261.新年早々に...
第261話
「玲奈お嬢様!陽菜お嬢様!あけましておめでとうございます!」
「姫香さん!あけましておめでとう!」
「姫香、あけましておめでとうございます!」
この日、私と陽菜は姫香と新年の挨拶を交わしていた。
楽しかったクリスマスや大晦日もあっという間に過ぎてしまい、年が明けて今日から新年なのだ。
去年は色々あったが、今年は面倒事に巻き込まれなければいいんだけど...
いや、そんな儚い願いは早くも消えようとしているのかもしれないね...
「ねぇ、ところで玲奈お姉ちゃん?ちょっと聞きたい事があるんだけど...」
「まぁ...そうなっちゃいますよね。」
「いやいや!当たり前だよ!だって...」
それもそのはずである。何せ、陽菜が指を指した先には...
「あっ!どうもっ!明けましておめでとうございます!お邪魔していま~す!」
「うん!明けましておめでとう...じゃないから!!そもそもだよ!?何であなたが玲奈お姉ちゃんの部屋にいるの!?」
このメスガキ...ではなく、美織ちゃんが私の部屋にあるこたつで丸くなっているからだ。
「陽菜、落ち着いてください。実を言いますと、これにはちょっとした事情がありまして...」
その事情を知っている私が陽菜になぜ、美織ちゃんが私の家にいるのかを説明をはじめた。
といっても、理由は単純なもので『今帰仁修羅についていい情報が手に入ったので岩倉家の屋敷にお邪魔して話したい』と言ってきたからである。普通に電話で連絡すればいいものをわざわざ家にお邪魔したいという美織ちゃんの意図は分からなかったが、情報量は少しでも多い方が良い。
よって、とりあえずは美織ちゃんの報告を聞いておく事にした。そして、つい数十分前に美織ちゃんが岩倉家を訪れて今に至るというわけだ。
「陽菜様とは再びお会いしましたね!今城美織で~す!これからも玲奈様に尽くしていくつもりなのでお見知りおきを~!」
「ふ~ん、そう...改めてよろしくね。というか、前に会った時とだいぶキャラ変わってない!?」
「あ~!それは偽り、強いて言っちゃうなら私の仮面ですかね~!三条家の一件があったあの時に玲奈様や陽菜様と関わってから、あの仮面を被るのはもうやめちゃいました~!こっちの方がしっくりくるんですよね~!」
私と関わる内に美織ちゃんも素の自分をさらけ出せるようになり、いろんな意味で変わっていったようだ。
「まぁ、それは胡散臭い部分もあったからいいけど...じゃなくて!百歩譲って家を訪ねて来るのはいいとして...何で玲奈お姉ちゃんのこたつを使ってるわけ!?」
「そりゃ、もちろん!玲奈様のこたつで暖まりたからったからですよ~!ちゃんと玲奈様からの許可は頂きましたし!」
「玲奈お姉ちゃん!?ズルいよ...!ただでさえ、島津憩美の存在だけでも鬱なのに増えるなんて...」
「えっ?その...ごめんなさい?」
う~ん、何で美織ちゃんを私の部屋のこたつに入れただけで陽菜が怒っちゃうのかが理解できないな~?普通に寒そうにしてたから気を遣って入れてあげただけなのに...
「早速ですけど聞いてください!今帰仁修羅ですが、玲奈様と二条様のクリスマスデートを尾行していましたよ!この私がこの目で確認したので間違いありません!」
「尾行している者の中に修羅ちゃんが混ざっていたとは...」
「はい!しかも、大炊御門師嗣と接触していましたね!」
「なるほど、修羅ちゃんが奏ちゃんの従兄弟の師嗣くんと接触ねぇ...」
現時点では相変わらず謎が多い修羅ちゃんだが、私と兼光のクリスマスデートを尾行している時点で私の何かを探ろうとしているのは明白だろう。
「それで?その二人はどのような話をされていたのですか?」
「それがですね~...残念な事に周囲人達の声がうるさくて正確に聞き取る事はできませんでした...まぁ、互いに話し終わった後に大炊御門師嗣が何やら焦っているような表情をしているのは見えたんですけど...」
「師嗣くんが焦っているような...ですか?」
もしかして、師嗣くんは修羅ちゃんに何かしらの弱みでも握られているのかね~?あるいは...
「ふ~ん、肝心なところで役に立たないんだね...玲奈お姉ちゃんを期待させといて。」
「お言葉ですが~!玲奈様の妹ってだけで何もできないどこかの誰かさんよりかはマシだと思うんですけど~!」
「はぁ!?何ですって!?」
「ちょっと!?二人とも、落ち着いてください...」
全く...私が考え事をしている間に喧嘩になりかけるんじゃないよ~!
...と、その時だった。
ピンポーン!
(...ん?またしても、来客?)
玄関のチャイムが鳴ったのが分かった。
「玲奈お嬢様。私が参りますので引き続き部屋でお楽しみください。」
「姫香、頼みましたよ。」
そういうわけで姫香が私の部屋を出ていった直後の事だった。ドタドタと階段をかけ上がってくるような音がしたかと思うと...
「ちょっ...!困ります!少し待ちなさ...」
「失礼します!玲奈お姉様!!亀寿ユメさんについて新たな情報をお持ち...」
私の部屋に入ってきた人物もまた、私の部屋のこたつで丸くなっていた美織ちゃんを見ると表情を曇らせたのだった...




