける事ができたのはこちらこそ光栄ですよ。」
思い返してみれば眞美ちゃんは予定が被ったり、用ができたりで私と直接遊びに出かける機会はほとんどなかったんだよね...実際に本人も内心ではそれを気にしていたっぽいし...
「そう言ってもらえると嬉しいです。今日は私が玲奈先輩の事を独占しちゃう日ですから...」
「そうですね。あっ、眞美ちゃんに言われた通りに今回のお出かけの件は他の皆には内緒にしておきましたよ。」
「助かります!」
よっぽど眞美ちゃんは今回は私と二人っきりという主旨にこだわっていたのか、今日のお出かけについては憩美ちゃんをはじめとする同級生達にも告げていなかった。おまけに私にもキツく口止めをしていたのだ。
「まさか、憩美ちゃんにすら内緒にしてほしいと頼まれた時はちょっと驚きましたが...」
「そうですよね...憩美ちゃんに悪い事をしちゃったような気もします...でも!それくらいに今日という日を待ち望んでいたんです!まぁ、憩美ちゃんには後日謝ろうと思います...」
う~ん、別に憩美ちゃんに謝る必要まではないと思うけど...まぁ、眞美ちゃんがそうしたいと思っているなら口を出さないでおこうかな?
「眞美ちゃんは憩美ちゃんを本当に大切に思っているのですね...」
「はいっ!もちろんです!憩美ちゃんは大切な親友ですからっ!」
嬉しそうに話す眞美ちゃんの様子を見て憩美ちゃんにも良い友達が出来たものだと私は思ったのだった...




