271.二匹の蛇
第271話
玲奈の尽力もあって、蛇茨が無事に解放されたという事はすぐに蛇茨ちゃんの家、さらにはグループのメンバーとその家族にも伝えられた。
あの後、蛇茨ちゃんの家からそれぞれの自宅に戻っていたメンバー達からは携帯で質問攻めが相次いでいたが、私も蛇茨ちゃんも今日はもう疲れているからと詳しい話は明日という事で話はまとまっていた。
ちなみに今回の件は結局は警察沙汰にはならない見込みだ。蛇茨ちゃんが無事に帰宅できたのもそうだし、何より蛇茨ちゃんや大坪家が警察沙汰になるのを望んでいない様子だったからだ。見かねた他の家の親から説得されても、蛇茨ちゃんの固い意志は変わらなかった...
・・・・・
そんな感じでいろいろと波乱となったその日の夜の事だ...
「もしもし?今日は私に協力してくれて本当にありがとう。」
蛇茨は自宅にある部屋のベッドに寝転がって今日の疲れを癒しながら、とある人物と連絡をとっていた。
その人物とは...
「全くよ。確かに岩倉家のご令嬢はただ者じゃないとは聞かされてたけど...まさか、あれほどの大きな秘密を抱えていたなんてね...」
そう...この日、蛇茨を誘拐した犯人であるはずの蛇姫だった...
「正直、私は今だって驚いてるよ...前世の玲奈の人生、この世界がミラピュアとかいうゲームの世界、私と玲奈は敵同士だったって事、全部に...」
「まさか、あなた達の仲直りに協力するだけのつもりがあんな展開になるとは思わないじゃん?」
「うん、私も玲奈が抱えてるものがあそこまで大きな秘密とは思わなかったからね。」
読者の皆様もここまでくれば察した事だろう...蛇茨の誘拐事件というは全て蛇茨が玲奈との仲直りのために家や親戚に協力してもらって演じた芝居である。
もちろん、蛇茨と蛇姫は実は年が離れた従姉妹同士であり、大坪家が警察に頼る事を渋ったのもそのためだった。
だが、実はこれらは蛇茨が最初からやると決めていたわけではない。
「それにしても、あの子はイカれてるわよ...岩倉玲奈を誘い出した上にあわよくば蛇茨と一緒に始末してほしいだなんて帝様に依頼するとか...たまたま、時間が空いててこの任務を受け持ったのが私じゃなかったらあなた死んでたんだからね?」
「そう...だよね、本当に運が良かったとしか言えないよ...蛇姫のおかけで芝居にできたし...」
つまりは蛇姫の裏にいるであろう、人物達の思惑に翻弄されたというわけだ。
「それでその依頼をしたのは誰なわけ?」
「あら、知りたいなら教えてあげようか?ただし、岩倉玲奈には秘密ね。自分のグループのメンバーの中にこんな依頼をした人間がいたなんて知ったらショックで倒れちゃうかもだから...」
「嘘でしょ!?そんなはずないっ!!」
まさかの犯人が玲奈グループのメンバーの中にいると聞かされた蛇茨は思わず強く否定した。自分だって分かる...あのグループの絆はそう簡単に崩れるようなものでは...
「そうかしら?なんでも、前金代わりに誰かさんから頂いたキーホルダーを帝様に差し出したそうよ。帝様はそれを私に...」
「キーホルダー...」
キーホルダーというワードを聞いて蛇茨は自らの側にあるものを手に取った。
それは玲奈が帰り道で自分にくれたキーホルダー...確か、他のグループメンバーに配ってたって言っていたような...
「あっ!そろそろ、私は時間だから...」
「えっ?ちょっと待ってよ!?まだ話は...」
そんな思考の最中にタイムオーバーを迎えてしまったのか、蛇姫からの電話が一方的に切られてしまった...
(まさか、本当に玲奈のグループメンバーの中に?信じたくはないけど、蛇姫が嘘をつかないのは昔から...)
結局、蛇茨はこの日の夜は不安のあまりに一睡もできなかったのだった...
情報量多すぎっ!




