284.プンプンな陽菜と再会
第284話
修羅ちゃんの相談事が一段落した後、私は修羅ちゃんや売店から戻ってきた師嗣くんと橋本くんと食事をしながら会話をしていた。
それぞれの家の従者や護衛達は空気を読んでか、私達の会話の邪魔にならないように少し離れたテーブルでいつでも動けるように待機しているのが見える。本当に気が利く存在だね...
「あっ、そうだ!風の噂で聞いたのですが、岩倉様は以前に妓夫爺様とお会いになったとの事でしたが...事実なのですか?」
「えぇ、そうですね...あの方と直接対面したのは去年の夏休みの話になりますが...」
師嗣くんが言う妓夫爺様というのはとある貴族家の大御所の事であり、私はこの妓夫爺様の去年の夏休みに対談する機会があったのだ。ちなみに詳しい対談の内容はここでは省略する。
「橋本様?その...顔が...真っ青だよ...」
「えっ?あっ!いえいえ!妓夫爺様はとても偉大な方と貴族界でも知れ渡っているので、自分から見れば名前を聞くだけでも恐れ多いと感じただけですよ。」
「ふ~ん?」
橋本くんが妓夫爺様の名前を聞いて...いや、私が妓夫爺様と会ったのを知って顔が真っ青になっている本当の理由を私は当たり前のように知っているが、さっきも言ったように楽しい遊園地気分を台無しにするわけにはいかないのでこの場では特に言及するつもりはない。
「そうだ!岩倉様、その時の事を詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あっ、それは私も...気になります...」
「その...自分もですね。もし、良ければですが...」
「仕方ありませんね。では、少し長くなりますが...最後まで聞いてくださいね?」
「「「はいっ!」」」
てなわけで、妓夫爺様との対談内容に興味津々の三人のために私はその時の出来事を語れる範囲で話してあげたのだった...
・・・・・
「玲奈お姉ちゃん?」
「あっ、あの...陽菜...お待たせしました...」
あの後、休憩所で食事を終えて修羅ちゃん達と別れた私はようやく陽菜が待つトイレへ戻ってきたのだが...
「さて、玲奈お姉ちゃん?早速だけどさぁ...私に何か言う事があるよね?」
やっぱりというか、陽菜は私が無断でどこかに行ってしまった件で怒っているらしく、プンプンしていた。
「その...無断でどこかへ行っちゃってごめんなさい...」
「ふんっ!もう玲奈お姉ちゃんなんて知らないもん!」
「えっ?そんな...」
嘘...謝っても許してもらえなかったよ...陽菜は相当拗ねちゃってるし...
まさか、私は陽菜に嫌われてしまうほどの事をしでかしてしまったというの!?とにかく、どうにかして許してもらう方法を...
「玲奈お姉ちゃん、許してほしい?」
「えぇ、もちろんですよ!」
どうやら、陽菜は条件次第で私を許してくれるみたいだ。だったら、何としてでもその条件とやらをクリアしないと!
そう決意していたのだが...
「ふふっ!言っちゃったね?玲奈お姉ちゃん?」
「えっ?それって...」
そこにはまるで悪魔のような悪い笑みを浮かべた陽菜の姿があった。




