238.これは友情の証だよ!
第238話
(やれやれ、さっきはほんとに危なかったよ...)
どうにか、問題の寝言については適当な嘘をついて誤魔化す事に成功した。
私の寝言のせいで起こしてしまった事を真里愛ちゃんに謝罪した後、彼女と一緒に寝室に戻ってきていた。
「美依沙ちゃん、グッスリですね...」
「はい、さっきも言ったようにあの子は眠りが深いんですよ...」
相変わらず、美依沙ちゃんはスヤスヤと気持ちよさそうに幸せそうな寝顔を浮かべて眠っている。その様子を眺めた私が小動物のようで可愛いと思ってしまったのはここだけの秘密だ。
「ふふっ...美依沙ちゃんって、ほんとに可愛いですよね...」
「えぇ、私にとっても美依沙は自慢の妹です。ちなみにあの子は私と同じくらい、玲奈ちゃんの事も大好きなんですよ...実際に来年から玲奈ちゃんと同じ学園に通える事を知ると非常に喜んでいましたし...」
思い出した...そういえば美依沙ちゃんは現在6歳だもの。つまり、来年から明成学園に入学するんだったね...
「来年、あの子が入学したら少しでも姉らしくできるように頑張ります...」
「真里愛ちゃんなら、きっと大丈夫ですよ...」
「玲奈ちゃん、ありがとうございます...」
その頃には私もいよいよ5年生になるのかぁ...なんか、あっという間に時間って過ぎていくものなんだね~!
・・・・・
そんな感じで真里愛ちゃんとお喋りを始めて2時間が過ぎた。完全なる夜更かしで朝からの寝不足は確定なのだが、私は強制シャットダウンの影響で眠気すら感じないのだから仕方がない。
「そうだ!玲奈ちゃんに私からこれをあげますね...」
そう言って、真里愛ちゃんが私に手渡してきたのは...
「これは...ブローチ?」
「はい!」
折り紙で作られた1つのブローチだった。そのブローチはピンク色の折り紙で花の形に作られている。何より、空いている部分のスペースに...
『ずっと友達』
という文字が小さく書かれていた。それも、凄く綺麗な字で...
「その...この字は真里愛ちゃんが書かれたのですか?」
「えっ?あぁ!いつもと文字が違いますもんね...ですが、私です。普段はがさつなところもあるので字が汚いのですが、書こうと思えば綺麗な字が書けちゃうんです!」
「そうだったのですか...」
ちなみに真里愛ちゃんには内緒だが今、私の頭の中で二つの思考が浮かんでいた。
こういう綺麗な字が書けるなんて真里愛ちゃんもやればできる子なんだね~と、真里愛ちゃんを見直す気持ちと...
(ん?この字...どこかで見たような?)
真里愛ちゃんが書いた字に対するちょっとした違和感だ。
「改めまして玲奈ちゃん、これを受け取っていただけますか?これは私と玲奈ちゃんの友情の証です。」
「もちろんですよ。何回も言っていますが私は真里愛ちゃんの事を大切な友達だと思っていますので...」
「ありがとうございます!」
ミラピュアの玲奈お嬢様と真里愛ちゃんも確かに友達ではあった。しかし、あくまでそれは玲奈お嬢様にとって、真里愛ちゃんが利用価値があるかどうかの問題で本当のお友達と言えるような関係性ではなかった。
だけど、今は違う...私と真里愛ちゃんは本当の友情で結ばれた関係性なのだ。
「玲奈ちゃん、私...本当に幸せなんです。玲奈ちゃんに出会えて本当に良かったです!」
「私もですよ...真里愛ちゃん。」
そう言いながら、私が真里愛ちゃんの頭を撫でていた時だった。
『むにゃにゃ...ミーシャも~。』
(えっ?)
私と真里愛ちゃんはその声に一瞬だけビックリしてしまい、隣を見てしまった。しかし、私の隣にいる美依沙ちゃんは相変わらずの様子でスヤスヤと眠っている。
どうやら、単なる美依沙ちゃんの寝言だったようだ...
「可愛い寝言でしたね...」
「えぇ、美依沙らしいですね...」
私と真里愛ちゃんはこの後もしばらくは眠れず、寝不足が確定してしまうのだった...
・・・・・
夜は明けて、午前6時頃...
(いいな~!真里愛お姉ちゃんと玲奈お姉様がお揃いのブローチ...)
偶然にも...いや、当たり前のように早起きしてしまった美依沙は隣で眠っている玲奈と真里愛を見ながら、夜中の事を思い返していた。
そう...途中まではスヤスヤと気持ち良く眠っていたのだが、玲奈と真里愛の話す声に目が覚めてしまった。どうやら、本人達が思っていたよりかは美依沙の眠りは深くなかったらしい。
本当ならすぐにでも会話に加わりたい気持ちもあったが、夜更かしはよくないと真里愛からのお小言を食らいそうだったために断念し、寝ている振りをして密かに二人の会話を盗み聞きする事にしたのだ。
その中で真里愛はお揃いのブローチを玲奈に手渡し、幸せそうに玲奈と会話する場面を見てしまった。その様子に思わず、自らもしゃべってしまったが寝言と処理されたので事なきを得たのだ...
(あっ!そうだ!真里愛お姉ちゃん?起きたら覚悟しておいてね?絶対にミーシャの分のブローチも作ってもらうんだから!)
美依沙は玲奈の隣で幸せそうに眠っている自らの姉の寝顔を眺めながら、そう決意したのだった...




