251.最後の締めはデュエットで
第251話
百子が飛び出してしまった一方で、個室内にて二人で取り残されてしまった私と兼光はというと...
「なぁ?せっかくだから、玲奈の歌も聞かせてもらっても構わないか?」
「えっ?はい...兼光様がどうしてもお望みというのであれば歌わせて頂きますが...」
「おぉ!ありがとうな!あっ、もう採点勝負とかは関係なくなってしまったからな...よし!玲奈、お前は採点に関係なくありのままに歌ってくれ!」
カラオケ採点には若干の不安が残っていた私にとって兼光の提案は非常にありがたいものだった。これで特に採点要素を気にする事もなく、楽しく歌う事ができる。
(さて、どんな歌を歌おうかな?できるだけ、兼光が知ってるような...いやいや!何で私が兼光にここまで気を遣っているんだか...)
正直、カラオケなんて前世で病気が悪化する前に行ったっきりでこの世界では一度も行った事がない。なので、口には出していないが私は実質10年振りとなるカラオケを実は心のどこかでは楽しんでいたのかもしれない。それが私から見て敵にあたるはずの兼光や百子と一緒のカラオケだったとしても...
「ふぅ...では、この曲にしますか...」
「何だ?玲奈はどんな曲を選んだんだ?教えてくれよ!」
「ふふっ...それを聞いちゃったらダメです。それは歌うまでのお楽しみですから...」
「まぁ、それもそうだよな...」
ついに曲が始まり...私はマイクを片手に自分らしく歌い始めた。
「.........」
ここで意外だったのが、歌唱中の私に対して声援の一つか二つは飛ばしてくるだろうなと予想していた兼光が思っていたよりも静かに私の歌唱を聞いているところだろうか?
(あれっ?兼光が静かすぎる...私の歌って思ったよりも下手だったのかな?)
そして、ちょっとだけ不安になりながらも何とか歌い終える事ができて自分なりに満足していた私の耳に飛び込んできたのは...
パチパチパチッ!
兼光からの盛大な拍手だった。
「凄い...玲奈、最高だったぜ!俺や筑波百子が霞むレベルで上手い...何なら、クライムの歌姫ともいい勝負ができるかもしれないぞ?」
「いえいえ、大げさですよ...」
クライムの歌姫の歌を直接耳にした私には分かる。あれには勝てない...と。
「さて、終了時間まで残り5分か...もう一曲歌える時間があるな。」
「そうですね...どちらが歌いますか?」
私としては自身がもう一曲歌うのも悪くはないし、兼光の演歌をもう一回聞くのも悪くはないと思っている。何だかんだでこの時間は楽しかったからだ。
「よし、決めた!最後はデュエットだ!玲奈、二人で歌おうぜ!」
「デュエット...ですか?」
「あぁ!安心しろ!流石に演歌じゃなくても構わない。何なら、選曲は玲奈に任せてもいいぜ?」
なるほど、選曲が私に委ねられるのであれば...問題はなさそうだね。
「分かりました。兼光様、一緒に歌いましょう!」
「おう!」
こうして、私達のカラオケの締めはデュエットに決まったのだった...




