27.叔父と姪の関係
第27話
「あの...玲奈お嬢様、また兼光様からお手紙が来てますが...」
「そこら辺に置いといて下さい。捨てても構いませんよ。」
「はい!」
私がそう言うと姫香はなぜか嬉しそうに兼光から私宛ての手紙...もといラブレターをゴミ箱に放り投げた。
ここ最近、兼光が私宛てに手紙を送ってくるようになった。わざわざ手紙を出さずとも直接言えばいいと本人に言ったのだが兼光曰く、学園ではクラスが違うので話す機会がないし、かといって兼光が岩倉家の屋敷を訪ねるとか二条家の屋敷に招くという選択肢もあるにはあるのだが兼光の母が私の事を快く思っておらず、トラブルが起こりかねないということでこっそり手紙を送るという手段になったんだとか。
(正直、兼光のお母さんを応援したいよ...)
私は破滅回避のためにも兼光と婚約する気は全くない。一生独身でいたいくらいだ。私が改めてそう心に誓っていた。
・・・・・
運動会まで数日前の休日の事だ...
「玲奈お嬢様‼」
姫香が慌てた様子で私の部屋に入ってきた。恐らくまた兼光が手紙を送ってきたのだろう。
「二条様からの手紙なら捨てといて...」
「そうではありません‼」
「えっ⁉」
兼光の事ではないのなら姫香はなんでそんなに慌てているのだろうか?
「岩倉昭三様がお見えになりました。」
(あぁ~あの人か...)
姫香が慌てるのも納得だ。
岩倉昭三。私の父の弟で私の叔父にあたる男だ。昭三は父とは過去にどちらが岩倉本家を継ぐかで揉めたらしく不仲である。だがなぜか私には優しく接してくるのだ。そんな男の事だ。単に姪の私が可愛いとかそんな理由じゃないだろう。なにか狙いがあるに違いない。
「とりあえず、部屋にお通しして下さい。」
「はい。」
私がそう言うと姫香は不安そうな顔をして部屋を出ていった。
それからしばらくして昭三叔父様が部屋に入ってきた。
「玲奈、久しぶりだな。変わりないか?」
「はい、叔父様。私の事ならご心配無用です。」
昭三叔父様は笑顔を浮かべて私に話しかけてきた。表向きは笑顔だが腹では何を考えてるか分からない。私は警戒しながら昭三叔父様と会話を続けた。
「ところで今日は何の用ですか?」
「いやぁ、可愛い姪の顔を見たくてな‼ハハハッ‼」
絶対に嘘だ。この男がそんな理由でわざわざ不仲の父がいる本家に足を運ぶ筈がない。
「それで?本当は何なんですか?」
「風の噂で聞いたぞ。確か二条家の御曹司に求婚されたらしいな!さすがだな我が姪よ。」
(なっ...なんでそれを⁉)
私が兼光に求婚された事を知るのは私と姫香、そして清芽ちゃんと奏ちゃんだけの筈だ。お互いの両親ですら知らないのだ。なのになぜそれをこの男が知っているというのだろうか?
「だが、岩倉家は公爵家といっても成り上がりだ。だからこの縁談はなかっ...」
「昭三!私に無断で娘の部屋に入るとはどういう事だ‼」
「おっ...お父様⁉」
いつからそこにいたのだろうか、全く気づかなかった。父は昭三叔父様の前に立ち塞がると怖い顔をして彼を睨み付けた。
「おい、兄貴。可愛い姪の顔を見るのが何が...」
「用が済んだらさっさと帰れ!本来ならお前など家にいれる資格もないのだからな!」
「ちっ...」
父がそう言うと昭三叔父様は舌打ちをしながらしぶしぶと私の部屋を出ていった。それを見届けた父は私には駆け寄る。
「玲奈‼あいつに何かされなかったか⁉」
「いいえ、大丈夫です。」
「なら良かった。玲奈、あいつを無闇に部屋に入れるな!何かあってからでは遅い!」
父は私にそう忠告すると私の部屋から出ていった。
(ほんとに仲悪いんだな...てか最後、昭三叔父様は何て言おうとしてたんだろう?)
この日、私は父と昭三の事が頭から抜けなかったのだった。
・・・・・
「もしもし、昭三様。例の件なのですが......」
「......................うむ、分かった。引き続き報告を頼んだぞ。」
「はい。」
その日の夜、岩倉昭三はとある人物と電話で話していた。ある計画を進めるためだ。
(見ているがいい...クソ兄貴‼今にお前に地獄を見せてやろうではないか!それまでせいぜい長生きできるといいな...はははっ‼)
玲奈の知らない所で昭三のとんでもない陰謀が画策されていくのだった...




