246.自称ライバルのご登場?
第246話
「ふぅ...玲奈、着いたぞ。」
歩きだしてから数十分後...私達はお目当てのカラオケ店、クライムエコーに到着した。
「あの...兼光様、大丈夫ですか?ちょっと疲れてるみたいですが...」
「安心しろ!この程度でへたばるような俺じゃないからな。」
最初の映画館からクライムエコーまでは少し距離があった事もあってか、兼光の息が少し荒いように感じる。この調子で上手く歌えるのか心配だ。
「玲奈はどんなジャンルの歌が好きなんだ?」
「私はアイドルソングですかね~!兼光様はどうなのですか?」
「知りたいか?それはだな...」
この後、兼光の意外な得意ジャンルを聞いて驚いてしまったのはここだけの話だ。
・・・・・
「嘘...すごい...」
クライムエコーに入った私は思わず、そう言葉に出してしまった。
私は今までクライムエコー...というか、前世を含めてもカラオケボックス自体に入店した経験がなかった。しかし、貴族達専用のカラオケ店として話題にはよく挙がっていたので私も前世においてネットに載っていたそこらの普通のカラオケ店よりも設備が整ったカラオケ店なのだろう...と予想はしていたつもりだった。
しかし、クライムエコーは私の予想以上にレベルが高かった。
個室の数はもちろんのこと、採点機の機種やドリンクなどのメニューの数までが桁違いだったのだ。
(凄い...マイクに至ってはオペラ用や演歌用...しまいにはアカペラ用や採点用まで非常に細かく分けられちゃってるし...)
私がクライムエコーの想像以上の凄さに呆然としている時だった。
「おほほっ!これは奇遇ですわね~!岩倉玲奈様~?」
「げっ...」
「ちょっと!?その嫌そうな反応は何ですの!?」
うっかり、言葉に出してしまったがそれも仕方がない。私はこの子...筑波百子の事が苦手なのだ。理由としては伊集院日咲を間接的に悲惨な目に遭わせた張本人というのももちろんなのだが...
「お前は確か...玲奈や島津憩美によく突っ掛かっているとかいう...あの筑波百子か?」
「あら~?私はそれほどまでに有名ですの?喜ばしい事ですわね?これで筑波家の復権にまた一歩近づきましたわ~!」
いやいや!百子本人は何か誇っているような反応だけど...たぶん、それって悪い意味での話だと思うよ?
「それで?筑波さんが私に何の用なのですか?見て分かりますように、今の私は二条兼光様とクリスマスデートをしている最中なのですが?」
ん?今の台詞だと私が兼光とのデートを百子に邪魔されて怒ってるみたいになっちゃってるね...私としては単なる断り文句のつもりだったんだけど...
「まぁ!岩倉玲奈最大のライバルであるこの筑波百子を差し置いてデートですって?そんなの許しませんわよ!あなたは私と勝負するのです!」
ちょっと待て!運動会の時もそうだけど...いつから百子が私のライバルになったの?そもそも、私としては認定した覚えすらないのだけど...
「おい、筑波百子!何を勝手に話を進めているんだ!?玲奈は俺とクリスマスデートを...」
「その...兼光様、以前も同じような事があったので分かるのですが...あの調子ですと、私が頷くまで彼女は引き下がらないでしょう。なので、ここは折れていただけないでしょうか?なるべく、時間はかけさせませんので。」
運動会の時に勝負を挑んできた際のあのゴネっ振りを思い出してみると、ここで断ったとしても百子がそう簡単に引き下がるとは思えないのだ。
「仕方ないな...おい!筑波百子!勝負かなんだか知らないが、さっさと済ませてくれよ...」
「善処しますわ~!さぁ、岩倉玲奈様!早くこちらへ...」
こうして、私と兼光は渋々といった形で百子に腕を引っ張られて個室へと連れていかれたのだった...




