281.師嗣と修羅と実臣
第281話
ユメと別れた私は元いた場所に戻ろうとクリスタルアイスシティー内を歩き回っているところだ。幸いにも陽菜が入ったトイレの場所自体は分かっているため、いつかの憩美ちゃんのように迷子になる心配は全くしていない。
(う~ん?いったい、何だったんだろう?この感じは...)
自分でもよくは分からないが、私はユメに対して何かを感じてしまったようだ...それも、懐かしさに似たようなものを...
「あれっ?岩倉様じゃないですか!」
...と、その時だった。誰かに声をかけられたのは...
「おや?あなたは大炊御門師嗣くん...ですよね?」
「あっ、はいっ!その通りです!」
私に声をかけてきたのは奏ちゃんの従兄弟である師嗣くんだった。
「奇遇ですね!こんなところで岩倉様とまたお会いできるなんて!」
「こちらもまさか、クリスタルアイスシティーで会えるとは思ってもいませんでしたよ。」
春休みなので、明成学園の生徒達の中にもクリスタルアイスシティーに遊びに来ている子はいるだろうな~的な考えはあったが、ユメに続いて師嗣くんと出会う事になるとはねぇ...
「師嗣くんはお一人ですか?それとも、奏ちゃんとご一緒で?」
「いやいや!俺とあの人を二人でセットみたいな扱いにしないでくださいよ~!単に親戚同士ってだけで、俺達がずっと一緒に行動しているわけじゃないんですよ?」
おっと、私とした事がいけないね...うっかり、ミラピュアでの奏ちゃんと師嗣くんの関係性が印象に残りすぎて既にこっちの世界はいろいろと変わっているって事を忘れちゃってたみたいだよ...
(そうだよ...こっちの世界だと私の関与もあって、奏ちゃんと師嗣くんの関係性も少し変わっているんだよね。)
これからはこんなミスを犯さないように気をつけないとね...
「それはすみませんでした...という事は近くに隠れている護衛達を除けばお一人ですか?」
「えっ?あっ、それは違います!実は今日...」
師嗣くんが言い終わらない内にこちらの方へ駆け寄ってくるような足音が二つ...私は自然とそちらに視線を向けた。
「岩倉様ではありませんか!お久しぶりです!」
「あっ、岩倉様...どうも...」
そこには師嗣くんの同級生である今帰仁修羅ちゃんと橋本実臣くんの姿があった。
「なるほど、お二人が師嗣くんと一緒にクリスタルアイスシティーに来ていたのですね。」
「はいっ!わざわざ大炊御門様に声をかけていただき、非常に光栄でした!」
橋本くんは嬉しそうにクリスタルアイスシティーに来た経緯を私に話している。
「それは良かったですね。アトラクションは十分に楽しめましたか?」
「もちろんです!絶叫系から静かな物まで心ゆくまで堪能させていただきました!」
うん、楽しめたようで良かったね...と、思いながらも私はとんでもない事に気づいてしまったがこの場では会えて言わない事にした。




