286.謎のおばあさん来訪!
第286話
4月になり、楽しかった春休みの終わりが目前に迫ってきた。
今年の春休みは陽菜とクリスタルアイスシティーに出かけた際のユメと修羅ちゃん達の件以外は特に何事もなく終わりそうだ...
「はぁ...まさか、あなたが直接にですよ?岩倉家の屋敷にやって来るとは思いもしませんでしたよ...ねぇ、倉聟さん?」
...と、思っていたのがちょうど数分前の話だ。今、家の玄関前にて私は予想だにしなかった来客を相手にしていた。
「驚いたかい?お嬢さんや。」
「当たり前ですよ!何であなたが私の屋敷の場所を知っているんですか?」
そう...予想だにしなかった相手とはもう一人の転生者である倉聟さんの事だった。
「いやぁ、たまたま会った...えっと、中...園さん...だったかな?そうだよ、その子に教えてもらってねぇ。」
「えっ?沙友里ちゃんがですか?」
「そう、中園沙友里さんにだよ。」
倉聟さんの様子から恐らく嘘はついていないのが分かる。というか、大前提としてメリットがない。
ミラピュアの原作知識が皆無で攻略ブック頼りの倉聟さんはこの場で嘘を吐いても私には見抜かれる可能性がある事ぐらいは分かっているはずだからね...となると、沙友里ちゃんが本当に倉聟さんに岩倉家の屋敷の場所を教えた事になるんだけど...
「とにかく、本日はどのような要件ですか?もしかして、攻略ブックを基に私に何かしらの報告ですか?」
「う~ん、半分正解といったところだね。今回はお嬢さんにちょっとした忠告をしにきたんだが、お時間は大丈夫かね?」
「えっ?あっ、はい!幸いにも両親や陽菜は今は家を空けていますので!」
こんな偶然あるんだな~と思いながら、私は倉聟さんを自らの部屋に招き入れて忠告とやらを聞き出す事にした。
「烏丸七蝶...という女に気をつけなされ。つい最近、あの女が私に接触してきてお嬢さんの情報を聞き出そうとしたんだよ。」
「えっ?その人に私の情報を...ですか?」
「安心しておくれ。もちろん、お嬢さんの素性や前世の世界については話しておらんからな。」
「なるほど、良かったです...」
倉聟さんがきちんと秘密を守ってくれる口の固い人で助かったよ...
「それにしても、あの女の口ぶりからして他にもお嬢さんと関わりがある子達と接触したみたいんだよ...いったい、何者なんだろうねぇ?」
「烏丸七蝶...」
烏丸といえば奈乃波さんと同じ名字...そして、その奈乃波さんには行方不明の姉がいる...いや、まさかね?
「おや?どうしたんだい?ひょっとして心当たりでも?」
「えぇ、そんなところです。ですのでこの件に関しましてはご心配は無用ですよ。」
とりあえず、この件に関しては倉聟さんの助太刀は不要だ。私の方で何とかなるだろう。
「そうかい。じゃあ、私はさっさとお暇させてもらうよ。」
「わざわざありがとうございました...」
そう言って帰っていく倉聟さんを私は見送った。
(もう少しで5年生か...)
そんな思いを頭に浮かべながら...
・・・・・
「さて、私は烏丸七蝶の事を話したが...お前さんはこれで満足だったのかね?」
玲奈と別れた後、倉聟は自身に付けられていた盗聴器に向かってそう呟いていた。
(どこの誰かは知らんが...いったい、何のためにこんな事をねぇ...)
危ないのは玲奈だけではなく、自分もなのかもしれない...そんな危機感を倉聟は抱いたのだった...
・・・・・
とある場所にて、
「はぁはぁ...何とか到着っと。一時はどうなる事かと思ったよ...」
謎の少女が息を切らして疲労した様子でそう呟いていた。おまけに彼女の隣には謎の大きな機械まである。
「さてと...あれっ?おかしいな...もっと近い時代に行くつもりだったのに...20年前に来ちゃったよ...」
口振りからしてどうやら、彼女はこの時代の人間ではなさそうだ。
「いやいや!何が超高性能のタイムマシンなんだか...むしろ、これを設計した人に文句を言いたいくらいだよ!まぁ...それはさておき、まずはやるべき事をやらないと...あの人に接触しないとね。」
謎の少女が何のために何の目的でこの時代にやって来たのか?それを知る日は少し先の話になりそうだ...
次回から遂に5年生編です。ちなみにその次回なんですけど、ちょっとだけ別の小説を執筆してみるつもりなので投稿が遅れるかもです。(228話もその内投稿します!)