237.寝言になっていたらしい...
第237話
私は真里愛ちゃんが隣にいるはずだった真里愛ちゃんがいない事に気づいたが、そこまで慌てていなかった。
(たぶんだけど...トイレにでもいったのかな?)
我慢できずに夜中にトイレで用を足す事はよくある話だ。真里愛ちゃんも私とお泊まり会ができた事に興奮しすぎて寝る前にトイレに行きそびれた可能性だって十分にあるからだ。
「それにしても...眠気がすっかり吹き飛んじゃったんだけど...」
以前の時と同じように夢幻世界から強制的に追い出されると、なぜか眠気が完全に吹き飛んでしまっているのだ。そのため、寝不足が確定になってしまっている...
(まぁ...とりあえず、トイレにでもいこうかな?ついでに真里愛ちゃんを探しに...)
そんなわけで、私は隣でスヤスヤと幸せそうに眠る美依沙ちゃんを起こさないように気をつけながら、部屋を出てトイレへと向かったのだった。
・・・・・
トイレに到着した私はさっさと用を済ませたのだが、とある問題が発生していた。
(どうすれば...真里愛ちゃんがいないだなんて...)
そう...てっきり、トイレにいるとばかり思っていた真里愛ちゃんの姿が見当たらなかったのだ。
(よし、美依沙ちゃんを起こすのは申し訳ないし...ここは真里愛ちゃんのご両親に知らせにいこう...)
自分一人ではどうにもならないと判断した私が真里愛ちゃんのご両親がいるであろう、2階に向かおうとした時だった。
「...玲奈ちゃん。」
「...ん?あれっ?」
どこからか私を呼ぶ声が聞こえた。もちろん、声の主は分かっている...
「この声は真里愛ちゃんですよね?どこにいるのですか?」
「玲奈ちゃん、ここです...」
真里愛ちゃんの声が聞こえる場所...トイレの窓から顔を出してみると...
「ふふっ...何とか私を見つけてくれましたね。」
「真里愛ちゃん?」
富小路家の庭にて寝転がっている真里愛ちゃんの姿を発見した。
「真里愛ちゃん!こんな寒いのに何してるんですか!?早く家の中に戻ってきてください!」
「えっ?それなら、大丈夫ですよ~?厚着してますし、ベッドに戻ったところで眠れないのは明白ですので...」
厚着しているといっても、この季節の夜は肌寒い事には変わりないんだけどね~...
「えっ?眠れないとは?ひょっとして、悪夢でも見たのですか?」
「いいえ、違いますよ。隣の誰かさんの寝言で叩き起こされちゃったんです。」
「私の...寝言!?」
ニッコリと笑顔を浮かべながら、そう話してくる真里愛ちゃんとは対照的に私は焦りを隠せなかった。
「ちなみに聞いておきたいのですが...その時の私はどのような事を言っいたのでしょうか?」
「えっとですね...麻呂さんだとか、拘置所だとか、高松家だとか、中山家だとか...いろんな事を誰かと喋っているかのような感じでしたよ?」
「嘘でしょ!!?」
「玲奈ちゃん!?その...あんまり大声を出してしまうと私の両親が起きちゃいますので...美依沙は眠りが深いので大丈夫かもしれませんが...」
「あっ、すみません...」
私は夜中である事を忘れて大声を出してしまった。しかも、さっきの時とは違って夢幻世界ではなく...現実世界でだ。
だが、その事を忘れてしまうくらいに衝撃的な事実を知らされてしまったのだ。
(嘘でしょ...!?よりにもよって、あの世界での会話が全部寝言扱いになってたなんて!)
どうやら、夢幻世界での麻呂さんとの会話は現実世界にいる第三者からすると、ただの寝言になっていたらしい。
(って事は...今までの夢幻世界の時の会話もずっと私の寝言になってたって事だよね?誰かに聞かれたとすると不味すぎるよ...)
とりあえず、以前の話は後回しだ...何せ、今だって特に問題なのだ。
えっ?なぜかって?そりゃ、寝言という形で色々な重要ワードを真里愛ちゃんに聞かれてしまったからに決まってる...
「それにしても、玲奈ちゃんがいきなり拘置所だなんて...物騒な事を言ってるのでビックリしちゃいましたよ...」
「ははは...実はですね、私がなぜだか悪者になって他の皆さんから断罪されてしまう夢を見てしまいまして~。たぶん、それの影響なのでしょうかね...」
夢幻世界の事を話しても信じてもらえるとは思えない...よって、私は咄嗟に適当な嘘をついて誤魔化すしかなかった。
「えぇ!?玲奈ちゃんが悪者だなんて...とても考えられない事です!ほんとに酷い夢だったんですね...」
「わざわざ、ご心配してくれてありがとうございます...」
いやいや!そんな事もないよ!?実はそれがあり得ちゃうんだよな~!
まぁ、この世界の真里愛ちゃんは知らないんだろうけどねぇ...




